サービスワゴン整体
美しい紫色の柔らかな巻き髪と、強気なロイヤルパープルのつり目。
黒い軍服に包まれた豊満なお胸と、ロングスカートのスリットから覗くしなやかな脚。
ぱっと見えげつない美人だけども、癇癪持ちなので煙たがられているのです。
「なんであんたがここいるのかしら?」
「あの、料理長に頼まれまして…。」
「ふーん?5階にいくの?わたくしに代わりなさいな?」
「いえ、あの、手錠が」
「うるっさいわね!!!!代わりなさいといっているのよ!!!!」
「わぁあ!?」
いきなり癇癪爆発させ、私のサービスワゴンを奪う令嬢。
余りの剣幕に驚いて左手がサービスワゴンから離れると、私の体に電撃が走った。
「いたい!やだ、やめ、いたたたたた!!!!!」
「な、なによ」
「わ、わごんかえして、ください!いたたたたた、や、あの、ホント勘弁してくださいたい!!!」
「はぁ?ん?これ拘束の陣じゃない。へぇー?どうなの?痛い?ほーんと無様ね?」
「ひっぐ…も、申しわけあり、ません。」
「はぁー、あんたの顔見てイライラしたけど。まぁ良くてよ?惨めで哀れな落ちこぼれの無様な泣き顔、なかなかに乙ですわね?」
そう言ってヴィオレッタ・リューグナーは降りていった。
私に一発全力平手打ちをして。
そうしてまたゆっくりと5階へ上昇して行く。
「いたたたたた…なーんてね♡」
『無いとは思うが伝えとく、もしこのサービスワゴンがお前の意図なく奪われた場合のみだ。微弱な電気がながかれるようになっている。そしたら全力で痛がれ、そんでさっさと転移陣に乗れ。5階に行くには許可証がいる。お前のコックコートに入れとくから早々に5階に逃げろ。いいな?』
事前にダンケさんに聞いていたお陰で、癇癪大爆発サンドバッグコースにならずに済んだ。
しかも電気がすごい気持ちよかった。
あれだよ、整体とかでやる電気のやつ!!
ーーー5階に到着いたしましたーーー
ーーー許可証認証しましたーーー
ーーーお気をつけてお降りくださいませーーー
「あ、どうも~ありがとうございました。」
流石5階。誰もいない。
これでゆっくり運べるね!
「あ!料理は無事!?」
癇癪爆発で揺られたサービスワゴン。
それに載っていた料理も当然のことながら揺れるわけで。
「んー?無事だけど、なんだこの紫色の…魔力?」
それは一番上に載せていたスープ器の上に漂っていた
ゆっくり、ゆっくりと下に落ちていく紫色の霧
「なんだろこれ…え、毒?」
私の瞳が解析し、読み取ったのはどうやら致死毒では無いにしろ人体には有害な毒のようだった。
中央棟のキッチンからここまで、ただ1人を除いて接触は無かった。
ヴィオレッタ・リューグナー。
リューグナー伯爵家はこと毒に関して、この国では右に出るものが居ないと言われているほどに毒に精通している。
毒とは転じて薬にもなるってね。
「皇家にも覚え目出度いリューグナーが…?皇族、しかも婚約者候補に毒?いや、違うな。毒入りのスープを持っていかせて、私のせいにするつもりだな!?あのクソ癇癪娘め、そうはいかん!」
ゆっくりと沈下していく紫色の霧をきっちり結界に閉じ込める、漏れなくきっちり!!!!
二重、三重と結界に閉じ込めてやる。
「皇族に毒とはないわー。…無いよね?」
急に何故か怖くなった私は駆け足で、一直線に走り出す。
目標の部屋は転移陣の反対、左端にあるのだから。
たどり着いたのはこれまた重厚な扉。
金の装飾と黒塗りの細やかな彫刻の扉だ。
えーっと?これどこノックしたらいいの?
ここか?ここなの?この平べったいとこ?
てかこれ触っても大丈夫?怒られない?
『所属と名前を。』
「ぴえっ」
ノックするのに躊躇っていたら、中から声をかけられてしまった。
「現在の所属は食肉加工部隊キッチン第1班、2等兵琥珀・ラングレーであります!お食事をお持ちいたしました!」
『ラングレー!?』
『おまっ!ちょ、こらハルト!』
『うるせぇ、どけ』
1分ほど中で凄い音が鳴っていたけど、それもようやく落ち着いてきたころ。
ゆっくり扉が開いた。
さらさらの銀色の髪を括ることなく、やや隈の出来た血色の悪い、しかし顔が抜群にいい男ことラインハルト・カスパー元帥閣下が出てきた。
「お待たせラングレー。あの、ここ凄い汚いけどごめんね?」
「えっ、中に入ってもよろしいので?」
「もちろん。ご飯持ってきてくれたんでしょ?」
「はい!出来立て熱々です!」
「わー笑顔がまぶしー。」




