5/9
Ⅳ 僕等が普通に話したわけ。
「でも、初めてだよっ。人に練習風景見られたの。」
実依は、俊也の隣りに並んでにこっと笑った。
「家でも、小さい時もずっと見られないようにしてたんだよ。小学校の時の学芸会でおまえの演技は素人以下だって言われてね・・。下手だからもう見たくないってみんなに言われたの。」
実依はうるんだ瞳で俊也を見た。
「ここ、私の練習場なのになあ。ばれちゃったら、仕方ない。場所変えるよ…。」
実依は瞳にたまった涙をぬぐうとおどけて言った。
「なんで変えるの?。俺、毎日お前の演技見てやるから、変えるなよ。」
実依は演劇の天才だとか言われてねたまれてたんだろうな、あえて口に出さずに俊也は思った。
「見てくれるの?。」
実依は目を輝かせながら俊也に言った。
「お前がいいならだけど。おれは、お前の演技好きだし。」
“お前の演技好きだし”って言ったのに、“好きだし”の言葉が頭から離れない。
俺、告ってないよな?。
「ありがと。これからも、よろしくね。」
「こちらこそ、星夏実依さん。」
「なんでフルネーム?。」
「なんとなく。」
実依と俊也は向かい合って笑った。




