第二話(1)
そう過去に思い耽っているとスマホが震えた。ポケットから出すと照屋からのLINEだった。
「いつデビュー?」
―ハァ、相変わらずだな。
そう呆れながらも思わず口角が上がってしまう。"わくわく"という言葉が合うのだろうか、心が躍っていたのだ。ゆっくり起き上がってテンキーを打つ。
「バカ、そんな簡単にデビューなんてできないよ。」
すると、すぐに既読が付き、返信が帰ってきた。
「と・お・る・君!君はショートケーキぐらい甘いよ。(*´Д`) こーゆーのは早く目標決めんの!」
わざと点を打ってくる感じが少し癪に障る。
「なんか、一杯食わされた気分。目標…できれば高校生中か、大学生かな。」
「いいねぇ。じゃあ私はそんな君のマネージャーやるよ!透をスターにさせてあげる。」
「余計なお世話。」
俺は笑いが漏れていた。
―こんなバカ話。できるのは照屋ぐらいなのかな。
そんな風に思う。どんどん話は流れていき、照屋の前で歌ってみることになった。
「じゃあ、土曜日にカラオケね!逃げんなよ~。」
「気が乗らないけど。」
「関係ナッシング!じゃあね~。」
俺は再びベッドに倒れるが、先ほどより気分が晴れた、そんな気がした。
耳にAirPodsをつけ、スマホでSpotifyを開く。
《おすすめ―Hoshi「レッテル」》
最近、Youtubeやインスタで出てきた「Hoshi」は一個上の高校二年生らしい。売れ始めたのは去年だ。
―俺も、今年中がいいな。
少し焦りと憧れで前のめりな思いが先走る。俺はおすすめを無視し、「お気に入りの曲」に保存した曲を流す。
《StreetShout「break the Gravity」》
StreetShout―通称「SS」は俺の人生だ。
―こんなに俺の思いと重なるものなんだ。歌って…。
そんな衝動を受けた小学生の時の俺。毎日ヘッドホンやAirPodsから「SS」は俺の思いを歌ってくれる。
丁度、サビに入るところで声が聞こえてきた。
「ごはーん!ごはんできたよ!」
母の大きな声がリビングから聞こえてくる。そのせいで現実に引き戻されてしまうのだ。
―あぁ、ずっとここに居たい。もう少し、もう少しでいいから…。
そんな風に思いながら俺は部屋を出た。




