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セラフィエルの憂鬱  作者: 笑顔猫
最終章

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第72話 再降臨



 聖女を殺し、聖堂騎士を壊滅させた後、大聖堂を堂々と出た私を待ち受けていたのは有象無象の防壁。


 つまり、平の聖騎士の軍団だ。


「つまらん」


 弱卒を山ほど集めて今更何をしようというのか。

 文字通り片手で決着が付いてしまうだろうに。


 まぁ、これも慈悲とやらということにしておこう。


 せめて両腕で葬る決意をした私は、魔王の魔力を再度身体中に巡らせる。

 赤い稲妻の如き亀裂が、傷一つない私の綺麗な肌を襲う。


 見た目は大変痛々しいが、これがなんとも気分を高揚させる。癖になりそうだ。


「悪魔の双腕(そうわん)


 魔王化した私は両腕を破滅の魔力で覆い、この有象無象を片付ける準備に入った。

 信仰によって思考を止めた者に用はない。


「大聖堂を破壊した逆賊だ!」


「神の怒りを知れ!」


 陣頭指揮を執っている後方の偉そうな男が唾を撒き散らして叫び倒している。

 確かに大聖堂を破壊したが、一番先に壊したのはお宅の聖堂騎士サマだ。逆賊とは失礼な物言いであると抗議してもいいだろうか。


 それにしても、『神の怒り』か。


「こちとら、それを受けるために来たんだよ」


 神の怒りなど上等だ。

 迎え撃つ準備はできている。


 さあいつ現れる?


 今か?


 こいつらを駆逐した後か?








 私が胸を踊らせ事態の動きを見ていたその瞬間。








 ヤツは現れた。






 


 ヤツはあの時と同じだ。



 忘れもしない。



 輝くほどの銀髪。



 世界が呼吸を忘れてしまう程の美貌。



 時が止まったような重圧。



 そして、誰もが正体を確信するその()()







 

「みつけた」









 どちらが発声したのか分からないほど同じタイミングで発音された同音に心が弾む。


 お前もか。

 お前も、私を見つけようとしてくれていたのか。


 驚くべき事に、そこまで激情には飲まれなかった。

 涼しげな風に身を任せ、揺れる髪に意識が向き、心地よい静かな空気が私を覆った。


 しかし、その重圧は本物だ。

 大真面目な顔をした端正なその女の姿をした神は口を開く。



「イザベラ・ルシアン・アストリア。その人で間違いないな?」



 どうやら本人確認がしたいらしい。


「すまないが、この地で使える身分証明証は持っていないんだ。何故なら、現時点で聖王国は崩壊したからな」


 私は気分がいい。

 小粋なジョークでその仏頂面を砕かせてやろうとも思ったが。


「冗談はいらぬ」


 一蹴されてしまった。

 あぁオルフェンよ、今になってお前が恋しくなってきたぞ。

 アルベールなら笑ってくれただろうか。


 そう思った次の瞬間。


「……去れ」


 私たちの対話には不要だと思ったのだろう。


 指先一つで強大な風の術式を用いて、聖騎士たちを吹き飛ばしてしまった。

 聖堂騎士がいればまた違ったかもしれないが、あやつらには耐える方法は無かっただろう。物の見事に壊滅だ。


 それに、凄まじい練度の魔術だ。

 当たり前だが、私の用いる魔術とは児戯に等しい程の差がある。


 これが本物だ。


「イザベラ・ルシアン・アストリア。お前に一つ聞きたいことがあったから態々足を運んだ。必ず応え、答えろ」


 なんとも強引な神だな。

 いや、聖女曰く神に近い、だったか。


 だから私なら殺せる。

 奴の願いは知らないが、セラフィエルを討滅するのは私の役目だ。




「嫌だね」




 セラフィエルは片眉を上げ不思議そうにしている。まさか断られるとは思ってもみなかったのだろう。


 奴からすれば人間など下等生物もいい所だ。一国の王が奴隷の人間に命令するよりも強力な言葉だ。


 それに、ヤツの言葉には魔力が乗ってある。魔力耐性の低い人間であれば口先一つで自由に人間を操る事も簡単にできてしまうだろう。

 それ故に、抵抗して見せた私に得心がいってない。


 まぁ、私の方はアレだ。

 自ら死を望み、その望みを無事に叶え死んでいったあの変態女に免じて、答えるのはやめておこうといったところだ。


「相手の口を割らせる方法は、古来より決まっているだろうに。まさか知らないとは言わせないぞ、()()()()()


「……なるほど」


 私は使い古した挑発と共に剣を持ち上げ構える。


 ヤツは自然体だ。

 手も足もダラりと下げ、脱力している。


 だが、隙などではない。

 先程の聖騎士を吹き飛ばした際の魔術。指一本を動かしていたが、ブラフか手癖だろう。ヤツは指など動かさなくても魔術が使える。

 これはクロエが教えてくれた事だ。



 さて、待ちに待ったセラフィエルとの戦いだ。

 魔神の力を使えば、私の命の時間もそれ程長くは保たないだろう。


 本気も本気、超本気で挑むのがいいだろう。


 これが料理ならば、もちろん最初から激辛だ。

 隠し味という名の出し惜しみなんて、一つもしてやらない。


解放(リリース)


 私は内なる封印を解き、全てを解放する。

 魔王の力なんて目じゃない。


 正真正銘、魔神の力の全開放だ。



「……ッ!!」


 ヤツの目も驚きに満ちている。

 はは、してやったりだ。


 驚いただろう。


 何故魔神の力の波動が?


 何故この女が魔神の力を?


 何故これほど強大に?



 そう顔に書いてあるほど読み取れる。

 ダメだな、そんな顔をしてはダメだ。対人戦では表情一つで相手の行動を理解し、先手を打つ事ができるんだ。


 ポーカーフェイスなんてできて当然の技術だ。


 真の達人は目線ひとつで相手の動きをコントロールするらしい。

 言われてもらえば、セラフィエルはその辺は落第だ。


 さて、死合おうか。

『魔神域』はとっくに発動させている。


 これより切り開くは人類の未来、そしてお前の心臓だ。



「闇棘神斬」



 私と魔神の本気の斬撃がセラフィエルを襲った。




 

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