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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アラブの女神編  作者: トモサン


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104/192

35歳のシンデレラ アラブの女神編 104

…しかし、葉尊…


 まさか、夫の葉尊の名前が、ここで、出てくるとは、思わなかった…


 想像も、できんかった…


 が、


 考えてみれば、至極、当然のことだった…


 何度も、言うように、あのとき、ファラドと、リンダに化けたバニラが、闘った…


 タイマンで、闘った…


 一対一で、闘った…


 バニラは、180㎝と、外人の女としても、大柄だが、やはり、ファラドは、男…


 一対一のタイマンでは、勝ち目がなかった…


 そこへ、突然、葉問が、現れた…


 バニラに加勢すべく、現れた…


 葉問は、ヤンキー…


 元々、暴力の匂いがする…


 だから、ファラドに対抗できる…


 ファラドと、闘って、勝ち目がある…


 これは、葉尊では、無理…


 私の夫の葉尊では、無理…


 できない…


 葉尊は、真面目…


 絵に描いたように、真面目だ…


 暴力のボの字も、ない…


 だから、あの場に葉問が、現れた…


 私は、今さらながら、思った…


 葉尊が、どこまで、知っているのか、わからない…


 だが、あのとき、あのセレブの保育園で、なにかが、起こることは、葉尊も、知っていたに違いない…


 そして、その対応を、自分ではなく、葉問に任せたに違いない…


 おそらく、なにか、トラブルが、起きることを、予想して、その対応を、葉問に、任せたに違いなかった…


 葉尊は、頭脳派…


 葉問は、肉体派…


 こう分けるのは、極端すぎるが、これは、事実…


 事実だ…


 同時に、真面目な葉尊には、ロマンスが、合わない…


 ロマンスが、似合わない…


 対極に、


 葉問には、ロマンスが、似合う…


 それは、なぜか?


 それは、葉問は、危険な香りがするからだ…


 危険な匂い=暴力の匂いが、するからだ…


 ヤクザや、ヤンキーが、好きな女は、皆、同じ…


 いつ、なにかが、起こるかもしれない、危険な匂いが、好きなのだ…


 爆薬ではないが、いつ爆発するか、わからない危険な、香りが、好きなのだ…


 そして、その危険な香りが好きな、女は、どこの世界でも、一定数は、いる…


 存在する…


 そして、それを、見抜いて、ジャニーズのようなアイドルグループには、必ず、やんちゃな危険な香りのする、男を入れている…


 それが、必ず、一定数の少女の心を掴むことを、知っているからだ…


 そして、それは、ヤクザ映画が、いつの時代でも、一定数のファンを掴んでいる事実を見ても、わかる…


 ヤクザ映画が好きなのは、必ずしも、男だけではない…


 女もいる…


 そういうことだ…


 つまり、アレコレ、説明が、長くなったが、いわゆる、ヤクザやヤンキーを、好きな女は、どこの世界にも、一定数は、いるということだ…


 だから、葉問は、モテると、言いたいのだ(笑)…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…なにを、考えている? …矢田…」


 と、言う声がした…


 当たり前だが、声の主は、お嬢様…


 矢口のお嬢様だった…


 「…い…いえ…」


 曖昧に、返答した…


 まさか、葉問のことを、考えていたとは、言えないからだ…


 私が、それ以上、なにも、言わないと、矢口のお嬢様が、


 「…矢田…」


 と、再び、私に声をかけた…


 「…なんでしょうか?…」


 「…もっと、葉尊氏と、仲良くしろ…」


 「…葉尊と仲良く?…」


 「…そうだ…葉尊氏は、オマエを心配していたゾ…」


 「…私を心配?…」


 「…オマエは、妙に危なっかしい…私から、見ても、だ…」


 「…お嬢様から、見ても、危なっかしい?…」


 「…オマエは、知らんかもしれんが、オマエは、ファラドとオスマン殿下の争いに巻き込まれてる…」


 「…私が、ファラドと、オスマン殿下の争いに…」


 「…だから、今日、アタシが、わざわざ、この家に、やって来たんだ…」


 「…お嬢様が、やって来た?…」


 「…そうだ…この家に、盗聴器が、仕掛けてないか、確かめに、来たんだ…」


 「…一体、誰が、盗聴器を?…」


 「…それは、誰かは、アタシも知らん…ただ…」


 「…ただ、なんですか?…」


 「…ファラドについた人間が、いるかもと、疑っただけだ…」


 「…疑っただけ?…」


 「…そうだ…」


 「…ファラドは、葉尊氏の実父の葉敬氏に、我がスーパージャパンの買収を、持ちかけた…どうしてだか、わかるか、矢田…」


 「…わかりません…」


 私は、即答した…


 すると、矢口のお嬢様が、


 「…矢田…少しは、考えろ…」


 と、私を叱った…


 だから、仕方なく、私は、考えた…


 が、


 いくら、考えても、答えは、出んかった(涙)…


 その様子を見て、


 「…アタシを巻き込むためだ…矢田…」


 と、矢口のお嬢様が、答えを言った…


 「…お嬢様を巻き込むため?…どうして、お嬢様を巻き込むんですか?…」


 「…それは、矢田…アタシが、オマエと、外見が、瓜二つだからだ…」


 「…それが、一体、なにか?…」


 「…鈍いな…矢田…」


 お嬢様が、明らかに、苛立った…


 「…オマエそっくりの人間が、葉尊氏の前に、現れる…すると、どうだ? 葉尊氏は、動揺する…ファラドは、それを、狙ったんだ…だから、アタシを巻き込んだ…そのために、葉尊氏の実父の葉敬氏に、我がスーパージャパンの買収を、勧めたんだ…」


 「…そ、そんな…」


 「…そんなも、こんなもない…真実は、いつも、一つだ…矢田…」


 矢口のお嬢様が、以外にも、コナンの決め台詞を、口にした…


 私は、これで、この矢口のお嬢様が、名探偵コナンのファンであることを、知った…


 このお嬢様が、コナンのファンとは?


 意外といえば、意外…


 あまりにも、意外だった(爆笑)…


 「…ファラドの狙いは、最初から、オスマン殿下の追い落としだ…それが、すべてだ…」


 矢口のお嬢様が、断言した…


 「…その目的を遂げるために、アタシもオマエも利用されたんだ…」


 「…利用された?…」


 「…考えて見ろ…矢田…」


 「…なにを考えるんですか?…」


 「…オスマン殿下の弱点だ…」


 「…殿下の弱点?…」


 「…オマエ…まさか、殿下の弱点が、なんだか、わからないわけじゃ、あるまいな…」


 矢口のお嬢様が、唖然として、言った…


 だから、私は、考えた…


 少しばかり、悩んだ…


 その結果、


 「…もしや、マリアですか?…」


 と、言った…


 「…その通りだ…」


 お嬢様が、我が意を得たりとばかりに、頷いた…


 私そっくりの、顔で、頷いたのだ…


 「…すべては、マリアさんが、始まりだ…」


 「…マリアが始まり?…」


 「…そうだ…オスマン殿下は、マリアさんが、好き…だったら、まずは、マリアさんが、誰の子供か、気になる…当たり前だ…」


 「…」


 「…が、すぐには、わからなかった…マリアさんは、いつも、お手伝いさんに、あのセレブ保育園に、送迎してもらう…母親が、世界的な著名人のモデル…バニラ・ルインスキーさんだと、バレないためだ…」


 「…」


 「…が、ファラドは、やり手だ…時間をかけて、それを掴んだ…そして、マリアさんの父親が、台湾の大企業、台北筆頭の葉敬氏だということも、掴んだ…そして、その葉敬氏の周囲の人物…息子の葉尊氏…その妻の矢田、オマエたちのことを、調べ上げた…」


 「…」


 「…そして、その延長線上に、アタシもいたということだ…」


 「…どういう意味ですか?…」


 「…ファラドが、オスマン殿下の追い落としを図る…そのためには、マリアさんを利用するに限る…だが、その目的を知られては、困る…だから、周囲の者を、利用する…アタシの会社の、買収を、葉敬氏に持ち掛けたのも、その一環だ…」


 「…」


 「…つまり、陽動作戦だ…矢田…」


 「…陽動作戦…」


 「…戦争でいえば、例えば、他国が、東京を攻撃する…当然、日本は、東京を守ろうと、戦力をそこに、集中する…すると、どうだ?   他の地域は、戦力が手薄になる…そして、本当の目的…例えば、神戸とか、福岡とかを、攻撃する…それと、同じだ…」


 矢口のお嬢様が、のたまった…


 私は、唖然とした…


 唖然として、言葉が、なかった…


 まさか、それが、真実…


 真実だとは、思わんかった…


 思わんかったのだ…


 まさに、


 まさか…


 まさか、だ…


 すべては、あのファラドが、オスマン殿下を、追い落とすため…


 そのために、利用されたとは、思わんかった…


 露ほども、思わんかったのだ(涙)…


 しかし、そんな情報を、どこで?


 このお嬢様は、どこで、得たのか?


 疑問だった…


 甚だ、疑問だった…


 さっき、聞いたときは、


 「…蛇の道は蛇…」


 と、答えて、正直に、答えなかった…


 が、


 私には、わかる…


 ずばり、想像が、つく…


 おそらくは、葉尊か、その実父の葉敬に、聞いたに違いなかった…


 葉尊も、葉敬も、バカではない…


 当たり前だが、バカではない…


 今、この矢口のお嬢様が、言った、ファラドと、オスマン殿下の争いに、自分たちが、巻き込まれていることに、気付いたに違いない…


 そして、対策を講じたに違いなかった…


 対策?


 一体、どんな対策だ?


 私は、考えた…


 途端に、脳裏に、オスマン殿下が、リンダを、サウジに誘った一件を思い出した…


 リンダ…リンダ・ヘイワースに、


 「…一度、サウジに、来てみませんか?…」


 と、オスマン殿下が、誘ったことを、思い出した…


 私は、あのとき、


 「…バカ、それは、オマエが、オスマン殿下に、口説かれているんだ!…」


 と、内心、思ったが、違ったのかも、しれん…


 本当は、リンダを、守ろうとしたのかも、しれんと、気付いた…


 オスマン殿下が、自分と、ファラドの争いに、リンダが、巻き込まれると、危惧したのかも、しれんと、気付いた…


 だから、それを避けるために、リンダを、サウジに、誘ったのだと、気付いた…


 オスマン殿下は、アラブの至宝と呼ばれた人物…


 サウジのみならず、アラブ世界で、強い、影響力を持っている…


 だから、リンダをサウジに誘うことで、ファラドから、守ろうとしたのかも、しれんと、気付いた…


 少なくとも、この日本で、リンダを、守るよりも、リンダを、サウジに、連れて行った方が、リンダを、守りやすい…


 そう、考えたのかも、しれん…


 私は、今さらながら、気付いた…


 オスマン殿下は、以前から、リンダ・ヘイワースの熱狂的なファンと、公言していたということだから、それを逆手に取られたのだろう…


 誰でも、自分の好きな人間…


 あるいは、


 自分が、大切に思っている人間が、人質に取られでも、したら、堪ったものではない…


 逆に、いえば、だからこそ、狙われた…


 狙われたのだ…


 リンダと、マリア…


 この二人が、狙われたのだ…


 二人とも、オスマン殿下が、好きな女だったからだ…


 だから、狙われたのだ…


 が、


 そこまで、考えて、気付いた…


 そもそも、なんで、このお嬢様が、この家にやって来たか?


 あらためて、考えた…


 すると、さっき、このお嬢様が、

 

 「…オマエは、妙に危なっかしい…私から、見ても、だ…」


 という言葉を思い出した…


 あの言葉の意味は、一体?


 そう言えば、その前にも、

 

 「…そうだ…葉尊氏は、オマエを心配していたゾ…」


 とも、言っていた…


 …心配?…


 …私を心配?…


 これは、一体、どういう意味だ?


 いや、


 心配の意味は、わかる…


 問題は、どうして、私が、心配なんだ? ということだ…


 …まさか?…


 …まさか?…


 自分でも、意外な事実が、見つかった…


 まさかとは、思うが、意外な事実が、見つかった…


 だが、


 それが、本当か、どうかは、わからない…


 だから、


 「…お嬢様…お嬢様は、さっき、私が心配と、おっしゃいましたね?…」


 と、聞いた…


 「…そうだ…」


 「…どうして、私が、心配なんですか?…」

 

 「…それは…」


 お嬢様が、言い淀んだ…


 だから、すかさず、


 「…それは、もしかしたら、私が、オスマン殿下のお気に入りだからですか?…」


 と、私は、ハッキリ言った…


 自分で、自分のことを、オスマン殿下のお気に入りというのは、どうかと、思ったが、言わずには、いられなかったのだ…


 「…だから、私も、マリアや、リンダ、同様、ファラドに狙われているから、心配だと、お嬢様は、言いたかったのですね?…」


 私は、勢い込んで、言った…


 すると、矢口のお嬢様が、


 「…矢田…ようやく、オマエも、自分の置かれた立場が、わかったようだな…」


 と、言った…


 そして、それは、我が意を得たりとばかりに、実に、満足そうな表情だった…


 得意満面な表情だった…


私そっくりの大きな口が、満足そうに、笑っていた…


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