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ep.71 オフのはずが、なぜか撮影が始まった日

事務所のフロアは、いつもより静かだった。


今日はララライズのレッスンはオフ日。


それでも俺は、いつも通りここにいる。


アルバイトとして、スタジオの確認や軽い掃除をしながら、

人気のない廊下を歩いていた。


静かすぎるくらいの空気。


嫌いじゃない。


——そのはずだった。


「お、颯太くんいた」


背後から声がして振り返る。


「……千鶴?!」


ドアのところに立っていたのは千鶴だった。


片手に弁当袋。


「颯太くんなんでいんの?」


「いや、それこっちのセリフなんだけど」


思わず返すと、千鶴は笑う。


「差し入れ!店で余ったやつ!」


……びっくりしたけど、普通にうれしい。


「冷蔵庫入れとくね!」


「サンキュー!」


千鶴のあとを追って、俺もスタジオに入る。


俺がスタジオに入ってまもなく、スタジオのドアが開いた。


「……人がいるのか」そう言って、スタジオに入ってきたのはカノンくんだった。


イヤホンを首にかけたまま、少しだけ眉を寄せている。


「静かな環境を想定していたんだが……」


「オフなのに来たの?」


「音の確認だ。いろいろ検証したいことがある」


相変わらず理屈は通ってるけど、タイミングが良すぎる。


さらにドアが開く。


「あ、伊藤くん。ごめん、ちょっとだけ」


那音くんが観葉植物を抱えて立っていた。


「アルバイト終わりで、岡さんに頼まれた物届けに来たんだけど……あれ?」


スタジオの中を見て、少しだけ驚く。


「……なんでみんな集まってるんだ?」


「それ、今ちょうど話してたところです。那音くんは配達ですよね、岡さんから聞いています」


そうやって話していると、


「ワタシもいるね」


ひょこっと顔を出したのはダズだった。


「ショウタに用事あったけど……まあいいね」


いや良くないだろ、と思った瞬間、


「……面白そうだな」


辰煌が、ドアにもたれてそう言った。


ふと、スタジオの奥を見ると、


壁にもたれたままスマホをいじっている真秀の姿があった。


「……って、真秀もいたのかよ」


「最初からいたけど?」


顔も上げずに、軽く返してくる。


気配はあった気がする。


ただ、この空気に紛れて、完全に見落としていた。


さらにその後ろから、

「あれ……皆さん?」


雪雄さんが、少し驚いた顔で顔を出す。


「今日はオフのはずでは……」


その言葉に、全員が一瞬黙る。


——そして。


「……確かに」


誰かが小さく笑った。


気づけば、スタジオの中にメンバーがほとんど揃っていた。


「……なんでこうなってんだ」


思わず口に出すと、


「偶然の重なりだな。確率的にはあり得る」


カノンくんが即答する。


「え、そういう話!?」


千鶴が目を丸くする。


そのやり取りに、辰煌が楽しそうに笑う。


そのときだった。


スタジオの奥のドアが、静かに開いた。


「……あれ、みんな?」


翔太だった。


「ちょっとだけスタジオで声出ししてて……そしたら外、にぎやかで」


「そりゃ気になるよな」


翔太は少し困ったように笑う。


「今日オフなのに、なんでみんなこんなに集まってるんだろ……」


「ショウタ」


ダズが、少しだけ柔らかい声で呼ぶ。


「ショウタに用事、あった。でも——」


一瞬、周りを見てから、肩をすくめる。


「……この状況なら、あとでもいいね」


「いや、よくはないでしょ、どうしたのダズ」


翔太が苦笑する。


「……なんか、帰るタイミング分かんなくなってきた」


千鶴の言葉に、何人かが小さく笑った。


誰も動かない。


でも、なんとなくここにいる。


——そのとき。


「……この状況、撮れるんじゃね?」


真秀が、壁にもたれたまま言った。


「え?」


思わず聞き返す。


真秀はスタジオのカメラを指さす。


「回そうぜ」


千鶴が周りを見渡して、ぱっと顔を上げる。


「いいじゃんそれ!せっかくだし動画撮ろうよ!」


その一言で、空気が前に進んだ。


「那音、ちょっと来て」


真秀が手招きする。


「え、俺!?」


「“決め顔対決”。シンプルでいいだろ」


「いや、俺ほんとそういうの苦手で……」


少し迷う那音くんに、翔太がぽつりと言う。


「……那音くんなら、ちゃんと決められると思います」


那音:「……っ」


ほんの一瞬、表情が揺れる。


「……やるしかないか」


小さく息を吐いて、前に出る。


「いいな。“表情で魅せる”か」


辰煌が楽しそうに笑う。


「ナオト、ファイト!」


ダズが軽く背中を押す。


「頑張ってください、那音くん」


雪雄さんが穏やかに微笑む。


気づけば、カメラの前に二人が並んでいた。


「回すぞー」


真秀が言う。


俺は少し離れた場所で、その光景を見ていた。


オフだったはずの一日が、

いつの間にか、撮影に変わっていく。


……まあ。


ララライズって、こういうとこあるよな。


そう思ったとき、

那音くんの声がスタジオに響いた。


「……今日は、決め顔の撮影」


その一言で、

この時間はちゃんと“作品”になった。



*キャラクター原案者*

英賀田 雪雄(あがた ゆきお)  :日花子

根古島 カノン(ねこじま かのん) :日花子

京極 真秀(きょうごく まほろ)   :茶ばんだライス

折原 千鶴(おりはら ちづる)   :夏也 すみ

狭山 那音(さやま なおと)   :ギフカデ

Daz・Garcia(ダズ・ガルシア)  :HUNGRY

赤河 辰煌(あかがわ たつき)   :ウニヲ

佐藤 翔太(さとう しょうた)   :niko

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