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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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136/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 136

「…保育園のリーダー? …マリアが?…」


 言いながらも、実は、驚かんかった…


 このマリアは、常に、ひとを仕切っている…


 以前、この矢田が、この保育園で、子供たち相手に、列車ごっこや、ムカデごっこをしていたときも、仕切っていた…


 だから…


 もしや…


 もしや、


 生まれながらのリーダーかも、しれん…


 生まれながらに、他人様を、仕切る才能があるのかも、しれんと、思った…


 が、


 やはり、それは、ありえんと、考え直した…


 なぜなら、このマリアは、あのバニラの娘だからだ…


 あのバカ、バニラの娘だからだ…


 マリアは、カワイイが、それと、これとは、話が、別だ…


 いかに、マリアが、可愛くても、マリアの才能と、可愛さを、混同しては、いかん…

 

 いっしょに、しては、いかんと、思った…


 世の中には、親の欲目で、自分の子供を、良く思う親が、いるが、それも、程度の問題だ…


 あまりにも、本人の能力とかけ離れたことを、言うと、頭が、おかしいのでは?


 と、思われる…


 それと、同じだ…


 私は、思った…


 が、


 私が、そう考えていると、


 「…やはり、葉敬の娘…血は、争えないものね…」


 リンダが、言った…


 「…台北筆頭のCEОの娘か…」


 と、ファラドが、続けた…


 「…そう…」


 リンダが、答える…


 そして、


 「…このマリアは、最強…父親は、葉敬…そして、母親は、バニラ・ルインスキー…美の化身…将来が、楽しみって、いうか、末恐ろしいわ…」


 と、言った…


 「…末恐ろしい?…」


 と、ファラド…


 「…ルックスも、才能も、恵まれすぎている…」


 リンダが、言う…


 すると、その言葉を受けて、


 「…だから、兄貴が、憧れたのかな…」


 と、ファラドが、言った…


 「…どういう意味?…」


 「…兄貴は、あの通り、小人症だ…だから、ルックスに、恵まれた、マリアに、惹かれるのは、わかる…」


 「…でも、それを、言えば、オスマンが、このお姉さんに、憧れるのは、説明が、つかないわ…」


 そう言って、二人は、私を見た…


 この矢田トモコを見た…


 同時に、私は、不機嫌になった…


 ひどく、不機嫌になった…


 この二人の会話を、聞く限り、この矢田とマリアを、比べている…


 しかも、


 しかも、だ…


 マリアを、優れた代表のように、言い、この矢田を劣った代表のように、言っている…


 これが、許せるわけがなかった…


 なかったのだ…


 あたかも、この矢田が、マリアに負けているかのようだ…


 この35歳の矢田トモコが、3歳のマリアに負けているかのようだ…


 「…オマエたち…ふざけたことを、言うんじゃないさ…」


 私は、怒鳴った…


 「…どうして、この35歳の矢田トモコが、3歳のマリアに負けなきゃ、いかんのさ…」


 私は、怒鳴った…


 「…ふざけて、もらっちゃ、困るのさ…」


 私が、激怒して言うと、これまで、


 「…矢田ちゃん…矢田ちゃん…」


 と、言って、私の周りに、いた子供たちが、ビックリした表情になった…


 そして、中には、驚いて、泣き出す子まで、現れた…


 また、泣き出さんまでも、誰もが、一気に、引いたというか…


 皆、べそをかいた表情になった…


 とっさに、


 …しまった…


 と、思った…


 子供たちの前で、怒るんじゃなかったと、気付いた…


 私は、たしかに、頭に来たが、子供たちの前で、怒るのは、まずかったと、気付いた…


 が、


 手遅れだった…


 私は、どうして、いいか、わからんかった…


 …泣くな!…


 というのは、容易い…


 …泣いちゃ、ダメ!…


 と、言うのは、簡単だ…


 が、


 それを、言ったところで、子供たちの機嫌が、直るか、どうかは、わからん…


 いや、


 わからんではない…


 直るはずもなかった…


 だから、


 困った…


 困ったのだ…


 すると、


 「…泣いちゃ、ダメ!…」


 という声が、聞こえてきた…


 声の主は、あろうことか、マリアだった…


 マリアだったのだ…


 「…べそも、かいちゃ、ダメ!…」


 と、言って、マリアが、子供たちを叱った…


 私は、驚いた…


 まるで、マリアが、子供たちの母親か、なにかのようだったからだ…


 「…聖母マリア…」


 と、誰かが、言った…


 「…なに、聖母マリアだと?…」


 私は、言った…


 言いながら、聖母マリアと言った女の顔を見た…


 リンダだった…


 リンダ・ヘイワースだった…


 「…この子供たちのお母さん…」


 リンダが、笑う…


 このマリアが、この子供たちのお母さん?


 さすがに、ありえんが、態度だけ、見れば、お母さん…


 お母さんで、間違いは、なかった…


 「…だったら、リンダ…この私は、なんだ? この矢田トモコは、なんだ?…」


 私は、聞いた…


 聞かずには、いられんかった…


 「…サウジの矢田…」


 あっさりと、リンダが、言った…


 「…サウジの矢田だと? 一体、どういう意味だ?…」


 「…アラビアのロレンス…」


 リンダが、いきなり、言った…


 「…アラビアのロレンスだと? …なんだ、それは?…」


 「…有名な映画…実在のモデルを元にした…」


 「…それが、一体、どうした?…」


 「…お姉さんは、それと、同じ…アラブの至宝と呼ばれた、オスマン殿下が、後ろ盾になり、サウジの矢田と、呼ばれる…」


 リンダが、説明する…


 その言葉を聞いて、隣のファラドが、


 「…アラブの女神…」


 と、言い出した…


 「…なんだ、それは?…」


 「…矢田さんの別称です…今、アラブ世界で、有名です…」


 「…なんだと?…」


 「…このお姉さんが、オスマンに、気に入られ、その結果、クールや、台北筆頭の名が、アラブ世界に広まり、一気に、売り上げが伸びた…これは、オスマンのおかげ…そして、このお姉さんのおかげ…」


 「…私のおかげ?…」


 「…そうよ…」


 リンダが、告げる…


 その言葉を、聞きながら、そう言えば、以前、そんな言葉を聞いたことを、思い出した…


 が、


 すっかり、忘れていた…


 無理もない…


 私は、自分自身を慰めた…


 アラブの女神だ、なんだと、大層な名前だから、以前、聞いたときは、驚いたが、聞いたのは、その一回だけ…


 一回だけだ…


 しかも、私が、アラブ世界へ、行って、直接聞いたわけでもない…


 これは、誰でも、同じだが、わかりやすい例で、言えば、芸能人で、例えば、オマエは、アラブで、人気が、あると、周囲から、聞かされたと、する…


 こう言われれば、誰もが、悪い気持ちは、しないが、本当には、どれだけ、人気があるのか、わからない…


 だから、アラブに行って、現地で、熱狂的な歓迎を受ければ、


 「…オレ(アタシ)は、本当に、凄い人気があるんだ…」


 と、実感するし、真逆に、大した歓迎を受けなければ、


 「…人気があるって、聞いたけれども、たいしたことはないな…」


 と、落胆する…


 それと、同じだ…


 要するに、経験だ…


 体験だ…


 言い訳するわけではないが、一回や二回、自分が、アラブの女神と呼ばれていると、言われても、簡単に忘れる(笑)…


 世の中、そういうものだ(爆笑)…


 私は、そう思った…


 そう、思ったときだった…


 ファラドが、いきなり、


 「…そういうことか?…」


 と、言い出した…


 私は、なにが、そういうことか、わからんかった…


 そして、それは、リンダも、同じだったようだ…


 「…なにが、そういうことなの? …ファラド?…」


 と、不思議そうに、聞いた…


 「…兄貴だよ…兄貴の弱点?…」


 「…オスマンの弱点?…」


 「…このマリアと、このお姉さん…この二人に、兄貴は、弱い…」


 「…ちょっと、ファラド…アナタ、なにが、言いたいの?…」


 と、リンダ…


 「…この二人が、いっしょに、兄貴を説得すれば、いい…」


 「…説得って?…」


 と、言いながら、リンダは、私とマリアを見た…


 「…たしかに、この二人が、オスマンのお気に入りだということは、わかるけれども…」


 リンダが、口ごもる…


 「…でも、この二人が、オスマンを説得できるかは…」


 リンダの声が、小さくなった…


 が、


 それとは、真逆に、


 「…できるさ…」


 と、ファラドは、力強く言った…


 「…兄貴は、自分が、好きな人間には、弱いんだ…」


 「…弱い?…」


 「…誰だって、そうだろ? …自分が、好きな男や女に、これは、ダメだ、とか、これは、こうしろ、と、言われれば、断れない…」


 と、ファラドが、言ってから、


 「…おーっと、それは、リンダ・ヘイワース…アンタが、一番、わかっているはずだ…」


 と、苦笑した…


 「…ハリウッドのセックス・シンボル…アンタが、その大きな胸を強調したドレスを着て、パンツが、見えそうな姿を見せれば、男は、老いも若きも、よだれを流さんばかりに、喜ぶ…」


 ファラドが、笑う…


 「…リンダ…オマエ自身が、自分を好きな人間に、なにかを、頼めば、いかに、有利に、物事が、運ぶか、わかっているはずだ…」


 ファラドが、断言した…


 私は、そのファラドの言葉に、同意…


 激しく、同意した…


 この矢田トモコも、同意したのだ…


 だから、私は、リンダを見た…


 リンダが、どういう反応をするのか、知りたかったからだ…


 ハリウッドのセックス・シンボルが、どういう反応をするか、知りたかったからだ…


 が、


 リンダの反応は、


 「…たしかに、それは、ある…」


 と、些か、冷たいものだった…


 これは、意外だった…


 私は、どうして? と、思った…


 リンダは、もっと、自慢げに、言うものかと、思ったからだ…


 「…でもね…ファラド…」


 「…なんだ?…」


 「…自分が、好きな相手というのは、大抵が、自分を好きになってくれないものよ…」

 

 リンダが、しみじみ語る…


 「…真逆に、自分を好きになってくれる人間は、こういっては、なんだけれども、自分にとっては、どうでもいいひと…」


 いつしか、リンダが、私の顔を見て、話していた…


 「…もちろん、役には、立つ…このリンダ・ヘイワースのファンは、世界の著名人…おおげさでなく、世界を動かす力を持つ、人間も、いっぱいいる…でも…」


 「…でも、なんだ?…」


 と、ファラド…


 「…肝心の…もっとも、大切な人間は、私には、振り向かない…」


 リンダが、なぜか、私の顔を見ながら、言った…


 そして、それを見て、ファルドが、


 「…なるほど…」


 と、呟いた…


 私には、なにが、


 「…なるほど…」


 だか、わからんかったが、聞かんことにした…


 ここで、リンダに、聞けば、なにか、私の身に起きる…


 そんな不安があった…


 文字通り、なにか、起こるか、わからん不安があったのだ…


 「…まあ、それ以上は、聞かないことにしよう…」


 ファラドが、言った…


 が、


 そのファラドの顔は、ニヤニヤしながら、私の顔を見ていた…


 私は、ファラドのようなイケメンは、好きだが、このファラドの顔は、好かんかった…


 好かんかったのだ…


 代わりに、なぜか、マリアの顔を、見た…


 が、


 マリアの顔は、怒っていた…


 なぜか、怒っていた…


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