ep.72ゴールデンウィーク、笑顔の先にあるもの
ゴールデンウィークのイベント会場は、想像以上の人だった。
テントが並び、音楽が流れ、あちこちで笑い声が上がっている。
その中心にいるのは——クラインとカメリア。
「クラインくーん!こっち!」
「カメリアちゃん、かわいいー!」
二柱は、それぞれのキャラクターで、確実に子供たちを引きつけていた。
……さすが、だな。
俺は少し離れた位置で全体を見ながら、動線を確認する。
そして、視線を横にずらした。
「はい!好きな色選んでいいよー!」
千鶴が、すでに子どもたちの中心にいた。
風船を片手に、次から次へと配っていく。
「はいはい、みんなにいき渡るから、焦らないでー!」
「落ち着いて、順番に並んでー」
距離がいい。迷いがない。
子供慣れしてる動き。
その少し奥。
翔太がしゃがみ込んでいた。
「大丈夫?……迷子、かな」
小さな子に、目線を合わせて声をかける。
「……うん」
「そっか。じゃあ、一緒に探そうか」
手を差し出す。
不慣れな感じはするけど、翔太も一生懸命、迷子の子供に接している。
ちゃんと“頼れるお兄さん”になってる。
……この二人、タイプは違うけど。
ちゃんと子供たちと向き合っている。
――――――――――
イベントは想像以上に忙しかった。
風船を欲しがる子供の列はなくなることはなく、
クライン、カメリア、そして千鶴と翔太とも一緒に写真を撮りたいという子供たち列が新しく発生している。
みんなとても疲れているはずだ。でも——
子供たちの「ありがとう!」
その一言で、みんなが頑張れていることが伝わってくる。
――――――――――
昼過ぎ。
少し落ち着いたタイミングで、俺は二人に声をかけた。
「千鶴、翔太。少し休憩しよう」
「えー、まだいけるって!」
「ダメダメ。後半バテるよ」
「……ほーい」
千鶴は渋々、でも素直にベンチに向かう。
翔太も隣に座った。
「お疲れさま、二人とも」
持参してきた飲み物を差しだす。
「颯太くん、ありがとう。それにしてもめっちゃ人多いね!」
「聞いていたより多いな。これがゴールデンウィークパワーか……想像以上の人数…」
「それにしてもすごいね」
翔太が、前を見たまま言う。
「何が?」と千鶴が尋ねる。
「クラインとカメリア」と翔太はつぶやいた。
視線の先。
たくさんの子供たちに囲まれている二柱。
「あんなにたくさん人がいるのに……」
翔太は、言葉を選ぶように続けた。
「僕たち以上に、一人ひとりに、ちゃんと思いが届いてる感じがします」
千鶴も、それにすぐ反応する。
「あー、それ分かる!」
俺は少しだけ考えた。
「……ステージも、同じ…」
「え?」
「ライブは、一度にたくさんの応援してくる人たちにパフォーマンスを届けないといけないときがくる」
「でも今と同じで—一対一で向き合わなくちゃいけない」
二人が、黙って聞いている。
千鶴が、少しだけ真面目な顔になる。
「……じゃあさ」
「オレらも、やんなきゃじゃん」
「そうだね」
翔太が、静かにうなずいた。
「ぼく、今日ちょっと分かった気がします」
「“届けるもの”って、人数が増えたって、変わらない…」
……いい視点、いい気づき。見て終わりじゃなくて、自分の中に落とせてるしちゃんと“現場で掴んでる”。
「よっしゃ!休憩終わり!翔太くん行こう!」
「うん!」
――――――――――
そのあとも、現場は忙しかった。
でも、午前中に一生懸命、子供たちと向き合っていたけど、千鶴も翔太もさっきまでと少しだけ違う。
千鶴の声のかけ方が、ほんの少し変わっていた。
翔太の距離の取り方も、わずかに変わっていた。
たぶん——意識してる。
“目の前のひとり一人”と。
でも俺たちは、少しだけ変わった。
La♪Ra・RISE!(ララライズ)として、何をやるべきか。
その答えのヒントは——お客さまやファンとの接点に無数に落ちている。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




