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異世界ケータリング!~姉の聖女召喚に巻き込まれた私の案外充実した日々~  作者: 芽生 1/15『裏庭のドア』3巻・コミックス2巻発売!


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第37話 お子様ランチと幼き日 3

お楽しみいただけていましたら嬉しいです。

いいねもありがとうございます。



「なるほど……それで私を招いてくださったのですね」


 仁奈が姉の玲奈に頼んで呼び出してもらったのは、賢者ショウである。

 以前、話をして彼が仁奈達より前の日本で暮らしていたことがわかっていた。

 今回の依頼、おそらくこれではないかという料理が仁奈の中には浮かんでいるのが、問題はディヴィス夫妻が母ケイトから聞いたという謎の言葉なのだ。


「いえ! ショウ様を昔の人と言っているわけではないんですよ!」

「仁奈!」


 それまでも微笑んでいた賢者ショウだが、仁奈の言葉に声を上げて笑いだす。

 申し訳なさそうに仁奈の隣に座る玲奈が軽く頭を下げると、謝罪は不要だというかのように賢者ショウは右手を振った。

 聖女というのは特別な存在、簡単に頭を下げるべきではないためだ。


「……そうですね。おそらくはこの時代を私も知っております。とはいっても、この方は私より少し前の時代でしょうか」

「本当ですか⁉」


 ぱっと嬉しそうな表情を浮かべた仁奈に賢者ショウはこくりと頷く。

 賢者ショウの手の中にはオスカーがメモをとった紙がある。それを見つめる賢者ショウはどこか懐かしそうに文字を眺めた。


「私達の時代でもデパートや百貨店は特別な場所でした。ですので、家族皆でよそいきの服で行ったものです」

「依頼者のお母様もそうおっしゃっていたみたいなんです」


 仁奈や玲奈にとってデパートや百貨店は少し縁遠い場所だ。

 ショッピングモールに比べて、高級で背伸びをして入るイメージが二人の中にはある。しかし、仁奈が料理は何かはわかりつつ、正解しているか迷った理由は他にもあった。それが聞き慣れない言葉だ。


「ディパーァトゥがデパートなのかな? っていうのはわかったんです。でも、もう一つのエヴェレータァーガーァ……っていうのがさっぱりで」

「私もそれがわからないんです。賢者様はご存じですか?」


 戻ってきた仁奈は玲奈に今回の依頼の相談をした。そのとき、二人ともデパートは推測できたのだが、もう一つの言葉に関してはさっぱりわからなかったのだ。

 賢者ショウは二人を見て、意外だという表情になる。


「なるほど……。ということはお二人の時代にはエレベーターガールはいないのですね」

「エレベーターガール……」


 賢者ショウの予想通り、二人にとっては聞き馴染みのない言葉だ。

 

「当時のデパートにはエレベーターの階を押してくれる仕事があったんだよ。屋上には子供向けの小さな遊園地があったりね。子どもにとっては行けるだけでわくわくする場所だったんだ」

「そうだったんですね……。賢者様にお尋ねしてよかったわ」


 玲奈の言葉に仁奈は力強く頷いて同意する。

 世代の違いで同じ場所でもイメージするものがここまで違うのだ。

 自分達の情報と賢者ショウの情報をすり合わせたのは正解だろうと仁奈は思う。


「そこにはレストランもあったりするんでしょうか?」


 仁奈の問いかけに賢者ショウは楽しげに笑う。

 懐かしい思い出を振り返る会話は彼にとっても心地よいものだ。

 転移してきた彼にとって過去の話をできる人物は限られてしまう。


「もちろん! 毎回、そこで食事を出来るのかとそわそわしたものだよ。大人はカツレツにビフテキ、子どもはミートソースのスパゲッティにクリームソーダなんかが人気だったね。でも、一番の憧れは――」

「お子様ランチ、ですか?」


 仁奈が依頼人であるアデライン達の話を聞いて浮かんだのが、お子様ランチだ。

 決め手は「子どもだけが食べられる特別な料理」という言葉である。

 ただ、食事というのも文化によって異なるため、様々な可能性が考えられる。

 そんな中、賢者ショウが自分にも玲奈にもわからなかった言葉を答えたため、仁奈の中では答えに自信が持てるようになったのだ。


「はい、その通りです。百貨店やデパートのレストランでしか食べらない特別な料理で、子どもの憧れでした」


 仁奈と玲奈は視線を交わし、笑みを浮かべる。

 依頼者の母ケイトの食べたいものがお子様ランチであれば、仁奈にも再現することができるだろう。

 依頼者であるアデラインも喜ぶだろうと、二人の間にはほっとしたような空気が流れる。

 一方で、先程まで笑顔でいた賢者ショウは顎に手を当て、何かを考え込んでいた。それは彼が転移し、長い歳月を過ごしてきたからに他ならない。

 

「――私は懐かしい想い出の味を再現してもらったことに感謝しております。どうか、今回の依頼者にもそんな体験をしていただきたいものですね」

「はい! ご協力ありがとうございます」


 仁奈は笑顔で答え、賢者ショウは優しい眼差しで彼女を見つめた。

 生きるためには食事はかかせない。

 だが、食事をする意味はそれだけではない。

 賢者ショウが想い出の味を求めていたのは、心がそれを求めていたからである。

 ケータリングという不思議な能力を持つ仁奈は、腹を満たすだけではなく、想い出の料理で心も満たしてくれるのだ。

 

 それが長く故郷を離れた者にとって、どれほど助けになるか――この世界に来て間もない姉妹はまだ知らないだろう。

 お子様ランチの話を始め出した孫ほど年の離れた姉妹の光景に、賢者ショウは目を細めるのだった。

 



デパートや百貨店にあった屋上遊園地、

エレベーターガール、洋食など

オシャレだったのかな?と思ったりします。

ということで、デパート・エレベーターガール 

が正解でした。



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