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やり直しの終わりに  作者: カンヌワルト
第2章1995年
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やり直しの始まり

光が、まぶしかった。

ゆっくりと、まぶたを開く。

白い天井。

見慣れたようで、どこか違う。

耳鳴りのような音が、まだ残っている。

体は動く。

痛みはない。

——落ちたはずだった。

ゆっくりと身を起こす。

部屋は、狭いワンルーム。

古いカーテン。

使い込まれたテーブル。

見覚えのある配置。


(……ここ)

喉が、乾いていた。

立ち上がると、少しだけ足元がふらつく。

壁に手をつきながら、部屋を見渡す。

違和感と、懐かしさが同時に押し寄せる。

テーブルの上に、携帯電話が置いてあった。

折りたたみ式の、古い型。

無意識に手を伸ばす。

画面を開く。

日付。

「……は?」

表示された数字を、もう一度見る。

何度見ても変わらない。

——1995年。

呼吸が止まる。

「……嘘だろ」

声が、かすれる。

指先が震える。

携帯を落としそうになるのを、なんとか握り直す。

頭の中で、何かが弾ける。

崖。

風。

落下。

そして——

少女の顔。

「……っ」


強く目を閉じる。

思い出すな。

思い出してはいけない。

それでも、消えない。

ゆっくりと、呼吸を整える。

胸が上下する。

心臓が、やけにうるさい。

確かに2005年だったはず。

(……戻った?)

理解が追いつかない。

でも、目の前の現実は動かない。

 

窓に近づく。

カーテンを開ける。

外の景色。

見慣れた街並み。

でも、どこか古い。

人の服装。

車の形。

看板の色。

すべてが、少し“昔”だった。

膝から、力が抜ける。

そのまま床に座り込む。


「……なんで」

答えはない。

暫くそのままだった。

やがて、ゆっくりと顔を上げる。

頭の奥で、ひとつの言葉が浮かぶ。


10年前。

あのとき、口にした願い。

「……やり直し」

小さく、呟く。

信じていいのか、わからない。

夢かもしれない。

現実じゃないかもしれない。

それでも。

もう一度だけ、呼吸をする。

ゆっくりと、立ち上がる。

「……やるしかないだろ」

誰に言うでもなく。

拳を、わずかに握る。

「今度は——」

一度、言葉を切る。

そして。

「——間違えない」

窓の外に、朝の光が広がっていた。



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