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閣下、パングラタンになります


閣下を大湯に送り出して一息。

あ、大湯ってのは共同浴室の広い方。

いやー閣下がここに来るとは驚いた。

閣下はイケメンで金持ち独身、そして皇族だ。

このカスパー皇国には4つの砦があって、それぞれに皇族がトップとして就任しているのだ。

このノーデンの砦のトップは閣下。

私は下っぱの下、ビックリしたよねー。


「さて、何かあったかねぇ…」


軽食を用意するとは言ったものの、食材があったかと冷蔵庫を覗く。

共同キッチンと言えども、使っているのは私だけ。

食堂は利用しても、自分で何かを作ることはしない人たちばかりなので好きに使っている。


「あー…シチュー。」


これはこの間、食堂料理長のダンケさんと一緒に作ったシチュー。

牛肉じゃなくて、竜の肉で作ったから竜肉シチューだね。

またこれが、美味しくて美味しくて…!

夜食に食べようと、とっておいたやつですわ。


「ぐっ…竜肉シチュー…仕方ない。閣下に召し上がってもらおう。うん、生のジャガイモよりましだよな…?」


あとは…お!カンパーニュ!

かびは…生えてないな。


「シチューを温めている隙に、カンパーニュの中身をくりぬいてっと。」


カンパーニュ、シチューときましたら?

パングラタンでしょうよ!


「中身とシチュー混ぜーの、戻しーの、チーズ…ぐむむ、閣下のため閣下ため…チーズ、かけーの、焼きまーす。」


チーズは料理長が分けてくれたチーズだ。

このチーズ、滅多にお目にかかることのできないチーズだとかで…めっちゃ美味しかった。

惜しげもなく、全てをシチューにかけて焼く。


「何か飲み物…水しかないや。」


焼き上がるまでに時間があるので洗い物を済ます。

はぁー、蛇口からお湯がすぐにでるの最高。




慌ただしくドアが開いて閣下が戻ってきた。


「すまん、待たせた。」


「閣下!御髪が濡れたままですよ!?」


「あー…そのうち乾く。」


「えぇ…?」


自分に無頓着すぎないこの閣下?


「閣下、こちらパングラタンになります。お熱いのでお気をつけください。」


「これは…竜肉か?」


「はい、閣下もしや竜肉は苦手でしたか?」


「いや、大丈夫だ。うん、頂こう。はぁー…あったいたべものだー…」


銀のスプーンでゴロゴロはいった竜肉シチューを召し上がる閣下。

キリリと上がった目尻が少し下がったから、不味くはないみたい。

よかったー!!!!!

でも髪濡れてるの気になるーーーーー!!!


「閣下、僭越ながら御髪を乾かさせて頂いても?」


「むぐむぐ…うん、よろしく。」


「失礼いたします。」


空間ボックスからコーム(未使用)を取り出し、左手から温風魔法と液体操作魔法を発動させ右手で閣下の髪をといていく。

うわーめっちゃサラサラ。

襟足だけ長いのカッコいいよなー。

色もキレイだし、閣下すげー。


「同時発動が出来るのか?」


「あ、はい。2つなら詠唱もなくできますよ。」


もっとも3つ同時発動で詠唱しないと発動出来ない私は、落ちこぼれなんですけどね。

みんな4つとか同時発動出来るらしいから。




「うん、旨かった。ありがとなラングレー。」


「いえ、拙いものでしたがご満足頂けたのなら光栄です。」


「いや本当、美味しかった。心が満たされた。」


「…恐縮です。」


いやー閣下に誉められるなんて嬉しいなぁ。

常日頃怒られてばかりだから、うれしい。


「じゃあ明日も頑張れよ。おやすみラングレー。」


「はい、おやすみなさいませ。」


柔らかい笑みを浮かべて去っていた閣下。

うーん推せる。

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