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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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35歳のシンデレラ アラブの女神編 59

私が、そんなことを、考えていると、


 「…お姉さん…どうするの?…」


 と、ヤン=リンダが聞いた…


 「…どうするって、なにをだ?…」


 「…このまま、私とマリアが、このクルマを降りたら、お姉さんは、このクルマに乗って帰るの? …さっき、マリアを怒って、そう言ったでしょ?…」


 「…たしかに、さっきは、そう言ったが…」


 私は、言い淀んだ…


 このまま、帰っていいか、悩んだ…


 なにしろ、バニラとの約束もある…


 また、バニラを怒らせるのも、怖い…


 さらに言えば、このマリアとケンカしたことを、知られるのも、怖かった…


 バニラが、私のコントロールの下にいるのは、なんといっても、このマリアが、私になついているからに、他ならない…


 私が、このマリアと決別したとしたら、当然、私に対する態度は、変わるだろう…


 そうなれば、おおげさにいえば、血を見ることになるかもしれん…


 この矢田トモコと、バニラが、殴り合いのケンカをするかもしれんからだ…


 そして、殴り合いのケンカをすれば、当然、この矢田トモコに勝ち目はない…


 なにしろ、バニラは、デカい…


 身長、180㎝もある…


 片や、私、矢田トモコは、身長159㎝…


 闘う前から、勝負は、見えてる…


 かといって、一度、帰ると、断言したにも、かかわらず、掌を返すのも、かっこ悪い…


 綸言(りんげん)汗のごとし…


 偉い立場の人間が、言ったことは、容易に取り消すことはできない…


 なぜならば、簡単に取り消せば、その発言の重みがなくなるからだ…


 例えば、天皇陛下は、公の席で、くだらない冗談を言うことができない…


 それと同じだ…


 一体、どうするべきか?


 私が、悩んでいると、


 「…矢田ちゃん、ごめんなさい…マリアのお遊戯大会に出て…」


 と、マリアが、懇願した…


 「…お願い…」


 マリアが、私に頼み込んだ…


 私は、思わず、リンダを見た…


 リンダ=ヤンを見た…


 リンダ=ヤンは、楽しそうに、


 「…お姉さん…どうするの?…」


 と、聞いた…


 私は、それを見て、考えた…


 その結果、


 「…一度きりさ…」


 と、答えた…


 「…今回だけさ…」


 と、言った…


 「…二度目はないさ…」


 私の言葉に、


 「…ありがとう…矢田ちゃん…」


 と、マリアが喜んだ…


 が、


 それよりも、リンダの反応が気になった…


 リンダ=ヤンの反応が、気になった…


 すると、


 「…さすが、お姉さんね…」


 と、ヤンが、言った…


 「…なにが、さすがなんだ?…」


 「…困っている人間を見捨てることが、できない…」


 「…」


 「…根は善人…それが、お姉さんよ…」


 リンダ=ヤンが、言った…


 私は、それを聞きながら、


 …だったら、リンダ、オマエの本性は、どうなんだ?…


 と、思った…


 女神なのか、悪魔なのか、考えたのだ…


 悪魔ではないが、汚れた女神かもしれん…


 ふと、私の脳裏に、そんな言葉が浮かんだ…


 浮かんだのだ…


 …汚れた女神か?…


 私は、内心、自分でも、うまいことを、言ったと思った…


 誰もが、そうだが、聖人君子は、いない…


 誰もが、性格が、悪いわけではないが、普通に、愚痴をこぼし、陰で、ひとの悪口を言う(笑)…


 それが、普通の人間だ…


 が、


 何事にも、限度がある…


 年がら年中、ひとの悪口を言っていれば、他人は、呆れるし、なんて、性格の悪いヤツだと、思って、距離を置く…


 要するに、程度の問題だ…


 今の子供のケンカで、いえば、いじるか、イジメかの違いだ…


 誰が、見ても、いじっているのか、イジメているのか、簡単にわかる…


 それと、同じだ…


 軽くいじるのは、問題は、ないが、イジメは、困る…


 それと、同じだ…


 リンダもまた、ハリウッドのセックス・シンボルとまでに、呼ばれるように、なったが、そう呼ばれる今の地位に辿り着くまで、苦労したに違いない…


 スポットライトを浴びている今の姿からは、想像もつかない苦労をしたに違いない…


 だから、汚れた女神なのだ…


 きれいだが、よく見ると、泥で、汚れた部分がある…


 そして、その泥の部分が、過去なのだ…


 リンダ・ヘイワースの、他人に知られたくない、汚れた過去なのだ…


 私は、そう思った…


 思ったのだ…

 

 私が、そんなことを、考えていると、すでに、リンダ=ヤンと、マリアが、ピンクのベンツから、降りていた…


 「…さあ、矢田ちゃんも早く…」


 と、マリアが呼んだ…


 私は、その声に応えるべく、


 「…わかったさ…」


 と、言って、華麗に、ベンツから、降りた…


 が、


 勢いをつけ過ぎた…


 カッコをつけ過ぎたのだ…


 勢いよく、飛び出したまでは、いいが、勢いが良すぎて、止まらんかった…


 そして、つい近くにいるひとに、ぶち当たってしまった…


 私の顔が、相手の背中にぶち当たってしまったのだ…


 相手が、大柄だったのだ…


 私は、顔が、痛かったが、


 「…スイマセン…」


 と、すぐに謝った…


 本当は、顔が痛くて、たまらんかったが、それよりも、まず、ぶつかった相手に、謝るのが、先と思ったのだ…


 が、


 ぶつかった相手は、私を振り向くと、いかにも、面倒くさそうに、


 「…なんだ…35歳のシンデレラか…」


 と、呟いた…


 私は、頭に来た…


 「…なんだと、その言い方は…オマエは誰だ?…」


 と、言おうとしたが、言えんかった…


 その顔は、ファラドだったからだ…


 浅黒い精悍な顔をした男だったからだ…


 それより、なにより、ここにファラドが、いるということは、近くに、あのオスマンが、いるということではないか?


 私は、気付いた…


 すると、思った通りだった…


すぐに、ファラドの背後から、


 「…どうした? …ファラド?…」


 と、クソ生意気なガキの声が聞こえた…


 「…殿下、なんでもありません…」


 ファラドが、答えた…


 が、


 すぐに、オスマンが、顔を出した…


 そして、


 「…なんだ? …マリアか?…」


 と、言った…


 私ではなく、私の近くにいるマリアに言及したのだ…


 が、


 マリアも負けてなかった…


 「…オスマン…相変わらずの上から目線…そんなんじゃ、ダメって、いつも、言ってるでしょ?…」


 「…うるさいゾ…これが、ボクの言い方さ…」


 「…だから、それが、ダメって、いつも言ってるでしょ?…」


 「…マリア…いちいち、うるさいゾ…」


 「…私が、心配して、言ってあげるのに、なに、その言い方…」


 気が付くと、マリアとオスマンが、やり合っていた…


 言葉のジャブを放っていた…


 が、


 変な感じではない…


 嫌な感じではない…


 むしろ、この感じは…


 私が、考えていると、


 「…恋人か、夫婦って感じ…」


 と、近くのヤンが、言った…


 まさに、私が、思っていた通りのことを、言ったのだ…


 「…まるで、子供の夫婦みたい…」


 ヤンが、呆気に取られて言った…


 その通りだった…


 まさに、その通りだった…


 私もそう思った…


 すると、


 「…これは、毎朝の恒例行事なんですよ…」


 という声がした…


 振り向いて、その声の主を見た…


 ファラドだった…


 「…オスマン殿下は、毎朝、マリアさんが、やって来るまで、クルマから、降りません…いつも、マリアさんを、待ってるんです…」


 「…ホントですか?…」


 ヤンが、驚いた…


 「…ホントです…大人なら、ストーカー呼ばわりされそうですが…子供だから、大目に見ましょう…」


 と、ファラドが、茶目っ気たっぷりに、言って、リンダ=ヤンに片目をつぶって見せた…


 ヤン=リンダにウィンクをしたのだ…


 私は、それを見て、気付いた…


 対応が、違う…


 そのことに、気付いたのだ…


 この矢田トモコに対する態度と、違う…


 そのことに、気付いたのだ…


 今、リンダは、ヤンの格好をしている…


 男装をしている…


 にも、かかわらず、このファラドは、ヤンといい感じだ…


 ヤン=リンダといい感じだ…


 これは、一体、どういうことだ?


 なぜ、このファラドは、この矢田トモコに、そんな態度は、取らん…


 おかしい…


 実に、おかしい…


 はっきり言って、不思議だ…


 不思議なのだ…


 男なら、人種は、ともかく、女に目がゆくはずだ…


 にもかかわらず、このファラドは、リンダ=ヤンに目がいった…


 まさかとは、思うが、このファラドが、ヤンの正体が、リンダであることに、気付いたわけでは、あるまい…


 ということは、考えられる答えは、ただ一つ…


 このファラドは、ゲイに違いない…


 私は、その事実を悟った…


 悟ったのだ…


 いかに、この矢田トモコが、身長159㎝で、六頭身の幼児体型とはいえ、巨乳であることは、間違いない…


 誰の目にも、わかる…


 ということは、このファラドの目にも、わかるということだ…


 にもかかわらず、このファラドは、この矢田トモコではなく、ヤンを選んだ…


 ヤン=男を選んだ…


 ということは、どうだ?


 やはり、このファラドは、ゲイに違いない…


 結局は、この答えに行き着いた…


 行き着いたのだ…


 男たるもの、巨乳が好き…


 おっぱいが、好き…


 これは、決まったことだ…


 神様が決めたことだ…


 だから、男は皆、DNAに、おっぱいが、好きと、焼き付いている…


 にも、かかわらず、別の行動を取るとすれば、それは、ゲイ…


 ゲイに他ならない…


 そして、いかに、巨乳が売りの矢田トモコでも、ゲイには、勝てない…


 そういうことだ…


 ゲイ=男が好きなら、仕方がない…


 私は、思った…


 そして、落ち込んだ…


 落ち込んだのだ…


 私は、葉尊というイケメンの夫がいるのに、実は、イケメン好きだった…


 イケメン=顔が命の女だった…


 だから、ついファラドとも、親しくなりたかった…


 葉尊という夫がいる以上、不倫はできんが、親しくなることはできる…


 仲良くなることはできる…


 私は、それを狙った…


 狙ったのだ…


 が、


 何度も言うように、ファラドはゲイだった…


 だったら、仕方がない…


 諦めよう…


 立ち直りの早いのも、この矢田トモコの美点の一つだった…


 いつまでも、ゲイにこだわっても、仕方がない…


 そのことを悟った私は、


 「…ヤン…行くゾ…」


 と、言った…


 が、


 ヤンは、楽しそうに、ファラドと話していて、私の話を聞いていなかった…


 私は、頭に来た…


 「…ヤン…なにをしている…さっさと行くゾ…行かないと、置いてゆくゾ…」


 私が、怒ると、ようやく、ヤンはファラドとのおしゃべりを止めた…


 「…スイマセン…お姉さん…」


 「…いつまでも、べちゃべちゃと、女のように、おしゃべりをしているんじゃないゾ!…」


 「…ハイ…」


 私は、ヤンに命じると、堂々と歩き出した…


 159㎝の小柄なカラダで、しっかりと、大地を踏みしめた…


 26㎝の足で、大地を踏みしめたのだ…


 どんなときも、堂々と、道の真ん中を歩く…


 それが、私だ…


 私には、後ろ暗い過去はない…


 あるのは、燦然と輝く未来のみ…


 クールの社長夫人としての栄光の未来だけだ…


 それを思った私は、堂々と、歩いた…


 歩いたのだ…


 が、


 少しばかり、太陽が、まぶしかった…


 朝陽が、まぶしかった…


 だから、思わず、目をつぶった…


 「…朝陽が、まぶしすぎるさ…」


 と、言って、目をつぶった…


 それが、いけなかった…


 目の前に、小石があったのに、気付かず、思わず、それにぶつかって、あっけなく、転んでしまった…


 いつものことだった(涙)…


 なんとなく、これから始まる、今日一日の出来事を象徴するような、出来事だった(笑)…


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