Ⅲ 僕等が普通に話したわけ。(前編)
席替えから一週間たったある日のこと。
「私、あなたの命令はきかない。絶対に聞かないから。」
昼休み。また屋上から声が聞こえた。
星夏実依だ。
今日、俊也は勇気を振り絞って行ってみようと思った。
屋上に上る階段で一瞬ためらった。
席替えしてから今日まで、ペンをひろってもらっって「ありがとう。」とか「おはよう。」とかそれぐらいの会話しかして来なかった。
このままでは、いけない。
俊也は、足を進めた。
屋上にたどりついたのはいいが、いるはずの星夏実依がどこにもいなかった。
俊也は、きょろきょろとあたりを見渡し実依を探した。
「そこでなにをしている!!。」
びくっ。
男のような低い声が俊也の上から聞こえた。
空を見上げると、階段の屋根に実依がいた。
「びっくりした?。」
実依は無邪気な子供のような笑顔で言った。
「ああ。なんでそんなところにいるんだよ。」
俊也は、ほっとしながらもビビった自分をみられた怒りの矛先を実依にむけた。
「ごめんね。足音が聞こえたから、水澤君かなって思って。」
実依は泣きそうな顔をした。
表情がコロコロ変わる女だな…。
俊也はこう思った。
「おまえ、おもしろいな。さっきの声、おっさんみたいだったぞ。」
俊也は急にわらいだした。
「ちょ、ひどいよ、水澤君。今のは、王様の声なのに。」
実依は台本を広げ指さす。
「私、いろんな声を出せるんだ。」
「そっか。すごいな、おまえ。」




