第一話(2)
チャイムが鳴り響く前にみんな席についていた。
―みんな優等生な感じなのか?
隣の奴を除いてそう思った。
「セーフ!」
照屋が息を荒くして教室に戻ってきた。
「アウトだよ、照屋さん。」
照屋より一足早く来ていた担任にそう言った。ノリのいい四十代のおじさんって感じだ。
「これで、みんなそろったね。俺の名前は中瀬智久という。」
中瀬という教師は黒板に白い字で書きながら自己紹介した。
「好きなことは酒飲むことだ。一年間よろしく。他のクラスも廊下に並びだしたっぽいから、みんなも並んでくれ。今から体育館に行く。」
少し廊下の様子を窺いながらそう言って並ばせられた。
体育館では大量のパイプ椅子が並んでおり、俺たちも座った。そして入学式が始まると校長と生徒会長が話し、よく知らない校歌を歌って終わった。
そしてあっと言う間に下校する時間になった。
―短ったような、長かったような。
そんな感じで、ヘッドホンをつけて帰路につく。電車に揺られ、改札に出ると、駅近のコンビニに寄った。
―何買おうか…。おにぎり…のり巻き…カニカマ…。
悩んでいると耳が軽くなった。俺はすぐさま振り返ると、そこには照屋がいた。
「やっぱりココか!」
「やっぱりって何だよ。」
「いやぁ、知ってた…的な?」
「外から見えただけだろ。」
「バレた?」
俺は辛子明太子のおにぎりを手に取り、レジに進むと照屋はついてきた。会計を済ませると隣のレジで照屋が揚げ物を頼んでいる。
そしてイートインで二人で少し食べることになった。
「最近、透のお母さん、お父さんさ。どうなの?」
「いつも通り。仲悪い。冷戦みたい。」
「冷戦はよく分かんないけど、やっぱり変わらないんだね。」
「冷戦は高校受験でやったじゃん…。」
俺はその言葉を口に出すと同時によく父が母の愚痴の旅に言う言葉を思い出した。
―人はそう変わらねぇよな。
少し黙々とした時間が通り過ぎると、ギターの音と女の人の歌声が聞こえてきた。
「路上ライブ、いつもやってるよね。なんでここなんだろう。」
「ここの駅そこそこデカいからな。新幹線以外は通ってるし。」
「ああ、そういうね。」
照屋は確かに、という顔で頷く。
「行ってみる?路上ライブ。」
照屋は俺がライブの方を見ているのを気にしてなのか誘ってきた。
「まぁ、せっかくだし。」
そう言って俺は照屋の誘いに乗った。路上ライブをやっている所に行くと、いつもより少し人が多かった。でも、その理由は明確だった。
―上手いな。
その一言しか出てこない綺麗な歌声だ。最近、ネットから出てきた超人気歌手「Hoshi」とかと変わらない上手さだった。でも、それ以上に”何か”があるように思えた。
「やってみたい。」
その言葉を認識したのは数秒後だった。照屋の視線は俺にがっつり向いており、最初は何事かと思った。
「透、やってみたいの?」
そう言われてやっと自分が何を言ったのか認識できた。
「…え?……まぁ。」
照れくさくなり、ドモるように答えると、照屋の目がキラキラ光りだした。
「いいね!お姉さん、楽しそうに歌ってるもんね!」と俺にグーを出す。
「青春、やってやろうぜ!」
ニカっと笑う照屋につられてグーを出し、グータッチをする。
「頑張ってみるか…。」と気合が入った。




