異世界ケータリング、続けます
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飛行船墜落による森林火災は仁奈達の活躍もあって、収まったものの被害は人災であり、魔術師達は相応の処分を受けることとなった。
あれだけの規模でありながら、死者や重傷者が出なかったのは不幸中の幸いであろう。
村人の生活を立て直すため、国から人材を派遣することも決定した。
筆頭魔術師であるケイシー含む魔術師数名はは王の前で虚偽を口にし、国全体を危険に陥れたとして魔道具による魔力の制限に加え、魔術師としての任を解かれ、魔術師数名は飛行船を損壊させた責任として、その代償を領地の没収が決定した。
魔術師であることを誉れとしてきた彼らにとって、その力を使えないことは何よりの屈辱であろう。
貴族であり、魔術師である彼らの傲慢さゆえの出来事を教訓とし、魔術師の専任の見直しも同時に行われることとなった。
平民からの魔術師を見出すことに力を入れ、治癒師の増員も計画されている。
グレタの友人であるサラのように知識を求め、人を救いたいと願う者は少なくないのだ。
知識を求める者が得られるように治療や薬草に関する知識を広めていくのが求められていくだろう。
仁奈達はもちろん、聖女である玲奈も叱責を受けた。
今回、皆が独断で動き、自らを危険にさらしたためである。
しかし、その行動で多くの人々を救い、被害を最小限に収めたと高く称賛もされた。
聖女の妹ではなく、異世界ケータリングの面々として仁奈は評価されたのだ。
「え! 異世界ケータリングが聖女公認に!? わ、私はなんにも聞いてないですよ?」
驚く仁奈にシンクレア夫人はにっこりと微笑み、その足元でガブリエルはしっぽをぶんぶんと振る。
今日も今日とて、いつもの平民用の研究室だ。
魔術師達の人数が減り、今後は平民の魔術師達も増えていくことであろう。
だが、今は仁奈達、異世界ケータリングのメンバーの集合場所となっている。
「あら、だって言ってないもの」
「わふっ!」
「私が口を利くにも限界があるでしょう?」
自分の知らないうちにと仁奈が慌てる横で、キースがうんうんと頷く。
「使える権力は使うべきだよねぇ」
「でしょ? それに聖女様公認!ってすれば一緒に行動できちゃうもの」
権力を行使することに慣れた二人は気にした様子もなく、楽しげである。
仁奈はオスカーとロビンに助けを求めるように視線を移す。
「――だが、そういった形をとることでケータリングカーの移動にも不満がつきにくくくなるだろう。場合によっては他国へと行くかもしれない。そのときに、聖女様のお名前は国を越えて効果があるだろう」
生真面目なオスカーらしい言葉に仁奈も考え込む。
姉の威光を借りるようで気が引けたが、彼の言うとおり、それで助かる人がいるのならば仁奈のプライドなど些細な問題だろう。
「それに聖女様に治癒のために乗っていただくことも、公認だったら気兼ねなく出来ますよ。今、治癒をさらに学んでいらっしゃるんです」
玲奈はロビンやルイージに治癒の知識や魔力コントロールを習っている。
聖女として存在しているだけで、天災などを防ぐ力を持つ玲奈だが、そんな生活では自分自身を見失ってしまう。
聖女としてではなく、玲奈自身が望む聖女の形を模索中なのだ。
突然、召喚されて訪れた異世界だが、仁奈も玲奈も自分自身の居場所を見つけたのだ。
「……っ!」
「どうしたんですか?」
突然、仁奈が立ち上がり、皆の視線が彼女に集まる。
「呼ばれています……!」
何がと言わずとも、皆が立ち上がる。
魔術師であるロビン、騎士であるオスカー、セイリスの民であるキース、そして犬であるガブリエルまで仁奈の言葉を待っているのだ。
「異世界ケータリング、出動です!」
そう言うと仁奈は王城の庭へと走り出す。
今日もまた、誰かが思い出の料理を求め、願っているのだ。
王都には不思議なチラシを見かけたという噂が広まっている。
心からの願いであれば、料理を誰かが届けてくれるというのだ。
それもそのとき、自分がどこにいてもだ。
おとぎ話のようなその噂を笑う者も多くいる。
だが、一方でその噂を心のどこかに大切にしまっておく者もいる。
小さな希望は心の拠り所になるものなのだ。
そして、そんな者が心より求めた場合、異世界ケータリングはどこにでも現れるだろう――孤独な山の中でも、海だけが広がる島でも、閉ざされた洞窟であってもだ。
不思議なチラシと強い願いは少し変わった人々を呼びよせるのだ。
続き(第2部)を書きたいのですが、少しお休みしてからになります。(そのため一応、完結にしております)
お楽しみいただけていたら嬉しいです。




