第15話 砂漠化した大都市
「セージの奴、本当に大丈夫かな…」
「リーダーがいるんだから大丈夫でしょ。それとも愛しい妹ちゃんにリーダーが手を出さないかまぁだ心配してるわけ?」
「なんか癪に障る言い方だな。お前兄妹とかいるか?」
「ん、いない」
「一旦引っ込んでてくれ、俺は真面目に妹が心配なんだよ」
シャルロッテのおちょくるような物言いには辟易する。
だが今の自分に何かできるかといったら何もできない。
遠く離れた妹のみを案じるだけだ。
ここはヴィクトールに任せるしかないか。
「おいシャルロッテ、ここがどこかわかるか?」
「わかるわけないわよ、あたしの専門は装飾とかものを作ることなんだからさ」
使えね〜と言いかけたがこれから旅をする仲間だしそんなこと言ったら気まずくなっちゃうな。
「ていうかぁ、一人称が変わるだけで雰囲気全然変わるんだね〜。なんかこれはこれでいいかも」
「今こっちは感情が昂ぶってんだよ、静かにしろ!ほんとなぁ。あとついで俺のほうが年上だから1つ言わせてもらうぞ」
「あ、ブレナのほうが年上なんだ。で、なにが言いたいのサ」
「その年でそのキャラはキツイぞ」
それを聞いたシャルロッテは途端に青くなって黙り込んでしまった。ちょっと言い過ぎたかも。
普段ならもっと円滑にスムーズな進行で静かにさせられると思うがこの際なりふり構っていられない。
「あー、こちらブレナ。通信中、クリス、聞こえますか?」
「ズズ…こちらクリス、あぁよく聞こえるとも。君とシャルロッテの醜態も見事に伝わってきたよ」
「そりゃどーも。シャルロッテがうるさかったのとセージのことが気がかりで感情が昂ぶってしまった、すまない」
「…急に調子を戻さないでくれ、風邪を引きそうだ」
「あと今連絡したのには理由がある。俺たちは砂漠らしきとこに転移したらしいのだが、砂の形状や色味からどこらへんか判断してもらえるか?」
「ズ…結構だ。やってやろうじゃないか。ただし、私の力を過信しすぎないこと。ついでに伝えるがフィルムスの方が詳しいことも多いからな」
「了解した」
足元の砂を掬い、観察する。
「まず形状だが、とてもきめ細かく丸い。海緑石やチョークが混じっているがサラサラしている。色味は黄金色や茶褐色系の色だ。砂の中には極小さめだが黒や緑の石粒も混じっている」
「ズズ…随分と詳しく教えてくれるじゃないか。そうだな、少し待ってくれ…海緑石にチョーク…砂は一粒一粒が小さく細かい…そうだな、おそらくそうだろう」
「わかったか?砂から本当に判定できるのか?」
「…疑ってるのか?まぁ、別にいいけど。私が思うに、そこはヨーロッパ州の北側の国の海岸沿いかな?海は見えるかい?」
「残念だが何も見えない。代わりに川が流れている。魚はいないがある程度の幅がある透き通った川だ。あと上流方面に何か見える気がするが、地平線に見える蜃気楼かもしれない」
「ズ…了解。そのまま上流に登っていってくれ。遮蔽物がなかったら4.5キロほどは見通せるはずだ。もし建築物がのこっていたらそれは残骸かオーパーツのどちらかだろう」
「わかった。このまま上流に向かう。何か発見次第報告するよ」
通信をつなげたまま歩き出すと、うじうじしてたシャルロッテが付いてきた。
「なぁ、今通信て繋がってる?」
「ん?まぁ繋がってるぞ。何か話すならボリューム下げておくか」
ボリュームを下げるとシャルロッテがおずおずと喋り始めた。
「…その、さっきはすまなかった。つい浮かれてしまって」
「浮かれる要素なんてなかっただろう。まぁ女性に年のことをいった俺もモラルというかマナーがなってなかったけどな」
「自分でも気をつけているつもりなんだがいつも歯止めがつかなくなってしまって…その…えと…」
「終わったことだし、くよくよしないでください。こっちまで気が滅入るでしょう。うるさすぎない程度でもとに戻ってください」
「…うい。でも、あたしは丁寧にしゃべってもらうよりも砕けた口調の方が好きだな!」
「一瞬で戻りやがった。じゃあ遠慮なく言わせてもらうからな。俺だって静かなロッテよりうるさいロッテの方がいい」
2人で気まずかった雰囲気を打ち消す勢いで喋り始めたタイミングでまたもや邪魔が入った。
「…なぁロッテちゃんにブレナも随分と打ち解けてるねぇ!羨ましいよぉ!俺も混ぜてくれ」
「…ブレナ、君に1つ忠告しておこうかな。次から内緒話をするときはスピーカーのボリュームではなくマイクのボリュームを下げるようにしてくれ。こっちまでむず痒い」
ルカシュとレオナールの声に固まっているとシャルロッテがこちらを見上げてきた。
耳がだんだん真っ赤に染まっていく彼女に「マイクのつまみを間違えたのか?」と詰められる。
「ズ…おーぃブレナぁ?どしたぁ?もしかしてまた音量下げたイチャついてんのか?数歳しか変わらないのに随分と元気だねぇ!いいこった」
「ルカシュ、勘違いしないでください。私は混乱すると注意力散漫になるので…」
「もう遅いですよ、ブレナ」
フィルムスにまでため息をつかれてしまった。
もうどうにでもなれと思い歩みを早める。
シャルロッテは横でギャースカと喚いているが、過ぎたことは過ぎたことだ。
いまさら悔やんでも仕方がない。
しばらく歩くと、町が見えてきた。
砂漠化の影響か、かなり砂っぽいが道路らしき跡や石畳が遺っている。
風化や浸食といった類ではない。
もちろん錆びている街灯などもあるが、所々つい最近まで使われていたかのような雰囲気を醸し出している。
遺された道を行くと広場になっていた。
近くの電柱を見ると、町の名前が書いてある。
「ちゃ…チャり…?」
シャルロッテは錆びて文字の霞んだ読むのに苦戦している。
だがこの景色と広場は有名なものだ。
「フィルムスさん、場所がわかりました」
「ズズ…おぉ、わかったのか。君たちはどこにいる?」
広場にある大きな石の記念柱を見上げながら答える。
「…"Charing Cross" チャリング・クロスです。今いるここはトラファルガー広場。」
「ということは?」
「ヨナの見つけ出したオーパーツに書いてあった"時計台"。
これを指すのは旧世界の大都市、ロンドンのシンボルである
"ビッグベン"だと思われます」




