遠距離狙撃
「あー…今日は遠距離狙撃かー…行きたくない。」
落ちこぼれの朝は早い。
新人かつ落ちこぼれなので出撃のほかにもたくさん仕事があるのだ。
ノーデン砦は近距離、中距離、遠距離と部隊が別れている。
そこから斥候、狙撃、肉弾戦、援護、救護と更に別れるのだ。
私を含めた新人は各部隊を体験して、一番自分が能力を発揮出来るところに配属となる、のだが。
私は何をやっても駄目なので、なかなか配属先が決まらない。
中途半端な新人のまま、半年がたつ。
だいたい2~3ヶ月程で決まるんだけどね。
朝ごはんを爆速で食べて、弾薬保管庫へ。
こっちの世界の銃は自分の魔力が火薬のかわりになる。
なんなら、自分の魔力の特性を打ち出すことも可能だ。
ただし、打ち出すには触媒が必要になる。
触媒となるのがこの魔導石の弾丸だ。
魔導石を特殊加工して作ったこの弾丸を魔導銃に装填し、自分の魔力を流して打ち出すのがこちらの銃の主流だ。
こちらの銃は本当にカッコいい。
こちらの世界には魔法がある。
"銃を撃つとき"必要なパーツが少なく、あとは魔法で補助出来るため、こちらの銃と言ったら持ち手くらいなものだ。
魔法構築がやり易い銀が主流で、透かし彫りやお好みの魔石をカスタムするのが流行りだ。
あちらの世界のマスケット銃の鉄の部分以外、まるごと半透明の魔法構築なったみたいな感じ。
「弾丸1058番500発、弾薬1059番一箱。遠距離狙撃第2部隊"ブリジット"隊、戦線出撃のため以上の弾丸、弾薬を持ち出します。」
「承認しました、ではよいトリガーハッピーライフを。」
弾丸も弾薬も安いものじゃない。
とくに魔導石弾丸はめっちゃ高い。
加工に手間隙かかるから、無駄遣いは出来ない。
そのため弾薬保管庫には確りとした管理人がいるし、きちんと申請しなければ持ち出すことは不可なのだ。
弾丸数の虚偽申請も、部隊を偽っての申請もこの管理人にはお見通しなのだ。
虚偽申請をしたら軍務規定に従って適切に処理されるらしい。
「いつもお疲れさまです。ありがとございます。」
この管理人はいつもにこにこしてここにいるんだけど…ちゃんと休んでる?
「では今回の目標を伝える。遠距離狙撃にて魔獣側の戦線の崩壊及び近距離部隊の支援だ。では確実に任務にあたれ。おい、落ちこぼれ。間違っても味方は撃つなよ?」
「…はい。」
クスクスと笑いがあちこちで起こる。
味方のことは撃ったことはない。
でも私は落ちこぼれだから遠距離狙撃も下手くそだ。
「あーやだやだ。落ちこぼれと同じ部隊とかないわー。」
「暴発させるなよ?」
「まじ迷惑、さっさと皇都に帰れば?」
これもいつもだ。
私だって帰りたいよ、日本に帰りたいよ。
でも帰れない。
皇都にだって帰れはしない、だって誰も居ないから。
私を待つ人なんてこの世界にはどこにも居ないから。
だからどこにいたって同じだ。




