第二話(3)
「何入れる~?」
照屋が予約するパネルをいじっている。
「どうなんだろう、まぁ流行りの曲にしようかな。」
「いいね~。じゃあHoshiの曲、歌ってみたら?」
「いや、もうイントロ始まっちゃってるじゃん。」
俺の承諾の言葉を聞く前にもう流れ始めていたのだ。
俺はマイクを手汗ごと握る。
―羨望している、いつか追い越したい相手の曲…。
音程のバーがはずれる度に冷や汗が額に流れる。
ビブラート?こぶし?しゃくり?フォール?フェイク?音程の下に書かれているものにピンとこない。
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「78点。おめ~。」
「平均点高すぎだろ…。87って…。」
俺は膝から崩れるように転びそうだった。
「まぁまぁ。最近の曲難しいし。それにカラオケがうまいのと歌がうまいのは違うって言うじゃん。」
「でも、ひとつの指標として呼んだんでしょ?」
すると、照屋が眉間にしわを寄せる。
「…し、しひょう?」
「基準ってこと。」
「あ~ね。まぁ、そうだけど所詮、機械だから。」
その言葉に一瞬救われた気がした。それでも、よぎる残酷さ。
ネットで調べて、歌配信を見てもカラオケの点数は90が当たり前だった…。
―機械をも納得させられる歌が要るのか?
などと考えてしまう。
「…そうだよな…。」
「透がよく聞いてる『SS』の曲とか歌ってみたら?」
「変わらん気がするけど…。じゃあ『Scar Tissue』で。」
「いいねぇ、綴り分からんけど。」
「なんだよ。」
思わずクスッと笑ってしまう。俺はタブレットを借りてScar Tissueをいれた。
そしてイントロが流れた瞬間、肩の力が自然に抜ける。頭の中で思うようにリズムが流れる。何百回も聞いた曲なんだ。歌詞はもちろん息継ぎだって、歌い方の癖だって全部自然に出せるような気がした。
「いい顔してんじゃん。」
小さくそんな照屋の声が聞こえた。
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「やっぱ、そんなに変わんないじゃん。」
俺は少しショックを受けていた。
「ほら、でも81点じゃん!3点デカいよぉ~?しかも、楽しそうだったよ。」
とニヤニヤしながらジュースの入ったグラスをくるりと揺らす。
「それにほら、これ聴いてみ?」
照屋は大爆音で俺の歌声を流してきた。
―なんだ…これ。
俺の口は開かなかった。
「ほぉ~ら、透は過小評価しすぎなんだよ。」
照屋はニヤニヤしながら続ける。
「こう思ったでしょ。」
「「本当に俺?」」
わざと被せてきた照屋にむっとするが、自分の歌に思ったより希望があった。
「どうしよう、照屋。」
「やるしかないっしょ!」




