第38話「夢のあとへ」
英一の顔は引き締まっていたが、
傾きかけた午後の陽が柔らかく差し込み、
周囲の空気がその緊張を優しく包んでいた。
「ちょっと厳しい話だったかな」
航と響は、その言葉をかみしめながら静かにうなずいた。
「いえ、ありがとうございました。とても貴重な話です」
「私も聞けて良かった。私にとっても、関係の深い話だから」
英一は少し考え込み、ふっと息をついた。
「ちょっとそこで待っていろ。上の金庫から、ちょっと持ってくる」
そう言って和室を後にした。
航と響は、あらためて周囲を見渡す。
戸棚には書物が整然と並び、
いくつもの立派なトロフィーも置かれていた。
少し大きめの机には「設定資料」と書かれた原稿用紙が整然と並ぶ。
航の視線が、ふとその文字で止まる。
7人の好々爺
高齢者だけの“地域ガンマンチーム”物語。
七人のじいちゃん、今日も町を守る。
平和すぎて出番がない。
坂ノ上 馬助
航は見なかったことにして英一を待った。
「おお、待たせたな。これがその時の手紙だ」
英一は二通の封筒に入った秀樹の手紙と、
小さく折りたたまれた響乃の手紙、そのコピーを持ってきた。
航と響は驚き、そっと手紙を見返す。
そして同時に、静かに尋ねた。
「その手紙は、話に出てきたものですか」
「それは……おばあちゃんの手紙なんですか」
「響乃が誠に嫁ぐとき、どうしてもと言って、俺に預けたものだ。
誠も、たぶん知っていたと思う」
英一はそっと封筒を航と響の前に置いた。
二人は手を伸ばし、秀樹の2通の手紙を慎重に封筒から取り出す
中から現れた紙は、時間の長さと重さを感じさせる、
インクは所々擦れていたが保存状態は良い
ページの端を指で押さえ、そっと広げる。
航と響は手紙を読み終え、黙とうの後、
静かに手紙に一礼をした
紙をそっと元の封筒に戻すと、二人の胸には、
言葉では言い尽くせない寂しさが残っていた。
「そしてこれが響乃が秀樹に宛てた手紙だ
もろくなっていて、開くことが今ではできない。
コピーの方を読んでくれ」
航たちは薄い青色の文字を見つめ
静かに目を通した
秀樹へ
元気でやってるかな、
いつも無理ばかりするからちょっと心配
こっちは美代ちゃんと春江でなんとか頑張ってます
相変わらず男手は足りないけど、
こないだ子牛が2頭も生まれたの
それから鶏もいっぱい増やしたから
帰ってきたらたくさん食べようね、
もし戦争が終わったら
また、牧場祭やろうよ
その時は私と秀樹でけんちん汁作ってさ
朱音と春江はおにぎり作って、
英一と誠は・・・すいとんの鍋番
だから必ず帰って来いよ秀樹
響乃




