料理長ダンケ(28)
「ぐあぁっ!!??」
さて帰ろとしたそのとき。
背中に激痛が走った。いや、これ電気かな?
めっちゃいたい!
「あっ…うぐっ…な、なんなの…?」
回りをみてもなにもいない。
誰もいない。気配もない。
えっ…怖い…
「落雷?こわっ、帰ろう…うっ、痛い…。」
多分、肉が裂けてる。
血も出てるし、めちゃくちゃ痛い。
「回復…っ魔法、得意じゃないんだけどなぁ…。」
実はこのようなことは初めてではない。
これまでも何度か出撃しているけど、絶対に背後から攻撃されるのだ。
今みたいに電撃だったり、衝撃だったり様々。
私の知らない魔獣がいるのかもしれない。
きっと他の人は対処法とかもバッチリなんだろうなぁ。
私だけだよ怪我してるの。
それなら対処法を聞きたいところだけどね…この砦で親切に教えてくれる人なんか1人しかいない。
しかもその1人はスーパーエリートなので、下っぱの私がおいそれと会いに行くことは出来ないんじゃ。
「はぁーっ、痛い…血は止まったけど…。」
ちょっと寒くなってきた。
あーやばい、血を流しすぎたかな?
「ポーションポーション…。うへぇまずい!!!!本当に不味い!おぇっ、臭い、まずっ。何回飲んでも不味い!味の改良をしろ!早急に!!!!」
出撃の際、義務付けられていることがある。
その1つに軍支給のポーション所持がある。
そう、ポーション。緑色の回復薬。
初めて見たときは感動したね!本物や!てな。
しかしこのポーション、くそ不味い。
そうだよな!原材料は薬草と魔力と水だもんな!
草の味がちゃんとするよ!!!ありがとう!!!!
「よし、元気になったし帰ろ。エドガー様に怒られる。」
そして再び砦に向けて歩みを進める。
「遅いぞ!!!!ラングレー!!!!」
「申し訳ありません。」
「迷惑をかけるなと言っただろう!!!貴様のことは金輪際受け入れんからな!」
あのあと帰る途中に見つけてしまった。
この時期脂ののった雄のホーンディアーを…。
ホーンディアーは今からが繁殖期で、雄のホーンディアーは体力をつけるためにモリモリ餌を食べる。
その結果美味しくなるわけで。
このノーデン地方は極寒の地でもあるが、毎日が冬じゃない。
短いながらも夏があり、ガチンコバトルフィールドにも若芽が芽吹く緑の季節がやってくる。
まぁ今なんだけどね!!!
険しい環境を駆け抜ける引き締まったボディー。そして芽吹いたばかりの若芽モリモリホーンディアー君、食べないわけにはいかない。
部隊にはもう入れないけど、まぁいっか。
こんな落ちこぼれ、誰も気にしないし。
そうだ、ダンケさんのとこに所属しようかな。
「ダンケさーん!お肉とってきたよぉ!」
「やっときたか。待ちくたびれたぞポンコツ!」
「お待たせ!はい、ホロー鳥。」
この砦にはだいたい180から200人程勤めている。
その大人数の食事を一手に担うのがダンケさん率いる
『食肉加工部隊』である。
魔獣肉の調理から、繊細なデザートまでなんでも御座れ。
彼らに作れない料理はないのだから!!!
「おぉ、やはりポンコツは筋が良い。血抜き処理が完ぺきに出来ているし、内臓も食えるな。」
「ありがとうございます。でね!これ!みて!」
「ん?おぉ!ホーンディアーか!しかも雄ときたか!」
ぽいぽい空間ボックスから取り出す。
空間ボックスいいよね、中の時間は進まないから痛まない。
「おー!コハクちゃん!今日は君が近距離戦線か!」
「ラングレーちゃんの処理は適切ねぇ。」
「羽までむしってある…使いやすっ。」
ここでは私の事を誉めてくれる人がいる。
嬉しいなあ、ここにいたいな。
でも魔法使いなのに戦わないのはだめだろ。
痛いの嫌だな。
魔法使いなのに?
「よし!ポンコツに任務を与える!この任務が成功したら俺特製のホーンディアー料理とホロー鳥料理を好きなだけふるまってやる!」
「やる!!!」
やる気充分!!!よしこい!
「では任務を与える!」
「はい!」
「メイン作っといて、ホローとホーンディアーで。ホロー鳥はお前が獲ってきたやつ全部な?あとホーンディアーは上層部のやつに食わせるからまぁまぁなやつで。」
「ファッ!?」
ふぁっ!?




