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この小さな花があの海に届きますように  作者: 富田 来蔵 / Kizō Tomita


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第29話「小さな隙間の時間」

誠の枕元で、小さな古い時計が、変わらぬ調子で時を刻んでいた。

外では太陽がゆっくりと傾き、窓辺の光は次第に赤みを帯びていく。


響と航は、いつの間にか背筋を伸ばし、

言葉少なに続く誠の話に、静かに耳を傾けていた。


それは教えでも、昔語りでもなく、

ただ、時間の中に置かれた記憶を、

一つずつ確かめるような声だった。


「こんな時間まで、年寄りの話を聞かせてしまってな。

 あんまり面白い話でもなかったろうに……

 船の最後なんぞ」


「いえ。とても貴重なお話でした。

 私たちには、きっと想像もできないことだと思います」


「私も聞けて良かった、この話は知らなかったから…

でもねおじいちゃん…、いえ、ありがとう」


響は少し寂しそうに、目を伏せた


「来週、学園祭準備があるから、持っていくね」


朱く、凛々しき羽を広げるその像は希望の象徴のようにたたずむ


「そうだな、どこに出しても恥ずかしくない仕上がりだ、

胸を張って飾ってきなさい」


そう言うと誠は静かに寝床に戻った。

航は立ち上がり軽く一礼をして


「ありがとうございました、

また、いろいろと教えてください」


「ああわかった、また来なさい…」


航はそう言ってその場を後にした

静けさの中で時計の音が少し大きく聞こえる


「響は、そうか響乃から聞いているのか」


「うん」


「それは、心の中にしまっておけ」


「わかった」


夜の音が少しずつ近づく頃、誠は一人思いにふける

軍人として生きた日々、それは良くも悪くも誠の青春であった



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