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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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52/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 52

 …ファラドか?…


 私は、考えた…


 一体、どういう男なのだろう…


 いや、


 どういう人生を歩んできたのだろう…


 私は、思った…


 ひとは、生まれつきの能力も、さることながら、環境によっても、性格が、変わる…


 当たり前のことだ…


 私は、女だが、昔、バイトで、知り会った、こういっては、なんだが、冴えない風采の男が、異常に、美人にこだわるので、


「…どうして、そんなに、美人がいいんだ? 」


と、正面きって、聞いたことがある…


そしたら、その男は、


「…従妹(いとこ)が美人で…」


と、白状した…


「…だから、つい、きれいな女を見ると、比べてしまって…」


と、言い訳した…


私は、その言葉に、驚いたが、ある意味、納得した…


そう言われれば、納得できるからだ…


従妹(いとこ)でも、近所に住む幼馴染(おさななじみ)でも、なんでもいいから、小さきときから、身近に、美人や、イケメンがいたとする…


すると、年頃になると、無意識に、その美人の従妹(いとこ)や、幼馴染(おさななじみ)と、比べてしまうのだろう…


だから、そう説明されれば、納得する…


あるいは、これが、美人=ルックスではなく、頭のいい人間が、身近にいたとする…


それも、同じだ…


すると、やはり、知り会った人間で、頭のいい人間=学歴が高い人間を見ると、自分の見知った学歴の高い人間と、つい比べてしまう…


どっちが、頭がいいのか、つい比べてしまう…


そういうものだ…


まあ、私が、驚いたのは、その風采の上がらない男の口から、


「…実は、従妹(いとこ)が美人で…」


と、いう言葉が出たこともある(笑)…


風采が上がらないが、真面目で、実直な男だったから、おそらくウソはないだろう…


が、


どう見ても、その男を見て、従妹(いとこ)が美人だとは、思えない(笑)…


失礼ながら、その男を見る限り、従妹(いとこ)が美人とは、どうしても、思えないのだ…


残念ながら、それが、真実だ…


従妹(いとこ)だから、父や母の兄弟の子供だから、血筋は、近い…


だから、余計に、そうは、思えないのだ(爆笑)…


が、


実際には、そういうケースも多々あるだろう…


従妹(いとこ)どころか、血の繋がった兄弟姉妹でも、まったく、似ても似つかない兄弟姉妹も、巷(ちまた)にありふれている…


誰にも、わかる例で、いえば、天皇陛下と秋篠宮殿下だ…


顔も身長も、雰囲気すら、まるで、違う…


誰が、見ても、血が繋がった兄弟には、見えない…


同じように、大相撲の若貴兄弟も、とても、血が繋がった兄弟には、見えない…


兄の若乃花と、弟の貴乃花は、誰が見ても、まったく似ていない…


しかしながら、血が繋がった兄弟だ…


だから、その男が、従妹が美人と言ったのも、ウソではないかもしれないが、やはりというか…実際に、見て見ないと、納得できない…


写真や、スマホの画像で、いいから、見て見ないと、納得できない…


そういうことだ(笑)…


話は、若干それたが、つまりは、そういうことだ(笑)…


なにを言いたいかといえば、ファラドが、これまで、どんな人生を歩んで来たのか、まずは、知らなければ、ならない…


簡単にいえば、履歴だ…


ファラドが、どういう環境で、生きてきたかだ…


就職や転職でいえば、履歴書を提出する…


すると、どこそこの高校を出て、どこそこの大学を出たと、書いてある…


それで、まずは、頭の程度がわかる(笑)…


その人間が出た当時の高校やら、大学の偏差値を調べれば、頭の程度が、わかるからだ…


当時と言ったのは、やはり、時代が、変われば、高校でも、大学でも、偏差値が、変わるからだ…


極端な話、30年も40年も前と今では、同じ大学、同じ学部、同じ学科でも、偏差値が違う…


下剋上ではないが、随分違うものだ…


高校に至っては、少子高齢化の影響をもろに受けて、すでに、統合や廃校になった高校も枚挙にいとまがない(笑)…


そして、それを調べれば、とりあえず、頭の程度が、わかる…


さらに、見た目というか…


実際に話して、みて、どういう人間か、確かめる…


というのは、写真=静止画と、動画は、違うと言うか…


実際に会ってみると、印象が、異なる人物も、結構多い…


これは、男女ともいっしょだ…


写真では、無口で、おとなしい印象の人間でも、会ってみると、おしゃべりだったり、軽かったりすることは、結構ある…


だから、本当は、写真=静止画ではなく、動画がいい…


どんな人間だか、わかる…


が、


それは、見た目だけ…


本当は、なにもわからない…


どうして、なにもわからないかと言われれば、長時間接していないからだ…


見るからに、いい加減そうなヤンキー系の男女でも、仕事に真摯に対応する人間もいれば、真逆に、誰が見ても、真面目でも、仕事で、平気で手を抜いたりする、いい加減な人間もいる…


だから、本当のことは、まったくわからない…


ただ、やはりというか、一度会っただけで、この人間は、ヤバいという人間は、必ずいる…


絶対に採用しては、ダメだという人間も確実に存在する…


私自身、会った瞬間、この人間と距離を置かねばと、思った人間は、ごく少数だが、いた…


そして、そういう人間をどうして、採用したのかと問われれば、当時、人手不足だったから…


景気が良かったり、私のいる職場に人手が足りなかったりして、仕方なく採用した…


それが、現実だった…


そして、そんな人間は、少しでも、景気が良くなったり、人手不足が、解消されたりすれば、皆、いなくなった…


クビになった…


要するに、人手が足りないから、採用したので、あって、人手が足りたなら、真っ先に出て行ってもらいたいと、誰もが思う人間たちだからだ…


それをかわいそうと思う人間も、いると、思うが、そういう人間は、実際に接すると、誰もが、嫌な思いをするし、極端にいえば、裸足で逃げ出したくなる(爆笑)…


そういう人間は、おおげさにいえば、死刑囚といっしょ…


仮に、同情しても、自分が、実際に、仕事でも、生活でも、いっしょにすれば、自分が、その職場なり、家からでも、出てゆくか、相手が出てゆくかの二択になる…


嫌われる人間は、どんな学校や職場にいても、嫌われる…


それが、現実だ…


逃げ出さないのは、大抵は、他に行くところが、ないからで、私のように、バイトや契約社員の人間の中には、早々に逃げ出した人間もいた(笑)…


社員やバイトが、逃げ出す会社は、どこも同じ…


会社の待遇が悪かったり、集めた人間のレベルが低かったり…


だから、皆、逃げ出す…


当たり前のことだ…


ファラドは、そういう経験をしたことが、あるのだろうか?


ふと、思った…


やはり、バリバリの筋金入りのお坊ちゃまだから、そういう経験は、ないのだろうか?


思った…


いや、もしかしたら、そういう経験がないから、リンダ・ヘイワースを手に入れようとしているのかもしれない…


生まれたときときから、なんでも、自分が、望めば、手に入った…


そんな恵まれた環境にいるから、簡単にリンダを手入れられると、思ったのかもしれない…


あるいは、


まったく、真逆に、実は、苦労をしていて、偶然、現在の地位を得た…


だから、貧しかった時代には、どうあがいても、手に入らなかったものを、手に入れたいと、思ったのかもしれない…


そうとも、考えられる…


今現在の自分の立ち位置では、簡単に、リンダ・ヘイワースを手に入れられる可能性が高い…


リンダ・ヘイワースは、ハリウッドのセックス・シンボル…


それを、手に入れるのは、トロフィーワイフ…


つまり、トロフィーを、手に入れられるような快感があるのだろう…


優越感があるのだろう…


誰もが、手に入れられないものを、手に入れる…


クルマで、いえば、ファラーリや、ランボルギーニを手に入れるようなもの…


要するに、それを手に入れて、世間に、みせびらかしたいのだ…


なにしろ、ファラドは、リンダと会ったことがない…


普通に考えれば、ファラドの立場ならば、会ったことのない女を手に入れたいなどと、思わない…


ハリウッドのセックス・シンボルだから、手に入れたいのだ…


有名人だから、手に入れたいのだ…


そういうことだ…


普通の男なら、どんな美人でも、口も利いたこともない人間を手に入れたいと、普通は、思わない…


付き合ってみなければ、どんな人間か、さっぱりわからないからだ…


それを無視して、本気で、リンダを手に入れたいと、欲しているのならば、それは、ファラドが、リンダを、フェラーリやランボルギーニと、同じに見ているからに他ならない…


モノとしてしか、見ていないからに他ならない…


私は、思った…


そして、そんな人間は、果たして、リンダを手に入れたとしたら、どうするのだろう?

と、思った…


 まさか、コレクションではないから、家に飾っておくわけには、いかない…


 またリンダを妻に娶(めと)っても、実は、性格がまったく合わなかったら、どうするのだろう? とも、思った…


 それとも、トロフィーワイフだから、ただ誰かに見せびらかすだけだから、いいのだろうか?


 今回のように、ファラドが来日したときに、いっしょに、来日して、かつては、ハリウッドのセックス・シンボルと呼ばれた、リンダ・ヘイワースが、妻として、やって来ていると、言われれば、宣伝になるから、いいのだろうか?


 わからない…


 さっぱり、わからない…


 そういう狙いで、リンダを妻にしたいと思う男は、確実に、世間に存在する…


 が、


 ファラドの狙いが、そこにあるのか、どうかは、わからない…


 やはりというか、それを知るには、ファラドの過去を知ることに尽きるのではないか?


 私は、思った…


 

 そして、夜、自宅で、夕食を共に、食べながら、葉尊に聞いた…


 「…なあ、葉尊…」


 「…なんですか、お姉さん?…」


 「…ファラドのことだが、ファラドって、一体、どういう環境で、育ってきたんだろ?…」


 「…なんですか?…いきなり…」


 「…いや、今日、昼間、リンダ=ヤンが、自宅に来てな…」


 「…ヤンが、この家に?…」


 「…そうさ…それで、ファラドのことを、色々話したのさ…」


 「…ファラドのことを?…」


 「…そうさ…それで、リンダが、怯えていてな…」


 「…怯えて?…」


 「…そうさ…好きでもない男に狙われてとあっちゃ、誰でも、怯えるだろ…」


 「…それは、まあ…」


 「…それで、リンダが、帰った後に、私は、考えたのさ…」


 「…なにを、考えたんですか?…」


 「…ファラドの生い立ちさ…」


 「…生い立ち?…」


 「…そうさ…一体、ファラドは、どんな環境で、育ったのか、気になってな…」


 「…どうして、気になったんですか?…」


 「…リンダさ…」


 「…リンダ?…」


 「…そうさ…ファラドは、リンダ・ヘイワースを手に入れようとしている…それが、本当か、どうかは、ひとまず、置いておいてだ…」


 「…」


 「…私が、気になったのは、そうやって、リンダを手に入れようとする、ファラドの姿勢さ…」


 「…姿勢? …どういう意味ですか?…」


 「…ファラドが、生粋のお坊ちゃまで、幼いときから、欲しいものは、なんでも、手に入れられる環境で、育って、その延長で、リンダを手に入れたいのか? それとも…」


 「…それとも、なんですか?…」


 「…真逆に、小さいときは、それほど、裕福でも、なんでもなく、大人になって、なんでも、手に入れられる環境に、なったから、小さいときは、欲しくても、手に入れられなかった反動で、今は、欲しいものがあれば、なんでも、手に入れようとするのか…そう、考えたのさ…」


 私の言葉に、葉尊は、考え込んだ…


 しばらく、考え込んだあと、


 「…さすがです…お姉さん…その発想はありませんでした…」


 と、私に言った…


 「…そう、考えれば、確かに、面白くなりますね…」


 「…そうだろ?…」


 「…ヤン=リンダの立場ならば、面白いと言ったら、怒られますが、ファラドが、どういう育ち方をしてきたのかで、たしかに、リンダへの想いも、わかります…」


 葉尊が、勢い込んで言った…


 「…たしかに、面白い発想というか、モノの見方ですね…しかし、よく、お姉さんは、そんなことがわかりましたね…」


 「…簡単さ…」


 「…簡単ですか?…」


 「…答えは、バニラさ…」


 「…バニラですか?…」


 「…そうさ…」


 「…バニラが、どうかしたんですか?…」


 「…私が、考えたのは、バニラとマリアのことさ…」


 「…バニラとマリア? …それが、どうか、したんですか?…」


 「…バニラは、アメリカのスラム出身で、苦労してきただろ? …それが、娘のマリアを、セレブの保育園に通わせている…」


 「…」


 「…つまり、環境が、真逆さ…そして、それが、マリアのために、なるのか、正直、私には、わからんさ…」


 「…どうして、わからないんですか?…」


 「…お金持ちは、お金持ちの子弟と、交流する…つまりは、今は、言わなくなったが、上流階級というか、今の言葉で、いえば、上級国民さ…」


 「…それが、どうか、したんですか?…」


 「…それが、一生続けば、いいさ…マリアが、後百年生きて、ずっと、今の暮らしを続けていければ、いいさ…でも、途中で、コケて、平凡な生活を送れと言われれば、できないだろ?…」


 「…それは…」


 「…いや、できないじゃない…最終的には、やらなければ、ならないのだけれども、そこに至るまでの、葛藤というか…生活レベルを下げるのは、大変なことさ…果たして、バニラはそれが、わかっているのか?…」


 「…」


 「…バニラがマリアを溺愛するのは、いいさ…自分がした苦労を娘にさせたくないのは、いいさ…でも、バニラだって、苦労から、学んだことだって、いっぱいあるはずさ…そんな苦労も一切させずに、マリアを育てようとするのが、いいことだとは、私は、思わんさ…」


 私の言葉に葉尊が考え込んだ…


 それから、


 「…さすがです…お姉さん…」

 

 と、私を持ち上げた…


 「…たいしたことじゃないさ…これは、私が他人だからさ…」


 「…他人だから?…」


 「…そうさ…自分のこととなると、誰もが、そうもいかなくなる…貧乏だったバニラが、娘を、セレブの保育園に通わせたい気持ちは、わかるさ…わかりやすく言えば、中卒や高卒の息子や娘が、東大に入ったようなものだろ?…自分ができなかったことが、できる…だから、嬉しくて仕方がないさ…」


 「…」


 「…でも、たとえ、中卒や高卒でも、それぞれ、苦労をしても、そこから、得た経験はあるさ…そして、それは、決して、無駄じゃないはずさ…たいした苦労もせず、大人になって、途中で、人生が、おかしくなったら、大変さ…」


 「…」


 「…バニラは、スラム出身で、貧乏だったから、たとえ、これから、また金のない暮らしに戻っても、生きてゆけるだろう…それは、言葉は悪いが、雑草の強ささ…」


 「…雑草の強さ?…」


 「…どんなことがあっても、へこたれない…そんな強ささ…」


 「…」


 「…そして、それが、今のバニラを作っているというか、根幹をなしている…でも、マリアには、それが、ないさ…」


 「…」


 「…もっとも、本音をいえば、私には、よくわからないさ…」


 「…なにが、わからないんですか?…」


 「…才能と環境さ…」


 「…どういうことですか?…」


 「…今のバニラのことさ…」


 「…バニラのこと?…」


 「…今のバニラと同じ苦労をして、成功をしても、バニラと真逆に、自分と同じように、普通の保育園に入れる親はいるはずさ…そして、そんな親は、たぶん、没落を恐れているのさ…」


 「…没落を恐れている?…」


 「…そうさ…セレブの保育園に娘を通わせて、セレブの小学校、中学校に通わせる…でも、途中で、金がなくなり、一般の中学に通わせたりしたら、可哀そうさ…きっと、それを恐れているんだと思う…」


 「…」


 「…それに、今、言った才能と環境さ…」


 「…才能と環境…」


 「…そうさ…今のバニラの例でいえば、マリアは、没落すれば、貧乏に耐えられないと思いがちだが、全員がそうじゃないさ…耐えられるヤツもいるはずさ…」


 「…」


 「…つまり、環境が、どんなに変わっても、平気なヤツは、いるはずさ…そして、それが、才能さ…」


 「…」


 「…ボクシングや格闘技でも、トレーニングすれば、誰でも、強くなれるんじゃないさ…強くなれるのは、一部の人間のみ…それと同じさ…環境が、どうであろうと、才能があるヤツは、どんなことにも、対応できるさ…」


 「…」


 「…そして、私の見るところ、マリアはその才能があるさ…」


 「…マリアに才能がある?…」


 「…そうさ…マリアは、誰とでも、すぐに仲良くなれる…これは、立派な才能さ…その才能が、潰れなければ、いいさ…」


 「…潰れる? …どうして、潰れるんですか?…」


 「…親が金持ちで、有名人だからさ…子供だから、それを鼻にかけて、増長すれば、友達も離れる…それが、心配さ…」


 私は、言った…


 すると、葉尊は、なにも、言わなかった…


 ずっと、黙り込んでいた…


 ただ、


 「…お姉さんには、ただ驚かされます…」


 と、呟いた…


 「…たいしたことは、ないさ…」


 私は、言った…


 「…バニラは雑草と言ったが、私も雑草さ…そして、雑草は、雑草の強さがある…」


 私は、続けた…


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