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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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61/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 61

「…オラ…オラ…オラ…ちんたら、ちんたら、してるんじゃないさ…」


 私は、大声で、叫びながら、リンダ=ヤンと、ファラドの真ん中に、走った…


 驚いた、リンダ=ヤンが、


 「…どうしたの? …お姉さん?…」


 と、言って、身をよけた…


 つまりは、ヤン=リンダと、ファラドの間に、私が、入ったのだ…


 「…オマエたち、男同士で、気持ち悪いゾ…」


 私は、言った…


 「…ゲイのカップルじゃないんだ…」


 私の言葉に、ヤンが、


 「…ゲイのカップル?…」


 と、言って、絶句した…


 それから、ヤンと、ファラドが、お互いを見て、爆笑した…


 「…そんな、お姉さん…男二人が、ただ歩いているだけですよ…」


 と、ファラドが、私に、抗議した…


 「…それが、どうして、ゲイのカップルなんですか?…」


 ファラドが、続けた…


 「…それに、お姉さん?…」


 「…なんだ?…」


 「…イスラム世界では、原則的に、ゲイは、禁止です…国によっては、死刑になる国もあります…」


 「…し…死刑だと?…」


 私は、驚いた…


 驚いたのだ…


 私は、ゲイでも、レスビアンでも、なんでもないが、さすがに、ゲイやレスビアンというだけで、死刑というのは、驚きだ…


 ひとを殺したり、傷つけたりして、死刑になるのは、わかる…


 理解できる…


 が、


 ゲイやレスビアンというだけで、死刑になるのは、心底驚きだった…


 「…だから、私は、今、マリアさんの保護者の方と、歩いているだけです…」


 ファラドが、説明した…


 「…でしょ?…」


 と、言って、ファラドは、軽くウィンクをして、リンダを見た…


 リンダ=ヤンを、見た…


 長身で、浅黒く精悍なイケメンが、リンダを見たのだ…


 もの凄いセックス・アピールだった…


 色気が、ムンムンとしていた…


 私は、これまで、こんな男は、見たことがなかった…


 それは、私が、日本人だからだ…


 日本人で、ここまで、セックス・アピールがある人間は、普通いない…


 また、アジア人でもいない…


 私の夫の葉尊も長身のイケメンだが、ここまで、セックス・アピールはない…


 それは、ちょうど、このヤン=リンダが、きっちりと、ドレスを着て、正装をしたときに、発するセックス・アピールと同じ…


 同じだ…


 まさに、ハリウッドのセックス・シンボル、リンダ・ヘイワースが、発するセックス・アピールと同じだった…


 私は、それを見て、気付いた…


 …似た者同士…


 似た者同士ということに、気付いたのだ…


 きっと、互いに、互いの、セックス・アピールに惹かれたのかもしれん…


 私は、思った…


 互いに、周囲が思わず、引くほどのセックス・アピール=色気をムンムンさせている…


 とてもではないが、この平凡な矢田トモコでは、太刀打ちできない…


 対抗できないのだ…


 この平凡な矢田トモコの出る幕ではない…


 私は、それを悟った…


 悟ったのだ…


 だから、


 「…オマエたち…勝手にすれば、いいさ…これから、二人で、ホテルでも、なんでも、行けばいいさ…」


 ち、告げた…


 告げたのだ…


 「…お姉さん…ホテルって、なに? …どうして、ホテルなの? …これから、お遊戯大会が、この保育園で始まるのよ…」


 ヤンが、目を白黒させて、言った…


 …そうだった!…


 お遊戯大会だった…


 ホテルではなかった…


 ヤン=リンダの言葉で、あらためて、自分の置かれた状況が、わかった…


 再確認したのだ…


 リンダ=ヤンと、ファラドが、まるで、恋人同士のように、楽しそうにしてるのを、見て、嫉妬したのだ…


 できれば、私もファラドのようなイケメンと恋人同士のように、振る舞いたいと、夢想したのだ…


 それが、はかなく、夢と消えた今、無性に、リンダに嫉妬した…


 ヤン=リンダに嫉妬した…


 それが、現実だった…


 この矢田トモコともあろうものが、こんな劣悪な感情に、もてあそばされたのだ…


 情けない…


 実に、情けなかった…


 が、


 立ち直りの早いのも、私の美点の一つだった(笑)…


 すぐに、あっけなく立ち直った…


 「…さあ、行くゾ…」


 私は、ヤン=リンダとファラドの間に立ちながら、叫んだ…


 「…さっさと歩け…お遊戯大会に遅れるゾ…」


 私は、断言した…


 そして、ふと、気付いた…


 リンダ=ヤンは、175㎝…


 ファラドは、180㎝は、あるだろう…


 夫の葉尊と同じぐらいだ…


 その二人の間に、この矢田トモコがいる…


 身長、159㎝の矢田トモコがいる…


 すると、周囲は、どう見る?


 凹んで、見えるのではないか?


 真ん中だけ、凹んで見えるのでは、ないか?


 ふと、気付いた…


 これは、みっともない…


 ふと、悟った…


 自分が、周囲から、どう見られるか、悟った私は、慌てて、二人から離れた…


 …危なかった…


 実に危なかった…


 賢明な私だから、この事実に気付いたが、余人ならば、難しいだろう…


 私は、自分の頭の良さに救われたと、悟った…


 悟ったのだ…



 私は、ファラドとヤンから、一歩も二歩も、前を歩いた…


 すると、その先には、あのオスマン殿下と、マリアが、歩いていた…


 背後から、見ると、これまた似合いのカップルだった…


 子供ながら、似合っていた…


 まさに、理想のカップルだった…


 こんなときに、葉尊がいれば?


 ふと、思った…


 夫の葉尊が、いれば、私も、一人ぼっちではない…


 が、


 仮に、夫の葉尊と並んで、歩いていても、似合わない…


 似合わないこと、この上ない…


 夫の葉尊は、長身…


 180㎝近くある…


 それに対して、この矢田トモコは、身長、159㎝…


 だから、並んで歩いていても、似合わない…


 似合わないこと、この上ない…


 私は、遅まきながら、その事実に、気付いた…


 いや、


 その事実に、気付いたのは、昨日、今日ではない…


 ずっと前からだ…


 にもかかわらず、私は、気にしなかった…


 これは、私が、鈍感だからではない…


 なぜなら、世間には、そんな凸凹カップルは、ありふれているからだ…


 身長差のある、カップルは、ありふれているからだ…


 そして、もう一つ…


 私が、決して、美人でもなんでもないにも、かかわらず、イケメンの葉尊といっしょに、いても、コンプレックスを感じないのは、これもまた、同じく、そんなカップルは、世間にありふれているからだ…


 真逆に言えば、世の中に、美男美女のカップルは、あまりいない…


 男が、イケメンならば、女は、普通…


 真逆に、女が、美人ならば、男は、普通…


 これが、多い…


 テレビや映画の中の美男美女のカップルは、普通は、世の中に存在しない…


 少なくても、私は、街中で、そんな美男美女のカップルは、見たことがなかった…


 だから、これまで、私は、葉尊といっしょに、いても、おかしいとか、コンプレックスは、感じたことがなかったのだ…


 が、


 今、リンダ=ヤンと、ファラドが、並んで歩いている…


 リンダは、今、ヤンの格好をしている…


 ヤンという男装をしている…


 男の格好をしている…


 にもかかわらず、ファラドと並んで歩くと、似合うのだ…


 ヤンとファラドが、並んで、歩くと、華やかで、目立つのだ…


 人目を引くのだ…


 だから、それを見て、私は、美男美女のカップルを思ったのだ…


 これまで、考えたことのないことを、考えたのだ…


 そして、オスマン殿下と、マリア…


 これまた、ちっちゃいながらも、似合いのカップルだった…


 マリアは、小さいながらも、美人…


 母親のバニラと、同じく美人だった…


 目鼻立ちが、子供ながら、抜きん出ていた…


 オスマンも同じ…


 子供だが、中東の男にふさわしく、浅黒い肌に、精悍な顔立ちだった…


 子供ながら、イケメンだった…


 だから、思ったのだ…


 子供ながらに、美男美女のカップルだった…


 だから、この矢田トモコも、今さらながら、自分と葉尊の違いに気付いたのだ…


 が、


 夫の葉尊と、この矢田トモコが、似合わないと、気付いたところで、どうこう言うつもりは、なかった…


 むしろ、ラッキー…


 ラッキーの一言だった…


 この平凡な矢田トモコが、長身で、イケメンの葉尊と、結婚しているのだ…


 イケメンで、お金持ちの葉尊と結婚しているのだ…


 ラッキー、この上なかった…


 それを、考えると、私の気持ちも落ち着いた…


 ゆっくりと、落ち着いた気持ちで、オスマンとマリアの後を、歩いた…



 保育園は、思った以上に、質素だった…


 いや、


 質素という言葉は、違うかもしれない…


 お金持ちの子弟の通う、セレブの保育園だから、中もゴージャスじゃないか?と、勝手に想像したのだ…


 が、


 違った…


 至って、平凡だった…


 が、


 そこに集まった父兄は、平凡ではなかった…


 まるで、ファッションショーでも、始まるのかと、思うぐらい、ゴージャスだった…


 ゴージャス=ブランド品の見本市だった…


 あまり、ブランドに詳しくない私でも、一目で、それが、わかった…


 にも、かかわらず、その中で、一番目立っていたのは、やはりというか、ヤンとファラドだった…


 二人とも、おおげさに言えば、後光が差して見えたというか…


 二人だけに、スポットライトが当たっているように、華やかだった…


 いくら、金持ちの子弟やその両親が、集まる場所でも、そこにいるのは、一般人…


 スターではない…


 日本人ではなく、外人も多いが、ヤンや、ファラドのような華やかな人間は、誰もいなかった…


 つまり、それほど、目立っていたということだ…


 そして、その傍らに、この矢田トモコがいた…


 この平凡、極まりない矢田トモコがいた…


 すでに、セレブの父兄の中に、埋没していた(笑)…


 身長も159㎝と、小さい…


 日本人の女性の中ならば、小さくも、大きくもないが、やはり、セレブの保育園だけあって、大半は、外人だった…


 白人だった…


 その中に、あって、この矢田トモコの身長は、低かった…


 が、


 それが、良かった…


 なぜなら、目立たなくて、すむからだ…


 私は、目立つ…


 自分で言うのも、なんだが、なぜか、集団の中で、目立つらしい…


 私は、それが、嫌だった…


 ずっと、昔の学生時代から、


 「…矢田って、なんだか、目立つんだよね…」


 と、友達に、言われてきた…


 言われ続けてきた…


 なぜかは、わからない…


 だから、なぜ、目立つのか、友人に聞くと、


 「…それが、よくわからないんだよね…」


 と、返って来た…


 「…よくわからないだと? …どういうことだ?…」


 「…矢田って、どこにいても、目立つ…別に、そこで、矢田がなにか、しているわけでもないんだよね…でも、目立つ…」


 その回答に、私は、どう答えていいか、わからなかった…


 そんなことを、言われても、困る…


 それが、偽らざる、私の気持ちだった…


 それに、私は、別に、目立ちたがりでも、なんでもなかった…


 クラスでも、委員長とか、生徒会長とか、した経験は、皆無…


 一度もない…


 にも、かかわらず、私が、一番目立っていたと、いう声は、卒業して、偶然、街中で、友達と再会すると、いつも言われるセリフだった…


 だから、最初は、驚いたが、今では、あまり気にならなくなった…


 誰でも、そうだが、何度も、繰り返し言われれば、慣れてしまうからだ…


 自分自身、少しも納得していないにも、かかわらず、そういうものだと、思ってしまうからだった…


 まあ、しかし、自分で、言うのも、おかしいが、そんなものかもしれない…


 そんなものかみしれないと、今は、思う…


 実感する…


 いわば、ないものねだり…


 私は、生まれつき、目立つから、目立ちたくないだけ…


 真逆に、なにをしても、目立たない人間は、目立ちたいのだろう…


 さっき、言った、高卒のひとが、会社に入って、出世したいと、願うのと、同じ…


 同じだ…


 学校の勉強では、大卒のひとに、負けたが、仕事では、負けないと、言うのと、同じだ…


 ないものねだり…


 持ってないから、欲しいのだ…


 最初から、持っていれば、欲しくもなんともない…


 それと、同じだ…


 そういう私自身、リンダやバニラのように、美しいルックスや、夫の葉尊のような金持ちに憧れる気持ちは、普通にある…


 が、


 いくら、憧れても、できることと、できないことがある…


 叶うことと、叶わないことがある…


 葉尊のようなお金持ちとは、結婚できたが、リンダやバニラのような、美人には、どうあがいていても、なれない…


 それが、現実だ…


 悲しい現実だ…


 誰もが、そうだが、一生懸命、頑張ったり、あるいは、頑張りもしないが、私のように、たまたま運よく、お金持ちと結婚できた男女は、世の中にいるだろう…


 が、


 顔は、変えることが、できないし、身長も、変えることができない…


 それは、諦めるしかない…


 もっとも、今の時代は、ネットで見ると、はっきり言って、私から見ても、ブザイクな女が、整形で、美人になった例を、少なからず、見かけるので、顔を変えることも、できるのかもしれない…


 美人になることも、できるのかもしれない…


 が、


 果たして、一生、そのままの顔で、いられるのかは、甚だ疑問だ…


 例えば、私と同じく、35歳で、整形して、見違えるような美人になったとする…


 すると、どうだ?


 そのままの顔で、80歳になれるのだろうか?


 90歳になれるのだろうか?


 歳をとったときに、普通に老いることができるのだろうか?


 甚だ疑問だ…


 ネットで見ると、整形を繰り返した、80歳の老婆が、まるで、粘土かなにかで、作ったような顔になったのを、見たことがある…


 そうなってしまわないか、不安なのだ…


 そして、身長とスタイル…


 これは、変えることができない…


 身長も、そうだが、ただ高くても、ダメ…


 男もそうだが、とりわけ、女は、スタイルがよくないと、若くて、長身でも、カッコよく見えない…


 なまじ、顔が良く、美人で、長身でも、スタイルが良くないと、幻滅するというか…


 残念だと思う…


 なにより、本人自身が、そう思うだろう…


 これもまた、ないものねだり…


 完璧な人間は、いない…


 すべてを持って、生まれた人間は、いないということだ…


 そして、それを知れば、普通は、安心する…


 大抵の人間は、皆、自分と大差ないと知って、安心するのだ…


 東大生を見ても、美男美女は、滅多にいないし、堂々と、落ち着いた様子で、リーダーシップを持った人間も、また滅多にいない…


 それを知って、安心するのだ…


 が、


 一部の人間は、それを知っても、なお安心できない人間がいる…


 とにかく、自分が一番になりたい人間がいる…


 私には、理解ができないが、一定数いる…


 こうなると、どうしていいか、わからない…


 ただ、私には、理解不能が、人間がいる…


 そう思うだけだ(笑)…


 そして、そんなことを、考えていると、なぜか、会場が、どよめいた…


 一体、何事かと思った…


 すると、壇上になぜか、私そっくりの顔の女がいた…


 矢口のお嬢様がいた…


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