十話 氷雨流剣術
遅れました、すみませんっ‼︎
ガンッと音が響くと同時、地面が断割した。
だが氷雨の刀は魔獣の首を断つことはできず、空中にて一、二秒の間待遇することになる。
結果、ぐわんっと魔獣が首を振るったことにより、なす術なく空高く投げられてしまう。
地面では魔獣が口を開け噛み殺す気満々で待機している。だがそのまま噛み殺されるわけにはいかない、刀を構え直し息を深く長く吐いた。
「……氷雨流剣術『降雨』」
身を縮こませた状態で刀の刃を魔獣へ向け自由落下する。落ちてくる雨が如く、身体は地面へ一直線に落ちてゆく。
そして魔獣の口の中にそのまま落ちていく。瞬間、バッと魔獣が顔を逸らし避けたのだ。
だが刀の切先は魔獣の口端を捉えていた。
スパッと豆腐のように切れた。
「チッ、魔獣のくせに勘が鋭いわね」
つま先をトントンと地面へ叩き、刀をくるくると操り持ち替えた。
「氷雨流剣術『雪華』」
次の瞬間、魔獣との距離が消失し目の前には、縦と左右斜めに大きく深い切り傷を負った魔獣が居た。
魔獣の硬質化すら間に合わない一瞬の技。
だが幾ら鬼族の身体だとしても負担は大きい。
ガクガクと足が震えてしまい動かすことすら難しいほどになってしまう。
魔獣はそれを見抜いたのか前足を上げ始めた。
「っ! 氷雨流剣術っ『雪氷解』」
魔獣から攻撃を避けるために用いた回避技。
手に触れた雪が熱で溶けたように、相手の前から姿を消すように、一瞬にして回避する技だ。
「―――っ‼︎ 氷雨流剣術『氷柱乱突』」
背後へと回避して木を地面にし跳躍完全なる奇襲を仕掛けるものの、魔獣の尻尾がそれを阻止してくる。
乱突きは突如目の前に入ってきた尻尾により、魔獣の身体ではなく尻尾へと当たってしまう。
「氷雨流剣術『天昇凍結』」
内心舌打ちするもすぐに次の手へと移った。地面に着地すると同時に刀をクルッと刃を天へ向け、登るように切りつける。
切られた魔獣の傷口は瞬時に凍結し、傷口の縁はポロポロと氷の破片となって崩れ始める。
尋常じゃない痛みが魔獣を襲った。
当然、魔獣は絶叫する。
鼓膜を突き破るかのような絶叫に動きが鈍るが、追撃を逃すことはしない。
「氷雨流剣術『雪華』」
絶叫する魔獣へ技を繰り出す。凍結しポロポロと崩れる身体に縦と左右斜めの大きな傷。
魔獣はやぶれかぶれに噛みつきを繰り出すのみしかできなかった。
「氷雨流剣術。……っ、奥義禁術『雪華触身』」
それを避け次なる技、否、戦いを喫するための技を繰り出した。
はぁ〜っと吐く息は白く、氷雨の身体から気霜が溢れ出し、髪の毛の先はパリッと凍っていく。
手足の先も青白く変色し始め、じわじわとその領域を広げつつあった。
「ふーッ、終わらせてやるッ‼︎」
バッと走り出した瞬間に筋肉が断裂する音が聞こえた。
だが鬼族の治癒能力を、意図的に増幅させ筋肉を再生。目にも留まらぬ速度で移動し、魔獣へ飛びかかる。
ガキンッと刀は弾かれるものの、わずかに魔獣の身体には切り傷が刻まれていた。
そのことに魔獣も危機感を覚え、がむしゃらに攻撃を繰り出してくる。
前足で、口で、尻尾で、体当たりで。
暴れる巨体のせいか、森の木々が次々と薙ぎ倒されていった。
だがそれは氷雨にとっては良いことだった。
木々が倒れることにより舞い上がる土煙のおかげで、魔獣は氷雨の姿を多々見失なう。
それを活かしてのヒットアンドアウェイにて切り傷を刻んでいく。
煙の中から飛び出し切りつけては、煙の中へと飛び退く。
切りつけ、突き、凍結させる。
魔獣の身体は見る見るうちにボロボロになっていった。
そして最後の一撃を与えようと、足に全身の力を込め飛び上がる。同時に足の筋肉がまたしても断裂した。
だが、今回はすぐに治さずに今度は刀を持つ腕に全身の力を込めた。
そして魔獣の首へ振り下ろした。
ブチブチッブチンッと連続して腕の筋肉が断裂していった。
気を失いそうになる激痛の代償は、魔獣の首を断ち切ったことだった。
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