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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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135/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 135

「…オスマンが、このオジサンを、さらおうとしているのさ…」


 私は、マリアに説明して、やった…


 「…オジサン…」


 ファラドが苦笑する…


 「…オレよりも、年上のくせに、オレをオジサン呼ばわりして…」


 ファラドが、文句を言った…


 が、


 私は、気にせんかった…


 なぜなら、ここで、ファラドを相手に、している暇は、なかったからだ…


 「…オジサンをさらう?…」


 マリアが、不思議そうな顔をした…


 さらうという意味が、わからんかったのかも、しれん…


 私は、思った…


 「…つまり、このオジサンを、オスマンは、捕まえて、どこかに、連れ去ろうとしているの…」


 リンダが、告げた…


 すると、


 「…リンダ…アンタまで、オレを、オジサン呼ばわりか?…」


 と、ファラドが、リンダに、文句を言った…


 すると、リンダが、


 「…ぼやかない…ぼやかない…このマリアにとっては、私もアナタも、オバサンに、オジサン…そう呼ばれないのは、このお姉さんだけ…」


 「…たしかに…」


 ファラドが、苦笑する…


 私は、そんな二人のやり取りを、見て、頭に来たが、文句は、言わんかった…


 なぜなら、今、大切なのは、オスマンを、どうするか? だからだ…


 問題は、オスマンで、あって、このファラドや、リンダでは、ないからだ…


 そして、このファラドと、リンダを見て、ふと、以前、あの葉問が、このファラドを、倒したことを、思い出した…


 あのとき、葉問は、やはり、このファラドと、オスマンの関係を知らなかったのだろうか?


 ふと、疑問に、思った…


 「…リンダ…そういえば、葉問は…」


 と、口に出した…


 出さずには、いられんかったのだ…


 「…葉問?…」


 ビックリした表情になった…


 「…葉問のことは、考えなかった…」


 そのリンダの様子を見て、


 「…リンダの恋人か?…」


 と、ファラドが、告げた…


 すると、リンダが、すぐに、首を横に振った…


 「…私の恋人じゃない…残念ながら…」


 「…だったら、誰の恋人だ?…」


 ファラドが、面白そうに、聞く…


 「…バカね…このお姉さんの恋人に、決まってるじゃない…」


 「…このお姉さんの…」


 ファラドは、驚いたが、すぐに、


 「…そうだった…」


 と、頷いた…


 「…オレが、アイツと闘ったときも、アイツは、このお姉さんを、守るために、出てきた…」


 …なんだと?…


 …そんなバカな?…


 いや、


 たしか、以前も、このファラドは、今と、同じことを、言った…


 私は、それを、思い出した…


 「…あの葉問は、このお姉さんの白馬の騎士なの…」


 リンダが、面白そうに、言う…


 「…白馬の騎士? …あの男が?…」


 ファラドが、驚く…


 「…そうよ…このお姉さんに、なにか、あれば、真っ先に、駆け付ける…白馬の騎士…ボディーガードよ…」


 と、言ってから、


 「…ホントは、私の…リンダ・ヘイワースの白馬の騎士でいて、欲しかった…」


 と、付け加えた…


 それを、見て、ファラドは、


 「…ないものねだりだな…」


 と、笑った…


 「…ハリウッドのセックス・シンボルでも、手に入らないものが、あるわけだ…」


 「…その通り…」


 リンダが、頷いた…


 「…そして、その、リンダ・ヘイワースが、どうしても、手に入れたかったものを、このお姉さんが、難なく、手に入れている…」


 「…ホー…」


 ファラドが、感嘆の声を上げる…


 「…だから、ホントは、物凄く憎らしい…大げさに、いえば、殺したいほど、憎らしい…」


 リンダが、その青い目で、私を睨んだ…


 私は、ブルった…


 正直、一気に、首筋が、寒くなった…


 なぜなら、私は、これまで、誰にも、そんな怖い目で、睨まれたことはなかった…


 なかったのだ…


 おまけに、金髪碧眼(きんぱつへきがん)…


 碧(あお)い目だ…


 ハッキリ言って、黒い目よりも、碧(あお)い目の方が、怖い…


 これは、たぶん、私が、日本人だから…


 日本人の黒い目に、睨まれるのは、ある意味、慣れているが、碧(あお)い目で、睨まれることは、滅多にない…


 だから、怖いのだ…


 なにより、碧(あお)い目で、睨まれると、日本人の黒い目よりも、冷酷に、見えるというか…


 冷たく見える…


 だから、怖いのだ…


 が、


 リンダが、そんな凄い目で、私を睨んだのは、一瞬…


 ごく一瞬だった…


 すぐに、


 「…でも、憎めない…」


 と、続けた…


 「…このお姉さんは、憎めない…」


 と、言って、苦笑した…


 「…ホント、得なお姉さん…このお姉さんで、なければ、とっくに八つ裂きにしてやるのに…」


 と、またも、凄い目で、私を睨んで、言った…


 私は、ビビった…


 文字通り、ビビった…


 ホントは、小心者の私は、ビビッて、足がすくんでしまった…


 ホントは、今すぐ、この場から、逃げ出したいほど、怖かったが、真逆に、足が、すくんで、動かなかった…


 文字通り、足が、固まって、しまった…


 その姿を見た、マリアが、


 「…どうしたの? …矢田ちゃん?…」


 と、心配そうに、私に、声をかけてきた…


 私は、


 「…なんでもない…なんでもないさ…」


 と、言いたかったが、言えんかった…


 恐怖で、声が、出んかった…


 すると、


 「…矢田ちゃん…気がちっちゃいものね…」


 と、マリアが、言った…


 …なんだと?…


 と、言いたかったが、声が出んかった…


 恐怖で、声が出んかったのだ…


 だが、すぐに、


 「…リンダさんも、そんな目で、矢田ちゃんを見ちゃ、ダメ!…」


 と、マリアが、リンダを叱った…


 「…矢田ちゃんは、気がちっちゃいんだかから…」


 マリアが、言うと、リンダと、ファラドが、互いに、目を合わせて、


 「…プッ!…」


 と、吹き出した…


 「…まったく、どっちが、年上か、わからないわね…」


 リンダが、言うと、ファラドは、


 「…」


 と、無言だったが、明らかに、その表情は、リンダに同意していた…


 私は、頭に来たが、文句は言えんかった…


 なにか、文句を言って、リンダを怒らせるのが、怖かったからだ…


 まるで、リンダが、巨大なライオンかなにかに、見えたのだ…


 そして、この矢田トモコは、ウサギ…


 ライオンの餌のウサギが、ふさわしかった…


 むろん、この矢田トモコは、ウサギだから、ライオンに立ち向かうことなど、できない…


 ウサギだから、できるのは、逃げるだけ…

 

 逃げるだけだ!…


 が、


 その逃げることも、今や、恐怖で、足がすくんで、動かなかった…


 だから、ハッキリ言えば、


 …万事休す…


 なにも、できんかった…


 が、


 今は、このリンダは、敵では、なかった…


 敵は、オスマン…


 オスマンだからだ…


 だから、マリアに、


 「…オスマンを、説得してくれ…」


 と、言った…


 「…オスマンを、説得?…」


 と、マリアが、不思議そうな顔を、した…


 「…説得って、なに?…」


 すると、リンダが、


 「…みんなと、仲良くすることよ…」


 「…仲良く?…」


 「…そうよ…オスマンは、この保育園でも、みんなと、仲良くできないでしょ? …それは、サウジでも、同じ…」


 「…サウジでも、同じって?…」


 「…兄貴は、偉いんだけれども、もっと、偉くなろうとしているんだ…」


 「…もっと、偉くって?…だって、オスマンは、今でも、偉いんでしょ?…」


 「…人間の欲望には、際限がないということよ…」


 リンダが、言った…


 「…際限って?…」


 と、マリア…


 「…つまり、アレさ…例えば、マリアが、キットカットを、10枚食べれば、飽きるところが、あのオスマンは、100枚でも、1000枚でも、食べられると、いうことさ…」


 「…1000枚でも…」


 マリアが、驚いた…


 が、


 その隣で、リンダが、


 「…お姉さん…その例えは、ちょっと…」


 と、苦言を呈した…


 「…いくら、なんでも、キットカット1000枚は、大げさ過ぎるだろ? …オレでも、無理だ…」


 と、今度は、ファラドが、笑った…


 私は、頭に来た…


 「…例えだ…あくまで、例えに、過ぎん…」


 私は、大声で、言った…


 「…例えに、過ぎんのだ!…」


 私は、大声で、怒鳴った…


 すると、


 すると、だ…


 何事かと、保育園の園児たちが、大勢、集まって来た…


 いや、


 園児たちだけではない…


 その中には、大人も、いた…


 保育園の先生の姿も、あった…


 私は、驚いたが、考えてみれば、当たり前のことだ…


 これまで、私や、リンダ…それに、ファラドが大声で、話していた…


 だから、それに、気付かぬことが、あるはずがなかったからだ…


 それよりも、これまで、誰も、やって来ないことが、不思議だった…


 だから、


 「…どうして、今まで、誰も、出て来なかったんだ?…」


 と、聞きたかったが、その前に、子供たちが、


 「…矢田ちゃん…矢田ちゃん…」


 と、私の周りに、集まって、来た…


 「…矢田ちゃん…遊ぼ…遊ぼ…」


 と、園児たちが、私の手を握って来た…


 私は、どうして、いいか、わからんかった…


 子供たちと、遊ぶのは、嫌いではない…


 嫌いではないのだ…


 が、


 今は、遊ぶときではない…


 オスマンに、どう立ち向かうか、だ…


 そのために、私と、リンダ、ファラドが、知恵を絞っていたのだ…


 私は、思った…


 すると、恐る恐る、保育園の女の先生が、


 「…さっきから、一体、ここで、なにを?…」


 と、聞いてきた…


 「…なにを? と、聞かれても…」


 私は、答えることが、できんかった…


 って、いうよりも、これまで、どうして、誰も、やって来なかったのか?


 その方が、不思議だった…


 だから、


 「…どうして、今まで、誰も、来なかったんだ?…」


 と、私は言った…


 言わずには、いられんかった…


 すると、女の先生が、


 「…矢田さんだから…」


 と、答えた…


 「…なにっ? …私だから?…」


 「…どうして、ここに、いるのか、わからないけれども、矢田さんだから、なにか、悪いことを、しているわけじゃないと、思って…」


 その言葉を聞いて、リンダとファラドが、


 「…プッ!…」


 と、吹き出した…


 「…たしかに、このお姉さんに、なにか、悪いことは、できない…」


 と、リンダが言えば、ファラドは、


 「…」


 と、なにも、言わなかったが、顔は、笑っていた…


 私は、そんな二人の反応を見て、怒っていいか、どうか、わからんかった…


 別に、悪口を言われたわけでも、なんでもない…


 だから、怒っていいか、どうか、わからんかったのだ…


 すると、


 「…でも、ずっと、ここに、矢田さんが、いるから、さすがに、どうしていいか、悩んでいると、マリアちゃんが…」


 と、先生が、続けた…


 「…マリアが?…」


 「…私が、様子を見てくると、言って…」


 私は、マリアを見た…


 すると、先生が、


 「…マリアちゃんは、この園児たちのリーダーだから…」


 と、言った…


 「…リーダー?…」


 私と、リンダ、ファラドが、同時に、声を発した…


 そして、3人とも、マリアを見た…


 3歳の幼児の女のコを見た…


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