十八話 合流したら
すみません、遅れました!
空から落ちてくる石や巨木を盾で受け止め弾き返す。
頭上には竜の姿があるが、足元で身を縮こまらせる蟻には興味がないのか、悠然とどこかを見ていた。
だが今のそれは、酒呑を守る五十鈴にとっては好都合だった。
酒呑も結界を張っているが、里全体の結界の維持プラス自身を守るための結界の維持をするのは、最高峰の魔法使いとも言えど大変だ。
故に五十鈴が盾で飛来物を弾き、柊が飛来物を破壊するという、切羽詰まった状況になっていた。
「くっ、すまぬのう。わしのために」
「いえ、問題ありません。私の負担よりも、里の結界の維持の方が大切です」
「勇ましいこじゃな。柊、お主も平気かえ?」
「っ、はいっ。全然、大丈夫ですっ」
汗をダラダラと流しながら、戦斧を用いて飛来物を破壊する柊。
魔獣との戦いは短期かつ負担が少ないが、かれこれ約一時間はずっと同じことをしているため、柊にとってはだいぶ負担があった。
こればっかりは場慣れした数に比例するため、どうしようもない。
「……むぅ」
そんな時だった、酒呑が難しそうな顔で呻くような声をあげた。
当然、柊にも聞こえていた。同じように酒呑を見て、何があったのかと固唾を飲み込む。
「すまのう、今まで負担をかけた。……ここからは平気じゃ」
その言葉と同時に主点を中心とした小さなけれど、三人は確実に余裕を持って入れる大きさの結界が形成された。
飛来物は結界にあたると弾かれ、そのままどこかへと飛んでいってしまう。
そんな驚きに固まっていると肩をポンポンと酒呑が優しく叩いてきた。
そして微笑みながら、
「ほれ、行くぞ」
と囁いてから、服の裾を摘んで引っ張ってくる。
同様にそうされる柊と共にそのまま主点に引っ張られていくのだった―――。
―――竜の側を離れてから数分、ボロボロになった通路を飛来物と崩落を警戒しながら進んでいた。
いくら結界があろうと落下して仕舞えばその時点でおしまいとなってしまうから。
「酒呑様、これからはどこへ⁉︎」
「行く当てなぞありはせん、じゃが、ここに居ては幾つ命があっても足りぬからのう。被害の及ばない場所へ退避じゃ」
そう言いながらやってくる飛来物へ手のひらを向け、腕を伸ばし、結界を発動。
やってきていた飛来物は結界触れて瞬間に粉々に粉砕され、砂粒となってら風に攫われていった。
「戦況は、良いとはお世辞にも言えぬな」
空中廊下を歩きながら眼下に広がる戦いの光景を見て、酒呑は足を止めた。
防壁のところどころは完全に破られ、瓦礫を上って魔獣がやってきている。
「……紅鶴を呼び戻したい所じゃが、あやつも苦戦してると報告を聞いておるからのう」
「苦戦、ですか?」
「あぁそうじゃ。先日に【英雄】がボコボコにしていたのと、赤い奴じゃ」
「それは……」
最悪の結果が頭の中をよぎったが、酒呑が戦場から視線を外し真っ直ぐ見つめてきたことで、その考えは消え去った。
「案ずるでない、怪我はするとしても彼奴が死ぬことは万に一つ、あり得ぬよ」
実力をよく知っているだろう酒呑の言葉を信じ、自分の浅慮な考えに「失礼しました」と謝罪するのだった。
それを受けた酒呑は「な、何よそこまで……」と少したじろいでいたが、謝罪するべきだと確固たる意思で思うのだ。
信頼している仲間の実力を疑われるのはいい気分にはならないだろうから。
「―――酒呑様ー‼︎」
とそんな時だった。ドタドタという足音と共に酒呑の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
その声の方と足音の方へ目を向ければ、そこには氷雨と竜胆達が居た。
氷雨だけが服がボロボロなものの、欠員はおらず、隣に立つ柊もホッとしていた。
「氷雨……皆、無事じゃな?」
まるで犬のように酒呑の元に駆け寄ってきた氷雨は、褒めてもらいたそうに胸を張って、こほんと咳払いをした。
「はい! 私が責任持って守りましたから!」
「一番やばっかたの氷雨姉なんだけどね〜」
満面の笑みで放った自分の功績だったが、菜葉の余計な一言のせいで邪魔されてしまった。
ゆっくりと後ろにいた菜葉を見てから、すぐに酒呑へ顔を向けて氷雨は褒めてと言わんばかりな顔を浮かべていた。
「無事なだけで十分偉い。よくぞ戻ってきた……さて、戻ってきたばかりじゃが、ちとここから離れるぞ。安全な場所を目指してのう」
「大丈夫です! 酒呑様、安全な地はすでに見つけました!」
「……なんと、それは本当か?」
氷雨の今度はちゃんとした、本当にすごい功績に、一瞬酒呑は反応が遅れたものの、すぐに驚きながら聞き返していた。
「そだよー、今琥珀姉が安全確保してるー。怪我人も大体そこに集められてるー」
酒呑の疑問には菜葉が代わりに答えた。
それは今の酒呑達にとってはとんでもない、朗報だった。
しかも琥珀がいると言う。
「分かった、そこに行こうかのう。……柊、五十鈴よ」
比較的に安全なその場所に目的地が更新され、いすゞが歩き出そうとしたと同時に、背後へ振り返って柊と、自分の名を呼んだきた。
同時に顔を上げて疑問符を浮かべると、酒呑は肩に手を置いてから口を開いた。
「ちと危ないかも知れぬが、お主らには紅鶴の元へ向かい、わしらの居場所を教えてやってくれぬか?」
「紅鶴様に」
「あぁ。帰ってきた時、わしがおらんかったら、大変じゃろうて」
続く酒呑の言葉にすぐに納得が行った。
納得したはいいものの、二人だけであの戦場を通って、最前線で魔獣を食い止める紅鶴の元に……。
が、酒呑直々の頼み事。断るわけにも行かない、ならば返事は決まっている。
「承知いたしました。私にお任せ下さい」
「うむ、頼んじゃぞ。柊、お主ものう」
「は、はい」
そう、返事をしたのを確認すると酒呑は氷雨達と共に氷雨達の言うその場所へと向かうのだった。
そして、残された自分達は顔を見合わせた後、すぐに紅鶴の下へと駆け出すのだった。
読んで頂きありがとうございます!!
面白いと思って頂けましたら、ブックマークと評価やレビューなど、どしどししてくれると物語の面白さ向上につながります!




