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四話 季節外れのおしくらまんじゅう

昨日はお休みということにしてくださいっ、すみません!

 鬼丸が入ってすぐに、リビングに入る形で私は帰ってきた。

 そんな長いこと空けていた訳でもないが、それでも、とてつもなく長い間空けていた気分になる。

 リビングは前と同じ光景が広がっている。

 竜胆(りの)が配膳していて、菜葉(なのは)が退屈そうにポケッーとしていて、椿(つばき)が外の景色を眺めている。

 そしてそこには自分たちの姿もあって、自分家ではないのに、物凄く安心する場所に。


「ただいま」


 リビングに入るなり開口一番、そう口にしたが、


「あれ?」


 リビングには誰もいなかった。


「今は誰もおらんぞー」

「えっと、若葉。皆んないるって……」

「……ん? 起きてた、時は、居たの」

「……」


 嫌な予感がする。


「それって、い、いつかな?」

「……んぅ、8時間、前?」

「……」


 予感が的中した。

 若葉の答えは、先ほどの答えを無効化する特級の切り札だった。


「うぅん。取り敢えずは休もうかな」


 こんな時、母親はどんな接し方をするのか。

 いや、そんな悩むことでもないだろう、こんな些事は。


「なんじゃ葛葉よ、そんな重いもん着けて歩いとったんか?」


 そんな風に考えていると、横になった状態の鬼丸が装備について聞いてきた。

 なぜそんな質問をして来るんだと思いながら聞き返す。


「え? うん、だっていつ来るかわからないんじゃないの?」

「……あー。律よ、葛葉と会った時に言わんかったのかのう?」

「あっ! わ、忘れてました……」


 指摘された律がビクッと身体を跳ねさせてすぐに思い出したのか、申し訳なさそうにこちらへ身体を向けてくる。

 ペコペコと謝りながら律は説明してくれた。


「えっと、じゃあつまり……襲ってきた魔王軍幹部の屍皇は後最低でも1日は襲ってこないってことなの?」

「は、はい。……なので、今日はいつでも臨戦体制でいる必要はないんですぅ、すみません葛葉さん!」

「いいよいいよ。でも、そうなんだ」


 気張っていた気持ちがやんわりと解されていくのを感じた。

 今日1日は来ないらしい。ならば、自分のするべきことは休むことと、あとはスキルについてだ。


「……鬼丸、若葉」

「なんじゃ?」

「……ん?」


 二人に声を掛けると、二人は同時に振り返る。

 奇しくも鬼丸と若葉は少し間を空けながら横に座っていた。

 そんな二人の間にグイッと入り込み、二人のことを抱き寄せる。若葉は終始困惑で、鬼丸は「フッ」となんでか勝ち誇っていた。


「今日はずっと一緒に居よか〜」

「なんじゃなんじゃ、ようやっとお主もわしのことを心の底から好くようになりおったかのう?」


「違うよー」

「否定するなァ!」


 ゲシゲシと不満を露わにするように蹴って来る鬼丸。少々痛いが、だいぶ手加減されている蹴りだった。


「ほら、律もおいで〜」

「えっ⁉︎ わ、私もですか!? ひ、必要あるんでしょうか……?」

「あはは、もしかして……。私はね、ただ単にスキルのためだけに二人とこうしてる訳じゃないんだよ?」


 招き猫のように手で律を誘いながら、本音を吐露する。

 そう、スキルのためだけに鬼丸と若葉を抱き締めている訳ではない。

 他単純に一緒に居たいから抱き締めているのだ。他の皆んなにもそうしたいが今ここには居ない。

 なら今ここにいる三人を抱き締めたいのだ。

 あの洞窟の中で思い知った、孤独感を。

 柊が居た。でも、それでも、あの洞窟の中では人が居ても闇が心を蝕み、孤独感を募らせていた。

 それを今上書きしたいのだ。


「スキルなんて関係なしに、今私はこうしたいからしてるの。律ともしたいんだよ?」

「ッ」


 かぁっと一瞬にして律の顔が赤く染まった。

 頭から湯気を出しながら律はロボットのようにカチカチな動きで寄ってくる。

 ほらほらおいで〜と呑気に口にしながら手招きする私を、抱き締められている二人は見ていた。

 そして顔を見合わせ、


「……ん、意外と、女誑し?」

「うむ、そうじゃな。にしてもあれは言葉選びが悪いのう」


 冷静に今の一部始終を評価していた。

 そんな二人の言葉を無視して、恥ずかしがりながらも体を委ねてくれる律を優しくぎゅっと抱き締めた。


「……ん、狭い」

「同感じゃ。いつまでこんなことをするのじゃ?」

「んー、ずっと〜」


 若葉や鬼丸は普通で、なんなら文句まで言えるほど。対して律はというと、借りてきた猫のように大人しくなっていた。

 今のこの状況に脳の理解が追いついていないのだろうか、キョロキョロと視線をいろんな方向へ向けていた。


「律ってば何をそんなに緊張してるの〜?」

「い、いえっ。……ですが、う〜!」


 イタズラ心全開で、緊張している律へ「もしかして私のこと嫌いになっちゃった……?」的な顔を向けてみると、たちまち律は慌てふためき始めた。

 あわあわとぎこちなく手をワナワナと動かし始める。

 反応が可愛いな〜と微笑みながらその様を眺めるのは中々に楽しい。

 まるで変な行動をしてるペットを眺める気分だ。


「……ん、結構、酷い?」

「じゃな、人でなしじゃな!」


 そんな様を二人はまたしても顔を見合わせて評価するのだった。

 そんなこんなを続けて10分ほど経った頃だった、玄関からガラガラガラと音がしてきた。

 誰かが帰ってきたのだ。

 そしてスタスタと言う玄関を上がってここにやってくる足音も聞こえ、次第にそれは近づき大きくなっていく。

 ジーッとリビングの扉を見ていると、


「―――た〜だいま〜」


 バッと扉を開け放ち椿が開口一番そう言いながら中に入ってきたのだった。

 そして四人で塊になっているのを見つけると、


「ん〜? いいな〜椿も〜!」


 タタタっと駆け寄ってきては少しジャンプして抱きついてくる。が、その衝撃で全員が床に倒れてしまった。

 静かな家の中に大きな音が響くのだった―――。

読んで頂きありがとうございます!!

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