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閣下、お手製干し肉になります


「…は?」


構えた銃身をおろし、呆然とする。

そりゃそうだ。

今の今、相対していた敵が、逃げた。

なんか、そう、すごい、逃げた、のか?


「えー…?」


「ラングレー!それ使ってくれたのか!」


「あ!はい!閣下ありがとうござまいす。凄く使いやすいですこれ!」


「うん、うん。そっか、うん。」


その美の神が挙って作り上げた顔を破顔させ、旋毛に頬擦りされた。


「ラングレー、離れてもずっと俺と一緒だ。」


「?はい、そうですね?」


「…ハルト。お前は緊張感をもっと学べ?ラングレー。少しは怪しめ?お前、詐欺に引っかかるタイプだな?ほら、ラングレーを離せハルト。もう防衛戦線だ。」


眉間にさらにシワを寄せた中将によって解放されし私。

ちょっとぐらつくけど浮遊術式で何とか自立する。


「琥珀!!!!」


「リリィちゃん!!!」


飛翔術式で飛んできたリリィちゃんを抱き止める。

マァ何て軽いの…まるでフェアリー…。


「無事?無事ね?あーもう本当寿命縮んだわ。」


「まぁ頑丈なので。それよりもリリィちゃん、傷だらけだね?」


他の3人を差し置いて飛んできたリリィちゃんのその、キュートなキュートでキュートすぎる顔には打撲痕。

そして理想的な生足には沢山の切り傷。


「夜の支配者と対面して、それも殴りあったんだから!命があるだけハッピー☆なんてね。流石の私も死ぬかと思ったわ。」


「うんうん。」


「でも中将が拘束魔法で動きを封じてくれたから、なんとか五体満足よ。」


「うんうん。」


「だからそんな不細工な泣き顔晒しながら範囲回復魔法垂れ流すのわよくないょ☆」


「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!!リリィちゃんがぁぁぁぁ!!!けがしてるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


私の大切な友人リリィちゃん。

その大切な人を傷だらけにされて、私が穏やかでいられるわけがない。泣くにきまってる。


正直、今のままじゃ勝てない、確実に。

リリィちゃんの、広範囲攻撃魔法を収縮したあの威力でさえ消し飛ばなかった、いや高速回復していたくらいだ。

一筋縄では行かないだろう。

強くならなきゃ、だから。


「…リリィちゃん。」


「あー回復していくぅ…。んー?」


「強くなりたい、とっても強くなりたい!」


「ん。うちくる?」


「お邪魔しても良い?」


「もちろん。」


もう二度と、大切な人の手を離したくない。

だから私は強くなりたい。










「おー…ラングレーの回復魔法かぁ。」


「なに無断で浴びてんだ、今すぐ去れ。」


「当たり強いな。」


従妹の怪我の具合で号泣するラングレーに視線を向ける。

そして号泣しながら範囲回復魔法を使った。

いやこれは回復魔法を使おうと思ったが、激情によって効果が抑えられないといったところか。

くぅ…!その涙拭いてやりたいがリリィちゃんが睨んでくる!



「まぁラングレーもまだまだだな。」


「総評か。」


「ん、そんなもん。あとエスメラルダ義姉上に報告だ。」


今回夜の支配者に遭遇したのは、全くの予想外だった。

スタンピードと相まって甚大な被害が及ぶのは、火を見るより明らかだ。

そしてこのノーデン砦は3年前の夜の支配者による傷が癒えてはいない。

最悪、ノーデン全滅も視野にいれスタンピードを乗り切る。

なんてのは鼻から無理な話だ、無理無理俺があと2人要る。

だから中央に援軍を要請したい、ところなんだが…。


「あー…今軍の統括指示ははエスメラルダ様か。」


「うん。バトルロイ兄上じゃ無理だからな、エスメラルダ義姉上ならしっかりしている。だが、援軍は期待できないな。」


「エスメラルダ様によるとと各地でスタンピードの動きが観られるとのことだ。どこも忙しいだろう。」


スタンピードが起こるのはなにもノーデンだけではない。

サレスもイースラーでもウェルストンでもスタンピードは有る。

同時多発も珍しくはない、が。


「ふぁいへんいかんであふ」


「なんだお前。ん?そりゃスルッスの根じゃねーか。疲れてんのか?」


「おなかすいふぁ」


このスルッス、根っこを食べるとちょっとピリピリして美味しいのだ。ガシガジ噛むとどんどんピリピリする。


「おい、おいおいハルト。スルッスの根っこは確かに滋養強壮の効果がある、がそれはあくまでも極限下における場合生食も許可される。でもなこんな平時に生食でスルッス食うバカがどこにいる!!!おい、ラングレー!!!!なんかもってねーか!!!なんかこう、食い物!」


「はい!?あ、閣下その根っこ!それは生では食べません!」


「そうなのか?」


「そうですよ!意識朦朧した時とかの気付け薬みたいなものですから。えーっと、なにかあったかな…。」


やけに食べると刺激が強いと思ったら、そうだったのか。

まぁ食べると元気になるし、大丈夫だろ。うん。

腹壊さないよな?俺の腹は頑丈だよな?


「あった。閣下、こちらダンケ料理長お手製捻角牛の干し肉になります。料理長こだわりのスパイスと塩にしっかり漬け込んで、良い塩梅に干せました。」


捻角牛、確か赤身が美味しい牛だったな。


「うん、いただこう。」


「俺にもくれー。」


「リリィちゃんも☆」


おー結構大きいな。

うん、刺激的な匂いがする。


「むぐむぐ。うんうまい。」


噛むたび味が出て来ておいしい。

すごいぞこれ、噛んでも噛んでも味が出る。

お、確かあの3人はムジョルニア傘下の貴族か。

うんうん、気になるよなぁこれ。

料理長直々に仕込んだって聞いたら気になるよなぁ?

ダンケの料理なんて、普段お前たちは食べられないもんなぁ?

でもそれを持っているのはお前たちが散々馬鹿にしてきた、俺のラングレーだぜ?


おや、ラングレーは優しいな。前世は天使だな?

あ食べた。


うんうん、胃袋捕まれたな。

おや、あの顔もしやラングレーの可愛さに気付いたのか?


「はっは!降格。」


「ポップに職権濫用すな。」



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