第25話「捥ぎ取られた羽」
少し涼しい雨の降りしきる午後。
航たちは、木で鳳凰の羽を広げる一角獣の像の、
最後の仕上げに取りかかっていた。
「響、装飾の仕上がりは良さそうか」
「うん。釣りながら配置すれば、流れるように見えるよ」
「こちらは、羽の付け根の木目を調整すれば終わりだな」
小さな作業をいくつも繰り返し、
やがて航と響は、一歩だけ離れて像を見た。
「……ふー。完成だな」
「ありがとう、航。とても上品に仕上がってる」
航は、ふと日本間の方に視線を向けた。
昼下がりの静けさの中で、誠おじいさんが休んでいる。
「最近、おじいさんの調子はどうだ?
こっちになかなか来ないね」
「うん、ちょっとだけね。でも……これ、見せに行こうか」
「そうだな。いろいろ教えてもらったし、お礼も言わなきゃ」
二人は慎重に一角獣の像を抱え、
階段を下りて、誠のいる日本間へ運んだ。
少しだけやつれた誠おじいさんが、
黙ってその像を見つめる。
「……だいぶ手を入れたようだな。
うん、ちゃんと出来ている」
そう言って、ゆっくりとうなずく。
「これなら、もう完成でいいだろう」
満足そうな顔だった。
けれど、なぜだろう――
その表情の奥に、ほんの少しだけ、
寂しさが混じっているような気がして、
航はそれが気にかかった。
「航君、上に置いてある羽黒をここに持ってきてくれないか
話しておきたいことがある」
「わかりました」
航は一言だけ言って静かに2階の部屋のケースに入った
木製の羽黒を誠の枕元に置いた。
誠は静かに身を起こし、
布団の上に、しっかりと膝をそろえた。
弱々しくも、それは誠が軍人に戻ったようなたたずまいだった。
「これは今お前たちに、伝えなければいけない話だ。
たぶんこれは面白い話ではないが、
老人の独り言と聞いてくれればよい、ただそれだけだ」
ケースに入った羽黒は、
徐々にその木製の質感を解き、
次第に守り抜く鋼鉄の船へと変わっていった。
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分厚い雲がどこまでも続く、
重い空に時々光がさすが、晴れることはしばらくないだろう。
羽黒は数隻の補給船と駆逐艦を連れ、
南洋の海へ補給任務を行っていた。
誠は警戒任務を終え、疲れた体で仮眠を取りに、居住区に向かう、
秀樹は帰ってきた誠に一言声をかける。
「誠、お疲れさまだ、こっちも人員が足りなくて、
交代時間が、厳しくなってきている、まず早く休め」
そう言って、秀樹は対空任務に行く準備をし、その場を後にした
誠はひとしきり休みを取るが、眠れた気がしない、
そして、鈍い振動とともにすぐに、第一砲塔に向かう。
第二砲塔は前の戦闘で破壊され、
撤去されている、その横を通り
誠は、第一砲塔の戦闘配置につく
艦内の伝声管からは、緊急戦闘命令の合図とともに
「2時の方向に駆逐艦多数見ゆ、
総員戦闘配置、異常のある個所のみ点検報告」
「1番対空砲損傷あり」
「機関シャフト損傷あり」
「2番砲塔使用不能」
「電探二号、使用不能」
「雷撃管輸送任務により使用不能」
誠は線の細い部下に装填作業の指示を出し、点検を行う、
油圧系統の損傷はなさそうだ。
だが、旋回モーターの反応が悪い
「満身創痍に加えて目つぶしか、不意打ちくらうわけだ」
伝声管より追加の報告が届く
「11時の上空に爆撃機2、いや3機全対空砲迎撃態勢を取れ」
鈍い振動とともに伝声管から報告が入る
「後部第二対空砲より撃墜確実1機」
「左舷近接弾多数、居住区及び救護施設損傷」
「駆逐艦神嵐が狙われている。
敵艦は駆逐艦5隻、わが艦は必ず神嵐を守る、これより敵艦隊に突入する」
「第一船速、進路020 面舵 ヨーソロ―」
羽黒の艦首を敵に向けた途端に相手も全艦こちらに艦首を向け始める
敵艦を引き付けた神嵐も損傷し、煙幕を張ながら離脱を試みている、
誠が戦闘態勢を取り、一番前を行く敵艦に狙いをつける
「第一砲塔有効射程、砲撃を開始する、撃て―」
正面同士なので近接弾から有効打がなかなか与えられない
ようやく一発だけ直撃弾が当たるが相手の損傷は小さい
「駆逐艦にしては、しぶといな」
先頭の敵艦は方向を変え退避する、
その後ろから4隻が全速力で近ずいてくる
こちらにも相手の砲弾が届き始める
「敵駆逐艦4隻、その距離6000雷撃に警戒せよ」
「敵魚雷接近、その数多数・・・12だ 1時の方向」
「緊急回避取り舵いっぱい」
「総員衝撃にそなえろ、命中まで3秒2、1、今」
鋭い衝撃が艦を揺らす、その数、2回か3回か、つかまる手を振りほどく
「損傷確認をしろ、損傷のみ点検報告」
「機関シャフト損傷大、振れが大きく速度が出せない」
「喫水線上昇、艦傾斜角軽微――まだ持ちます」
「第2スクリュー喪失、推進バランス不良」
「ボイラー煙突部亀裂大、排気方向に注意」
「補助方向舵、喪失、急回頭不可」
「消火班、第二ボイラーへ回せ」
「敵駆逐艦は1時に2隻 10時と11時に1隻づつ接近」
誠は素早い駆逐艦を砲撃し続けるが、直接弾を与えられない
他の砲塔の砲弾が当たったのか、1隻が煙を上げ速度を落とし始める
残りの3隻が次第に羽黒を追い詰め始める、
砲撃が当たるその都度、船は大きく傾く
「敵砲弾直撃多数、だがかろうじて持っている全員あきらめるな」
その時一瞬艦全体が縦に大きく跳ねるような衝撃が襲う、照準を支える腕が
折られる様な感覚に恐怖を感じる、伝声管の声が震える
「後部格納庫の弾薬物資に誘爆…、後部第2対空砲、およびカタパルト損失!」
「秀樹のところだ、あいつも・・・」
その後伝声管から聞こえる声も途切れる
全く状況がつかめない、そして第一砲塔の弾薬の装填が途切れる
砲が赤熱して、その役目を静かに終える。
羽黒は巡洋艦としての機能を完全に失った
「1番対空砲損傷あり」
「機関シャフト損傷あり」
「2番砲塔使用不能」
「電探二号、使用不能」
「雷撃管輸送任務により使用不能」
軽くはないけどまだいける
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「機関シャフト損傷大、振れが大きく速度が出せない」
「喫水線上昇、艦傾斜角軽微――まだ持ちます」
「第2スクリュー喪失、推進バランス不良」
「ボイラー煙突部亀裂大、排気方向に注意」
「補助方向舵、喪失、急回頭不可」
ぼろぼろ、かなりヤバい状態
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「後部格納庫の弾薬物資に誘爆…、後部第2対空砲、およびカタパルト損失!」
船の後ろは致命的状態、脱出準備を
第一船速→遅い 第二船速→中 第三船速→早い
全速前進→早いけどボイラーに負担あり
取り舵→左 面舵→右 いっぱい→そのままの意味
ヨーソロー→そういうわけだからヨロシクね
進路090 北から右回りに360で一周090は真東
3時の方向 12時を北に時計の通り一周で方向をあらわす
3時は右方向 90度




