ep.64 レッスンのぞき見⑥ 演技レッスン“誰に言うか”の続き
前回のレッスンの最後。
太秦さんが残した言葉が、頭から離れない。
「次からはセリフ増やす」
「ちゃんと相手を決めて、関係を考えてきて」
——“誰に言うか”。
その答えを、持ってこい。
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スタジオのドアを開ける。
ひんやりした空気が、少しだけ肌に触れる。
呼吸の音と、靴が床を擦るわずかな音だけがする。
ドアが開く。
「……太秦だ」
その一言で、空気が締まる。
椅子に座る動きまで無駄がない。
「前回の続きやる」
「どんなシチュエーションの“好きだ”でもいい 」
視線が全員をなぞる。
「誰に言うか、ちゃんと決めてたか?」
太秦さんは淡々と続ける。
「設定はしっかり頭の中に置けてればいい」
「その人に向けて、言えるように」
さらに一歩踏み込む。
「設定が曖昧だと、“好きだ”も曖昧になる」
静かに刺さる言葉。
「セリフ増やすのは、そのためだ」
結論だけ置く。
「“好きだ”がちゃんと成立するところまで持っていけ」
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数人の演技が終わる。
前回より、明らかに違う。
言葉が、ちゃんと“どこか”に届いている。
ただ言うだけじゃなく、相手を想定しているのが分かる。
それでも——
どこかまだ、「見ている側」に留まっている感覚があった。
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「赤河」
辰煌が呼ばれ前に出る。
立った瞬間、空気の温度が少し上がる。
それは大げさな変化じゃない。
でも、無意識に視線が集まる。
辰煌がそこに立った、ただそれだけで、スタジオの中心が自然に移動する。
「……言わないつもりだったけど」
低く、押し出す声。
間を詰める。
言葉を発する前の沈黙が、もう“演技”として成立している。
「……好きだ」
声が前に出る。
誰かに言っているはずなのに、なぜか、見ている側の胸にまで圧がかかる。
感情を説明していないのに、「言ってしまった」理由が伝わってくる。
——引き付けられる、というより、逃がしてもらえない。
太秦さんが頷く。
「いい」
「見てる側を巻き込む力がある」
さらに続ける。
「それは、簡単には身につかない」
一瞬、空気が張る。
「英賀田」
続いて雪雄さんが前に出る。
足音が静かで、呼吸も整っている。
立っただけで、空気が落ち着く。
「……来てくれて、ありがとうございます」
柔らかく入る。
間をしっかり取る。
「……好きだ」
声は強くない。
でも、相手にまっすぐ届く。
自然に、空気に馴染む。
太秦さんが頷く。
「いい」
スタジオが静まる。
同じ“好きだ”なのに、まるで違う。
さっきまでの演技が、頭の中で自然に比較されてしまう。
太秦さんが全員を見る。
「どっちが正しいかじゃない」
「状況で使い分ける」
「演じるってそういうことだ。」
辰煌が小さく笑う。
「……なるほど」
その表情には、
自分の“武器”を自覚している余裕と、それをどう使うか考え始めた鋭さがあった。
雪雄さんも静かに頷く。
「……勉強になります」
千鶴が肩をすくめる。
「いや、演技って難しい…」
那音が笑う。
「でも分かりやすかった!」
太秦さんが立ち上がる。
椅子の脚が床を軽く鳴らす。
「今日はここまで」
「次は、相手を動かす」
それだけ言って、出ていった。
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俺は、その光景を見ていた。
La♪Ra・RISE!(ララライズ)は、まだ何も完成していない。
でも——
辰煌や、雪雄さんのように、La♪Ra・RISE!には演じることを得意とするメンバーもいる。
未完だけど、限りない可能性を秘めている…
俺は、その可能性を最大限引き出すまでだ。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




