055. 俺らと、初めての溝浚い(?)
今回また短めです(当社比)
◆
「あのー、駅てどっちですか?」
「……すんません、僕田舎から出てったばっかりで。分かんないです」
駅までの道聞かれて、現実の鉄道駅へ案内しそうになった。
危な〜、ゲーム内には鉄道ないんやった!
今そこへ案内しても、お堀ぐらいしかない。たぶん。めいびー。
んで、もし
「こっちにも駅がある」
て言うても、俺らの知っとるそれと違うんやから。
「そうですかー、えらいすんません」
「いえいえ〜。ところで“駅”て何ですのん?」
「お馬さんいっぱいおる所です」
聞かれたついでに聞いてみた。 ……ら、えらいあっさりした答えやな〜。
一体、何する所なんやろ……?
◇
ジンジュです。溝浚い中やけどこんにちは〜!
いや、まだ浚てないけど。
側溝への排水口に、焦げ茶色の変なスライムが詰まっとって。何でか【土の魔球】食らわせたら、元気になって出てきた〜 !? ……てとこです。
何その……何?
「きゅい!」
「きゅいきゅい〜……」
まあ元気そうで何より、やねんけど。
あと、その焦げ茶くん(仮称)と一緒に、えらい強烈な臭いのする汚水が出てきて。
でも焦げ茶くん(仮)が丸々飲み干したみたいで。もう臭いはせぇへんし、見つけた時より明らかにデカなっとる彼が目の前に、ね……
「拙者特に何もしてないけど、今日もお疲れ〜?」
「「聞くなや」」
「んぶッ !!? 」
俺のボケに、友達らのツッコミが入る。伸ばした手の甲で相手を叩く、ベタなヤツが。
たしか“裏拳”て言うんやったか? 知らんけど。
ただ、種族の差もあって、俺は今2人より50cmぐらい背ぇ低いわけで。
そこに普段のノリで“裏拳”入ったら……
顔 面 直 撃 。
「すまん大丈夫か?」
「あっ痛ぁ〜……けど大丈夫そう。お前らは?」
「「異常なし、ヨシ!」」
「さよか〜」
当たったんが閉じた口、でよかった〜。唾とか鼻血とか、気にせんでええし。
……話逸れた。戻れ戻れ。
◇
ほんで、当の焦げ茶くん(仮)は……
「きゅきゅ、きゅきゅ?」
「きゅい、きゅいきゅい!」
「「「きゅえーい」」」
ウチのスライム6匹の称賛浴びて、照れ臭そうにしとるみたいや。
「ふす……」
「ぴすぴす……」
あと、臭いにうるさいウチの兎2羽から、冷た〜い視線も浴びとる。
「てか遠いなお前ら !!? 」
「ぴすぅ……」
「ふすふす」
まぁ別に……元気やったらええわ、それぐらい。
ほな、そろそろ焦げ茶くんを……
「【鑑定】〜」
「きゅい!」
―――――
ソイルスライム(♂) Lv.21 スカベンジャー
(分類)魔物/??型
自然界の掃除屋。雑食。
本来スライムが苦手とする土を食べ続け、克服した変わり者。いわば「スライム界の激辛好き」である。
HP:100% MP:99%
―――――
「へぇ~、『激辛好き』やて。ボーゼやん?」
「お? 俺あんな所嵌まるほど鈍臭ないぞ」
……やっぱ違うか〜。それに、「激辛料理でダメージ4倍」とかって話も聞かんし。
どんなゲームや、それ?
それを言うなら激辛やない。“毒”やんな〜、たぶん。
でも現実で毒食うアホ出てったら困るから、「激辛」てことにしとるんかな〜……?
知らんけど。
「きゅいきゅい……」
んで。
「“土スライム”で、『土を(中略)克服した』てことは〜……この子土属性?」
「ご明察」
「へぇ~……明察ぅ?」
「なにか?」
「いや〜?」
ボーゼの、歴史小説でもなかなか見かけん返事は置いといて。
土属性か〜、なるほど。
スライムて言うたら、個人的には水っぽいイメージやねんけど。そういうんもあるんやな〜!
んで、“土魔法ぶつけたら回復した”っぽい。つまり……
「この子、『水分で超回復』が『土気で超回復』に変わっとったり?」
「「そこまでは知らん」」
「デスヨネ〜」
そら知らんわ。ウチの6匹、全員水属性やからな。
まぁ一匹だけ、次の進化で闇属性になりそうな子おるけど……
「きゅおー?」
「“レッサー◯◯スライム”は全員水属性やねんて。今んとこの、従魔使い掲示板情報やけど」
「「ふーん」」
あと焦げ茶くん、職分が「スカベンジャー」になっとる。“ゴミ漁り”とか“腐肉食動物”とかって意味の言葉や。
焦げ茶くんはゴミ漁りのほうかな? 汚水飲んどったし。
「自然界の掃除屋」
とか言われとるぐらいやし。この通り沿いの美化に、一役買うとるんやろな〜。
拝んどこ〜。
◇
さ〜て、ほな本題戻ろか。溝浚いや。
まずは南北に伸びるこの「オミソ通り」の側溝、全部見て回るで〜 !!
んで、
「見つけた汚れ、全部落とすど!」
「「応ッ !! 」」
………
……
…
……とか言うとった頃が、俺らにもありました。
いや、せいぜい十数分前やけどな。
「きゅい、きゅきゅい!」
「……もう全部焦げ茶くん1匹でええん違うかな?」
「「ホンマそれー」」
細い路地から流れ込む、別の側溝の合流点とか。側溝に突っ込んどる雨樋の内側とか。
俺らの手ぇ届かん所に、嬉々として触手突っ込んで。
片っ端から汚れ食いよる彼を見ながら、俺らはボヤいとった。
「そうそう、ここ! ここすぐ汚れるんだよね~。あとあっちも……」
とでも言わんばかりの焦げ茶くんの、後ついて回るぐらいしか出来てないし。
……て言うても、デカめのスライムやからな。動き自体は遅いほうやねん。
ほな何の差か?
土地勘や。
「少しのことにも、先達のあらまほしきものなり……」
「『徒然草』やん」
「いや草」
「「何笑とんねん」」
ネタは置いといて、ありがたい話や。
来たばっかりの俺ら他所者に、色々教えてくれよるんやから。
やからメモっとる。もし次があったら、そん時楽になるし。
探す手間省けたら、その分早よ終わるやろ〜?
◇
と、いうわけで。
オミソ通り小一時間を行ったり来たりしとったら、溝浚い終わっちゃいました……
「きゅいきゅいー!」
「おう、ほなまた」
「あんな所もう嵌ったらアカンでー」
「気ぃつけてな〜」
触手振りながら去っていく焦げ茶くんを見送って。
顔見合わせて。
「……あれー、俺ら何しとったっけ?」
「【土の魔球】1発撃って〜、歩いてメモ取って〜……ぐらいか」
「「マメやなお前……」」
「そうかな? そうかも……」
とか言うとったら、焦げ茶くんが嵌っとったあの排水口から、また白っぽい液体が……
帰゛っ゛て゛き゛た゛刺゛激゛臭゛ !!
「「「 あ゛〜゛、 鼻゛か゛〜゛ッ゛!!! 」」」
「……きゅい? きゅきゅい!」
それと、 帰 っ て き た 焦 げ 茶 く ん (仮)。
また側溝に下りて、汚水を飲みよるみたい。臭いがちょっとずつ薄れてきて……ん !?
なんか刺激臭の中に、ほんのり心当たりのある匂いが……
「うどんの茹で汁〜……?」
「は?」
「マジでー……?」
……うん。排水口の上見たら、「……うどん」て暖簾出しとるお店やな。
あと、困った時の外部検索。「うどん 茹で汁 排水」で……AI要約は飛ばして。
「「「……“高濃度うどん排水処理施設”ぅ ??? 」」」
あ、結構洒落にならん問題なんや……某県庁公式サイトとか、大学の論文とか出てくる。
んで、それを一手に引き受けとる焦げ茶くん……
もう一遍拝んどこ……!
◇
今度こそ、焦げ茶くんと別れて。「根の国商工組合本部」へ戻って、報告しよか〜。
……て思とったら、後ろから声かけられた。知らんおばちゃんや。
「あのー、駅てどっちですか?」
「……すんません、僕田舎から出てったばっかりで。分かんないです」
駅までの道聞かれて、現実の鉄道駅へ案内しそうになった。
危な〜、こっちには鉄道ないんやった!
今そこに案内しても、お堀ぐらいしかない。たぶん。めいびー。
んで、もし
「こっちにも駅がある」
て言うても、俺らの知っとるそれと違う。
「そうですかー、えらいすんません」
「いえいえ〜。ところで“駅”て何ですのん?」
「お馬さんいっぱいおる所です」
聞かれたついでに聞いてみた。えらいあっさりした答え、返ってったな〜……
質問、追加。
「……牧場違うんすか?」
「せやね。お手紙とか荷物とか、お願いして遠くに運んでもらう所でっさかい」
それ郵◯局? この国にも◯便局あるんかい !?
へぇ~、世界広……
「あっ、ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそおおきに。 ……ほら、アンタら行くでー」
「「はーい」」
お互いに一礼した後。
道聞いてきたおばちゃんは、街道を西へ歩いてった。お子さんら連れて、な。
親子にしては歳の差ありすぎる気がするけど、どうなんやろ?
まぁ知〜らね。俺に、他所様の歳聞く度胸はない……!
◇
通り3本分、西へ歩いて。「フダノ辻」の組合本部まで戻ってきた。
「たのもー! ……あだッ !? 」
「“喧し”言うとんねん」
「せやせや〜、2度言わすな」
また大声出しながら入るえすとを、ボーゼと2人で、軽くどついとく。
よかった〜……他にお客さんおれへんみたいで。おったら絶対迷惑かかっとった。
ほんで、職員さんには正直に報告しといた。
「居着いとるスライムくんがほぼ全部やってました」
て。
「あ~、やっぱりね……。前にオミソ通りの町内会長さんが来たった時に、『あの依頼しばらく下げるか、迷てますねん……』て話してはったからな〜」
「「「へぇ~」」」
地味〜に貴重な体験させてもろた上で、報酬も満額頂けました。
《「オミソ通り側溝の浚渫」をクリアしました。報酬として:10マニを獲得》
あざ〜っす !!
◇
組合出てすぐ、ボーゼが一言。
「おぉヤバ、雷雲来よぉぞ」
「「マジか !? 」」
見せてきた画面は……現実の雨雲レーダー画像か。
「うわ〜ホンマや、早よログアウトせな」
「やなー。で、明日どないする?」
「昼過ぎにまたここ、でええか?」
「おっけー」
「俺も大丈夫……地上戻らんでええん?」
「「あー……」」
返事ついでに、気になったこと聞いてみたら。友達2人が渋い顔しよる。
んで、ボーゼが口開いた。
「当分、地上戻るほうが面倒くさなりそうやからな。しばらくこっちスタートでええと思うわ」
「了解」
通知絡みか? 知らんけど。
コイツまた何かやらかしたな ??
まぁええか!
「「「ほなまたー !!! 」」」
お読みいただき、ありがとうございます m(_ _)m
次回更新は6/20(土)頃、番外編の予定です。
本編は30日(火)更新を予定しております。ジンジュくん、初めての調合に挑む……?
【追記】一部加筆/修正しました
(2026/06/19)




