第二話(2)
「はーい!今行く!」
普段は出さない大きな声で言い放つ。重い足取りでリビングへ行き、席につく。そのままテレビでサブスクをつけてアニメを見る。
―今日も…カレーか…。俺がそこまで好きじゃないことなんてどうでもいいんだろう。
俺は出しそうになったため息を飲み込み、カレーを頬張る。
熱々で独特なにおいのルー。その味が染み込んだ具材の数々。
「はぁ~。疲れた。」
母親がざっと思いっきり椅子に座り、頬杖をつく。そしてティッシュの箱に立てかけたiPadから爆音の韓国ドラマを垂れ流す。
ーなに、“私が一番大変”みたいな顔してんだよ。
もしかしたら睨みつけていたかもしれないが、テレビで好きなアニメを見て少しでも気をそらす。
その後も、母とはほぼ会話を交わさず、寝る準備をしてベッドに飛び込む。
ー早く家から離れたい。
ーそのためには…。
枕元に充電中のAirPodsに目をやる。
ー歌で変われんのかな。
そう思いながら目をつむった。
土曜日になると約束の場所に私服姿の照屋がいた。
「おっすー!待った?」
「まぁ、一時間ぐらい。」
「そんなわけないでしょ!しかも女の子には『今来たとこ』でしょ?!」
「…女の子?」
「ぶん殴ろうか…?」
「冗談。」
こんな悪ふざけはいつもの恒例行事に近かった。
「今日はカラオケぶっ通しコース!どう?と・お・る・君?」
「言い方、うざい。」
「そんなツンツンしなさんな。年頃男子が出まくりだよ。」
「余計なお世話だって。」
そして、数分歩いたところにとても大きなカラオケのビルが建っていた。
「こんなに大きいとこ、初めてだ…。」
「まぁ、ここら辺だったら一番デカいのここぐらいだからね。すみませーん、予約してた照屋ですけどーー。」
手際よく受付している照屋に少し驚かされるが、理由はすぐ思い浮かんだ。
「流石、中三でも馬鹿みたいに遊んでた人は良く知っているようで…。」
「なぁに?嫌味かな?ま、先生に頼んだら推薦出してくれたからね~。透は、媚びるの下手だもんね。」
「そんなつもりないけど。」
「いやいや…。まぁいいや。ここだって、予約してた部屋。」
話しているとすぐについた。
「今回は、手厳しい採点の機種にしてるからねぇ、気張ってよ~?」
「俺、そんなうまくないって。」
そう言って、マイクを握った。




