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不老不死②

 目が覚めた時、高毅は道で大の字になって寝ていた。

 人も通れば馬車も通る。こんなところで寝ていて、よく無事だったものだと思った。

 ゆっくりと起き上がると、体がふわふわした。

 前を見ていなかったのか道を歩いて来た男がぶつかりそうになった。高毅は慌てて男を避けた。男は何事もなかったかのように歩いて行く。失礼なやつだ。


――ここはどこだ?


 記憶を辿る。始皇帝の命を受け、不老不死の妙薬を、不老不死の術を会得した仙人を探し求めて泰山へやって来た。そして、泰山麓にあった延吉という村で千年方士の噂を聞き及んだ。そして、千年方士を庵に尋ねた。

 そこまでは、はっきりと覚えていた。

 だが、その後のことになると、うろ覚えだ。千年方士と話をしていて、気を失った――としか覚えていない。

 始皇帝は道幅を統一し、街道を整備した。そして、駅舎を置き、中央からの伝令が早く正確に地方まで行き届くようにした。

 どこかの駅舎の路上にいるようだ。

 路上で果物の露店を広げている店主に、どこの駅舎なのか聞こうとした。

「これ、そこの店主」と呼びかけたが返事がない。店主は椅子に腰かけたまま、顔も上げなかった。

(無礼なやつめ。聞こえないふりをして)と腹が立ったが、穏やかにもう一度、「これ、そこの店主。ここはどこの駅舎だ?」と尋ねてみた。

 また無視された。

(おのれ!)と思ったその時、歓声を上げながら路上を駆けて来た子供たちに、一瞬、気がつくのが遅れた。

(危ない!ぶつかる)と思った。だが、次の瞬間、子供たちが自分の体をすり抜けていた。

「・・・!」

 子供が体を通り抜けて行った⁉ どういうことだ。高毅は自分の両手を見つめた。見える。透けてなんていない。試しに屋台の上に置いてある果物を手に取ってみた。つかめない。手がするりと果物をすり抜けた。

 どういうことだ?

 最後に千年方士が言った言葉を思い出した。


――不老不死がどんなものか、お前自身、味わってみるが良い。


 確かに、千年方士はそう言った。すると、今の体は、この実体のない陽炎のような体は不老不死になる為に必要な体なのだろうか。何も手に取ることができない代わりに、腹が空かない。疲れないし、恐らく病気もしないし、年も取らない。不老不死だ。

 だが、誰とも話すことができず、誰からも相手にされない。ただ、この世を漂うだけだ。

 高毅はぞっとした。

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