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君に捧ぐ狂詩歌  作者:
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7/9

第二話(3)

「何入れる~?」

照屋が予約するパネルをいじっている。

「どうなんだろう、まぁ流行りの曲にしようかな。」

「いいね~。じゃあHoshiの曲、歌ってみたら?」

「いや、もうイントロ始まっちゃってるじゃん。」

俺の承諾の言葉を聞く前にもう流れ始めていたのだ。

俺はマイクを手汗ごと握る。

―羨望している、いつか追い越したい相手の曲…。

音程のバーがはずれる度に冷や汗が額に流れる。

ビブラート?こぶし?しゃくり?フォール?フェイク?音程の下に書かれているものにピンとこない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「78点。おめ~。」

「平均点高すぎだろ…。87って…。」

俺は膝から崩れるように転びそうだった。

「まぁまぁ。最近の曲難しいし。それにカラオケがうまいのと歌がうまいのは違うって言うじゃん。」

「でも、ひとつの指標として呼んだんでしょ?」

すると、照屋が眉間にしわを寄せる。

「…し、しひょう?」

「基準ってこと。」

「あ~ね。まぁ、そうだけど所詮、機械だから。」

その言葉に一瞬救われた気がした。それでも、よぎる残酷さ。

ネットで調べて、歌配信を見てもカラオケの点数は90が当たり前だった…。

―機械をも納得させられる歌が要るのか?

などと考えてしまう。

「…そうだよな…。」

「透がよく聞いてる『SS』の曲とか歌ってみたら?」

「変わらん気がするけど…。じゃあ『Scar Tissue』で。」

「いいねぇ、綴り分からんけど。」

「なんだよ。」

思わずクスッと笑ってしまう。俺はタブレットを借りてScar Tissueをいれた。

そしてイントロが流れた瞬間、肩の力が自然に抜ける。頭の中で思うようにリズムが流れる。何百回も聞いた曲なんだ。歌詞はもちろん息継ぎだって、歌い方の癖だって全部自然に出せるような気がした。

「いい顔してんじゃん。」

小さくそんな照屋の声が聞こえた。

―――――――――――――――――

「やっぱ、そんなに変わんないじゃん。」

俺は少しショックを受けていた。

「ほら、でも81点じゃん!3点デカいよぉ~?しかも、楽しそうだったよ。」

とニヤニヤしながらジュースの入ったグラスをくるりと揺らす。

「それにほら、これ聴いてみ?」

照屋は大爆音で俺の歌声を流してきた。

―なんだ…これ。

俺の口は開かなかった。

「ほぉ~ら、透は過小評価しすぎなんだよ。」

照屋はニヤニヤしながら続ける。

「こう思ったでしょ。」

「「本当に俺?」」

わざと被せてきた照屋にむっとするが、自分の歌に思ったより希望があった。

「どうしよう、照屋。」

「やるしかないっしょ!」

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