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異世界ケータリング!~姉の聖女召喚に巻き込まれた私の案外充実した日々~  作者: 芽生 1/15『裏庭のドア』3巻・コミックス1巻発売!


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第4話 聖女召喚と巻き込まれた妹 4

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

ブックマークやいいねも嬉しいです。

2週間くらいは毎日更新です。



 王城の廊下を仁奈はロビンと共に歩く。

 ケータリングという謎の力をまずは試してみては、とルイージに言われ、王城の庭園へと向かっているのだ。

 ロビンは今、十六歳だという。十四歳のときにその才を認められ、魔術師であるルイージの弟子となったらしい。


「昨年、王都に弟と妹を呼んだんです。師匠の元で仕事を学んで、魔術師としてもっと成長していかなきゃいけないんです。まだまだ学ぶことばかりなんですよ」


 仁奈より頭一つ分小さいロビンはにこにこと人懐っこい笑顔を浮かべる。

 まだよくわからないこの現状で、傍にいてくれるのがこの少年でよかったと仁奈は思う。仁奈が思い出すのは聖女と言われた姉玲奈だ。

 聖女と呼ばれ、丁重な態度を取られている現状では玲奈は安全であるだろう。しかし、姉と離れるべきではなかったかもしれない。

 周囲の対応はさておき、お互いに不安な状況なのは同じなのだ。


「あ、あの犬。また王城に入ってる!」


 ロビンの言葉でハッとした仁奈の目に入ったのは、毛の長いもふもふとした犬だ。のんびりした顔の大型犬は、こちらに向かってしっぽを振ってテトテトと歩いてくる。

 

「わふ!」

「おぉ、可愛いねぇ。どこの子?」


 仁奈がそっと手を伸ばすと犬は嬉しそうに自分から、手の平の下に頭をくっつけてくる。人懐っこい姿に仁奈も目を細めた。

 姉と住んでいるアパートはペット禁止である。小さい頃はもし飼えるのなら猫がいいか、犬がいいかと不毛な会話をよくしたものだ。


「最近、王城で見かけるんです。どこから来たのか、飼い主がいるのかもわからなくって……よく兵士が追いかけているんです。大抵、この子に遊ばれて終わっているんですけど」

「わふ!」


 ロビンの言葉にいつの間にか仁奈の腕の中にいる毛の長い犬は、どこか得意げに吠える。その額の毛を手の平で撫でると、つぶらな黒い瞳が仁奈を見つめた。

 ゴールデンレトリーバーに似ている大型犬はぶんぶんと嬉しそうに尾を振る。


「でも、きっと飼い主さんはこの王城に出入りできる人なんだよね」

「わふん!」


 そうだと言うかのように答えた犬にくすりと笑った仁奈だが、ふと視線に気付き、視線を上げる。

 先程から気になってはいたのだが、廊下を通る兵士やメイド達がこちらを見ているのだ。


「す、すみません。多分、服装が違うので目立ってしまうんだと思います。きっと、師匠のところにニーナ様のこちらでのお召し物や自室のご案内が届いているかと思います!」


 自分のミスではないのに謝るロビンに仁奈は首を振る。

 おそらく、聖女召喚の成功を上に報告し、その対応で忙しいのだろう。聖女の妹が巻き込まれたことは召喚成功に比較すれば些事だと片付けられかねない。

 

「……その場合、力がない方がいいのかもしれないなぁ」

「どうしてですか? ニーナ様の能力、僕は凄く楽しみです」


 才能に長けているだけではなく、魔法自体が好きなのだろう。ロビンは嬉しそうに笑い、仁奈の少し前を歩いていく。

 こんな状況なのだ。人目を引くのもまた仕方のないことであろう。

 弾むように歩く小さな背中に励まされるように、仁奈はその後について行くのだった。

 


*****



「凄い! ニーナ様はどの生活魔法もやっぱり威力が強いですね。あ、使ってみてお疲れとかありませんか?」


 広々とした庭園で仁奈はまず生活魔法を試している。

 魔法というものを初めて使うのだが、思ったよりも難しくないと仁奈はほっと胸を撫で下ろす。

 火をつける、水を出す、風を起こす――ボールを少し離れた場所に投げるくらいの容易さで仁奈は生活魔法を使うことができたのだ。


「うん、大丈夫。でも、街の人達はなんで魔道具を使うの? こっちのほうが便利な気がするけど……」


 この世界の人にとって、魔道具は高価な家電のような存在ではないかと仁奈は仮定している。であれば、どこでも使える生活魔法のほうが便利に感じられるのだ。

 マッチやライターがなくとも火が点けられるのならば、それを持ち歩く人はいなくなる。魔道具を使うというのが仁奈には不思議に思えた。


「はい、普通の人は疲れちゃうんです。一日のうちに何回も水を出したり、火を点けたら疲れちゃう――だから、魔道具を使うんです。生活魔法を頻繁に使うのは魔術師くらいなので、ニーナ様の御力は凄いんですよ!」


 ロビンは自分のことかのように嬉しそうに笑い、仁奈も安心したのか笑顔を見せる。これからのことはまだまったく見通しがつかない。

 けれど、この世界で生きていくうえで出来ることが多い方が良いに決まっている。


「わぁ……! それはちょっと助かるかも!」

「ですよね! あとは《ケータリング》という能力だけですね」

「わふっ!」


 なぜかついてきてしまった犬も楽しげに吠える。

 姉の聖女召喚についてきてしまった立場ではあるが、せめて玲奈に迷惑をかけぬように自立しなければと仁奈は強く思うのだ。

 それはちょうど向こうの世界にいた頃、仁奈が望んでいたことと同じである。


「よしっ! こっちの世界で一人で生きていけるように頑張らなきゃ!」

「はい! ……え? あ、あの……ニーナ様?」


 突然の仁奈の言葉にロビンは大きな瞳をさらに開く。

 聖女の妹である仁奈をこの世界で一人放り出すなど、ロビンは考えてもいなかったのだ。驚くのも当然である。


「わふ! わふ!」


 仁奈を応援するかのように大型犬が鳴く。

 

「ロビン君! それじゃあ、試してみるね!」


 生活魔法の能力の高さに自信をつけた仁奈は、いよいよ能力ケータリングを試そうと、右手の手の平に力を込める。

 ぽうっと手の平が温まっていく感覚に仁奈の期待は高まっていく。


「出でよ、キッチンカー‼」


 風が強く吹き、辺りの木々を揺らす。

 仁奈の力強い声に何が起こるのかとロビンもその後ろ姿をキラキラとした目で見つめるのだった。

 

 


 

皆さんの気分転換の一つになっていましたら幸いです。

余談ですが、玲奈が猫派で仁奈は犬派です。

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