七話 二人一組で
―――十分前―――
集められたのは総勢25人の防衛隊の人々と自分達一行。
そしてその25人に囲まれているのが紅鶴だった。紅鶴は全員が揃ったのを確認すると、机に置かれてる作戦図に視線を落とした。
「……これから班分けするが、その前に皆の役割を話す」
トントンと紅鶴が指で叩くところには敵大将と思われる駒が置いてあり、その周りには複数の兵棋型駒が置かれている。
おそらく目星はついているのだろう。これを前提とした作戦なことが伺える。
「これから皆にやってもらうのは挟撃だ。……まず、一班が飛び出しそのまま突き進む」
端的にまず結論たる言葉を告げる紅鶴。
挟撃作戦、それは戦う者同士の連携や信頼、そして兵としての練度が試される非常に難しい作戦だ。
それをしなくてはならないことに、少なからず自分達も含め周りの人々ざわついてしまう。
「次に二班と三班が右翼側を担当してもらう。そして四班と五班が左翼側だ。斥候の情報では右翼側の防備が厚いらしい、激しい戦闘になると覚悟してくれ」
班分けをする前にそんなことを言ってしまっていいのかと思ったものの、この程度で戦意喪失するほどやわじゃないらしい。
誰一人として怯えていたり、顔を強張らせてはいなかった。
「それでは今から班を分ける。まずは一班からだ、名を呼ばれた者は、呼ばれた者同士で集まってくれ―――」
―――森の中を走りながら先ほどのことを思い出していた。
挟撃作戦。その作戦の中で、私達一班が担当するのは囮だ。
敵地へ突撃するのだが、無鉄砲とすら言える真正面からだ。だが無鉄砲とも言える突撃だが効果は少なくともある。
まさか敵が真正面からなんてと混乱する魔獣やらが逃れた先には、徐々にハサミのように、二と三班が、四と五班がやってきていることになる。
上手くいけたならば、そのままハサミの要領で敵大将の首をちょんぎってしまえば終わりだ。
だが現実はそう甘くない。
「……っ、右翼から赤い閃光を確認! 葛葉さんっ」
「っ……進むよ!」
後ろからの律の報告に、一瞬の葛藤の後にすぐに決断を下す。
赤い閃光は作戦中止をせざるを得ないほどの妨害が入ったことや、撤退を要請するものだ。
そしてそれを見て作戦を中止するか、増援を送るかは本隊にいる、紅鶴の仕事だ。
今自分達のやるべき仕事は囮として、あわよくば敵大将を討つ。
それだけを考えればいいのだ。
「前方12時、2時、10時に敵影視認。葛葉様!」
間を開けて配置されている魔獣の集団。
先頭を走っていた五十鈴の報告に、すぐにどうするかを考えた。
そして弾き出した答えは、
「五十鈴と律はそのまま直進! 鬼丸は2時の方向のを叩いて! 私と柊は10時の方向を叩く‼︎」
相性をよく考えたツーマンセル、鬼丸は例外だ。
走りながら位置を変え二人一組の形となり、そのまま流れるように分かれた。
五十鈴と律は12時の方向を担当するため真っ直ぐ行く。
鬼丸は2時の方向を担当するために斜め右に分かれていったが、分かれた直後にとてつもない振動と轟音が鳴り響いた。
そして自分達は10時の方向だ。
「柊、背中をお願いね!」
「分かった……!」
ナイフを抜き前方を凝視した。
直後影が飛び出してきて、ガパッと口を大きく開ける魔獣の姿が見えた。
その口の中に渦を巻きながら形を成していく炎の球体が見えた。
「っ、飛んで!」
それが何かを察したときにはもう遅く、火球が高速で飛んでくる。
バッと声を上げながら右へ避けつつ柊のことを見ると、柊も間一髪で左へと避けていた。
「こんにゃろ‼︎」
不意打ちに火球を飛ばしてきた魔獣へナイフを投げ、一気に加速して距離を詰める。
投げたナイフは見事に魔獣の眉間に刺さり一体を無力化、その横を通り抜けもう一体の胴体を切断する。
更にもう一体と踏み込んだと同時に、ドゴンッと目の前に大戦斧が落ちてきた。
スパンと清々しいほどに落とされる首、一瞬にして魔獣三体を駆除するのだった。
「……終わり、かな?」
「らしいです、さすがママっ!」
「あはは、ちょっと恥ずかしいなぁ」
キラキラとした目でそう言われることに、乾いた笑みしか浮かべれない。
周囲の警戒をほんの少ししてから投げたナイフを回収し、五十鈴達と合流するために走り出す。
しばらく走ったあと、五十鈴達と合流した。
「葛葉様、ご無事でしたか?」
「平気平気」
開口一番に身を案じてくる五十鈴にニッと笑みを浮かべながら傷一つないことを見せた。
こちらを心配してくる一方で、五十鈴の身体には少し引っ掻き傷が腕などにあった。
が、一緒に戦ったであろう律の身体に怪我はないため、五十鈴は盾として頑張ったのだろうと解釈した。
「で、鬼丸さんはどうしたの、それ?」
「うむ、頑張った証じゃな!」
頭から血でも被ったのかと聞きたくなるほどに、血塗れの姿で合流した鬼丸にやれやれと頭を抱えてしまう。
最初は大怪我でもしたのかと思ったが、全て返り血だったために一安心するのだった。
「むぅ、ちと獣臭いかのう?」
そんな鬼丸の言葉に全員が目を逸らすのだった。
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