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第16話 攻略不可⇔時計塔

かつて大きく栄えた島国はもはや見る影もなくなっていた。

地盤沈下や地震のせいか遺った建物も、建物同士でめり込みあってたり1 階部分がひしゃげたような家もあった。

にも関わらず、崩れずに不安定なまま建っているのはかなり不気味な光景だ。


「…シャルロッテ、君ならこれをどう見る?」

「あたしか?あたしは扉の装飾とかが古めかしい感じがして好きだよ?」


違う違う、そうじゃない。

建物の特徴とかではなくこの朽ちることもなく不自然な状態を保ち続けている建築物たちのことだ。

確かに古めかしいのは事実だが、俺達からしたら700年前の地上の建物なんて古代に等しいだろう。


「あ、歪み具合のこと?確かにすごい状態だけどピサの斜塔も同じような感じだっただろ?」

「それはそうなんだが、斜塔の影響範囲に含まれていた建物は崩れているところはありつつも概ねもとの形を保っていただろう?このロンドン市内の建物は遺っているが歪な形に変形している。なにかが異なっているはずだ」


歩いているうちに建物が少なくなってきた。

ビッグベンを通り過ぎることなく川を上流に遡っているのだが、周りの景色はまたも砂が多くなり崩れ落ちた建築物が目立ってきた。


「シャルロッテ、時計台は見えるか?」

「うん〜?まだ見えないよ?」

「もうそろそろ見えてきてもいいのだが…」


あたりがすっかり砂地になり、本来なら見えるはずの位置にある時計台が見えない。

ビッグベン含む建築群のウェストミンスター宮殿すら見えてこない。

宮殿と時計台があるはずの場所を中心に円状に砂地が広まるものの、やはり対岸の建物しか見えてこなかった。


「なぁブレナ、ほんとにここで合ってんのか?」

「合っているはずだ。場所が移動するわけはないだろうし、建物が歪な形に変形する謎現象はオーパーツの影響に違いない。少し待ってみよう」


▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー


30分たった。

現在時刻は9時56分。

ビッグベンには小鐘が4つと大鐘が1つある。

毎時15分.30分.45分.00分に小鐘がメロディを奏でるはずだが、音は聞こえてこなかった。

もし見えないだけなら音は聞こえてくるだろうから、シャルロッテの思う通りここで合っているのかは本当にわからなくなってしまった。


「なぁロッテ。お前の言う通り、もしかしたらここにはないのかもな。もしここにあるのなら鐘が鳴るはずだ。俺の間違いだったらしい、すまない」

「急にしおらしくなったな、まぁ気にすんな!そんな間違いなんて誰だってあるさ。もしあるとしたらどこにあると思う?」


わからない。

国の象徴のものを地上にいた人たちが壊すのはおそらくないだろう。天変地異でオーパーツは失われるものなのだろうか。

だがアンティキティラ島の機械も長らく失われていたと思われていたがこの探検隊の力で見つかった。

今回ばかりは代替案が思い浮かばない。


「わからないが…そうだな。では、通信で1番近いペアを探してそいつらと合流しよう。時計塔は後回しだ」

「了解。じゃあ今ボリュームあげるから…」


その時、耳が壊れるかのような大きな音がした。


正確には、2人の話す声と時折聞こえてくる鳥の声以外に物音がしなかったため大音量に聞こえただけなのだが事実、急な頭を揺さぶるような衝撃が空中を伝わってきたのである。


"ゴォォォ……ン" "ゴォォォ……ン" "ゴォォォ……ン"


いつの間にか何もなかった空間に巨大な針のような時計塔が大量の霧と同時に現れていた。

大きな時計盤の針は10時を指し、ゆっくりと巨大な鐘を揺らしていた。

それでも襲ってくる衝撃波は地面を揺らすほど強く、シャルロッテも立っているのは難しそうだ。


「シャルロッテ!あれが時計塔だ!!あれがオーパーツだ!!」

「そんな事言われたってどうすりゃいいんだよ!」

 

鐘が10回鳴り余韻が残る中、文字盤の針は10時を回った。

するとかき消すように時計台の姿が揺れ始め、霧がもっと濃く立ち込め始めた。

シャルロッテをしゃがませ、低姿勢を取る。

霧がどんな影響があるかわからないための行動だったが、ただの霧で何らおかしいことはなかった。


濃霧が晴れると時計台は姿を消し、残ったのは鐘の残響だけだった。


▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー▼ー


「…どうする」

「どうするってブレナ、あの時計塔まさかじゃないけど10時じゃないと出てこないとかないよね?!」

「そこまで鬼畜仕様ではないと思うが…同じようなもんか。今鳴っていたのは『大鐘』だ。俺が今まで気にしていたのは『小鐘』。よくチャイムとかで使われるキーンコーンカーンコーンのやつだ。だがそっちの鐘は鳴らなかった。つまり、大鐘が鳴るときだけあの塔は出現する、と思う」

「…つまり1日に24回チャンスがあるけど、1回ミスるごとに1時間待たされるの?!嫌なんだけどぉぉぉ」


また始まった。子供みたいにジタバタするな。

正直俺も一緒に喚きたい気分だけど、これはこれで未知への挑戦みたいな感じでワクワクしてきた。


「いいか、シャルロッテ。チャンスは1時間じゃなくて1分だ。なんの関係かわからないが、鐘が鳴っている間は霧がでる。霧がでている間は鐘がなっているが、鐘が鳴り終わり次第霧も塔も消える。おそらくオーパーツは大鐘だ」

「すげぇ!よくわかったなっ…!でもどうやって手に入れんのさ。塔を登る時間なんてないぞ?」

「そこが問題なんだよなぁ…」


鐘がなっている間は少し違和感があった。

鐘と時計。

何気関係する?

1分間しか現れない塔

1分間しか現れない霧…

1分間?

1分間も鐘が鳴り続けることはあるのだろうか?


「…なぁシャルロッテ。お前、鐘が消えるまで鳴り続けていることに気づいたか?」

「? 確かにそうだったけど…」

「そこだよ。普通の時計ってその"時"を告げる時その数のぶん鐘を鳴らす。決して1分間じゃあない。だがあの時計は1分間ずっと鳴り続けた」

「つまり…?」

「わからん」

「わからんのかーい!!」


ノリツッコミをしてくれた。

だがそれ以上は本当にわからない。

気づいたところで実物がない。

鳴っている間にどのような反応をしていたか今回は気づけなかったし、相手の奇襲だった。

もう1時間まってもう1回観察してみよう。


「こちらブレナ。リーダー、聞こえますか?」

「ズ…こちらヴィクトール。聞こえているぞ。先ほどの音割れは何だ?何もしてないのに通信機が悲鳴を上げたから驚いたぞ」

「それはすまない。1時間待った挙句ビッグベンを発見したんだが、1分間鳴ったあげく消えてしまった」

「…そうか。それは仕方がない。どんな冒険のプロでも初見でうまくいくことは限りなく少ない。次の機会を待とう。あと、君たちが見つけたオーパーツの正式な名前は『エリザベス・タワー』だ」

「それはどこで?そんな情報は聞いたことがない」


すると、リーダーが少し嬉しそうな声で返答した。


「ありがたいことにヨナとクレマンと連絡が取れた。通信機が直ったらしい」



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