第3話 聖女召喚と巻き込まれた妹 3
今日から6月ですね。
地域によっては台風の影響もあるようで…どうぞお気をつけください。
先程とは打って変わって、雑然とした部屋に通された仁奈は椅子に座り、きょろきょろと辺りを見回していた。
見たことない機械、不可思議なものなどが置かれたこの部屋はどうやらルイージという老人、そしてロビンの研究室らしい。
木製のテーブルや椅子、紅茶の瓶などが並ぶこじんまりとした部屋は仁奈には居心地が良く感じられた。
「――あの、ニーナ様。検査結果のほうをご報告してもよろしいでしょうか?」
くりっとした目で話しかけるロビンはどこか嬉しそうで、早く結果を伝えたい様子が見える。一方、ルイージの方は困った様子で人の良さそうな顔を曇らせる。
仁奈はテスト勉強は好きではないが、テストを受けるのは嫌いではないので、どこかわくわくしながら魔力検査を受けた。
聖女の妹君、異世界よりの来訪者――筆頭魔術師の男の言葉が頭をよぎり、期待が高まってしまうのは当然であろう。
「ニーナ様は生活魔法が最高ランクです! 凄いですね。こんなに高い数値を僕も見たことがありません!」
「……えぇ、日々の生活に必要なことはご自身で出来るかと」
にこにこ伝えるロビン、その後ろで申し訳なさそうにするルイージ。二人の違いで仁奈はなんとなく事情を察する。
「――その、生活魔法の説明をしていただいてもいいですか?」
「はい! 生活魔法は火をつけたり、水を出したり、風を起こしたりできるんです。それがニーナ様は最高ランクなんですよ」
なるほど、と仁奈はルイージを見てこくりと頷く。ルイージは頭を深々と下げた。
そんな彼の様子から、仁奈には生活魔法というものの価値がわかってくる。
生活魔法、つまりは生活に必要な魔法なのではないか。
「えっと、生活に必要な魔法で他の人も持っている――そんな認識でいいですか?」
「あ! ……で、ですが、ここまで能力が高いと力を使っても疲れにくいんです! 多くの人は魔道具に頼っちゃうことも多いので!」
つまりは魔道具でも代用できるのが生活魔法なのではないかとも思った仁奈だが、懸命に話しかけるロビンは善意で告げたのだろう。
確かに魔道具に頼らず、火を起こし、水を出せるのであれば、一般人としては最低限生活には困らないのも事実らしい。
姉の玲奈が聖女ということで少々期待してしまった自分を仁奈は反省する――そのときだ。
「あぁ! 他にも、他にもニーナ様の能力があります!!」
機械から出てきた長い紙を持ったロビンは嬉しそうに仁奈の方を振り向く。
少し年下であろう少年は仕事熱心で優しい気質なのだろう。
落ち込んでいた仁奈の口元も緩む。
「えっと、こちらはなんでしょう? 読み方がわかりません……」
「おや、ロビンでもわからないのかい?」
そう言ってロビンの隣に行ったルイージは丸眼鏡をあげて、彼の手元を見つめる。
仁奈の視線に気付いたルイージはあぁ、といった様子で口を開く。
「この子はまだ幼いのに優秀なんです。貴族の生まれではないからと評価しない魔術師も多いんですが、同じ平民出身の私からすれば希望の星です」
「し、師匠! 僕はまだ見習いです! そ、それよりもこの能力です。おそらくは異世界の言語ではないかと思うのですが……、異世界も国や時代によって言語が違うので」
突然の称賛に慌てるロビンだが、仁奈はむしろその内容に興味を抱いた。
異世界よりの来訪者は国や時代が違うのであれば、日本から来た姉妹と同じ時代に生まれた者もいるかもしれない。
見知らぬ国で姉妹二人だと思っていた仁奈だが、この世界の情報をより共有しやすい者が転生、あるいは転移している可能性もあるのだ。
「えっと、それって私も見せてもらっていいですか?」
「はい! もちろんです!」
紙を丸めるとパタパタと仁奈の方へとロビンが駆けてくる。
ケープマントなのは魔術師の証なのだろうが、色合いやひざ丈のズボンが彼がまだ見習いという証なのだろう。
自分自身もバイトでは新人扱いである仁奈は、ロビンの一生懸命さに目を細める。
「これです。ここのスキルの部分なんですけれど……」
ロビンの指差した箇所を見た仁奈は目を丸くする。そこには仁奈が良く知る言語が書かれているのだ。
「――ですね」
「え!? ニーナ様、読めるんですか!」
近くでキラキラとした眼差しが仁奈へと注がれるが、それ以上に彼女が気になったのはそこに書かれた言葉の意味だ。
「……というか、ケータリングってなんですかね」
ケータリング――フェスやイベントなどで、関係者向けに食事を手配することをそう呼ぶのだということは仁奈も知っている。
しかし、ケータリングと言われても嬉しさよりも困惑が大きい。
テスト結果を前に、ただ戸惑う仁奈であった。
ケータリング、よく聞く言葉ですがあまり縁がないですよね。
芸能やイベントのお仕事で関連でしょうか。
聞くたびに、なんだか美味しそうだなといつも思っています。




