十五話 なんか出そうじゃね?
すみません、昨日の夜投稿できなかったものになります!
―――魔獣はすぐに標的を変えた。
空中にいるために避けることも何もできない方を確実に仕留めれるように、弾かれた頭以外の二つの頭が同時に狙いを定めたその時だった、雷鳴のような音が鳴った。
同時に、魔獣の腹部に巨大な穴が空く。
その音の出所と、硝煙の匂いに、魔獣は振り返ってくる。
「っ……手が壊れちゃった!」
怪物のような大きさのリボルバーをどうにかこうにか構えて、援護射撃。
狙いを誘う。
「やらせるもんですか‼︎」
覚悟を決めて、残りの五発を魔獣へと銃口を向けて発射した。
轟音が鳴り響く。
大気を震わして、音速を超えた弾丸が標的を穿つ。
硬い表皮のはずが、たった一発で穴が空いてしまう。
手にしている武器は、トリプルアクションサンダーの次にバカ威力の武器、「パイファー・ツェリスカ」だ。
連続射撃が功を奏して、空中にいた柊は無事地面に着地ができていた。
よかったと、一安心してる暇もなく、魔獣は次なる一手をかまそうと顔を地面へと向けていた。
「っ、それはっマズい!」
咄嗟に何をする気か察したため、身体はすぐに動き出してくれた。
全力ダッシュでまず柊のことを拾い、そのままの勢いで跳躍し、巨大な木を駆け上がっていく。
地面から10〜15メートルほど離れた辺りの太い枝の上に乗り、ふぅっと息をついた直後だった、先程まで居た地面がメラメラと燃える盛る炎によって真っ赤に染まり、木々は一瞬にして灰燼と化して行った。
「うっわぁ……やばいねこれ」
眼下の光景に目を丸くしていると、腕の中に抱いている柊がグイッグイッと押してくる。
素直に話してあげると柊は、少しだけ顔を赤くしながらこちらを見つめてきた。
「……」
「?」
口をごにょごにょと動かしてはいるものの、何を言おうとしておるのかはわからない。
首を傾げて、言葉を待っていると、
「んですよね……?」
「ほへ?」
「えっと、だから……その……」
目を泳がせ顔を逸らしながら、それでも勇気を振り絞ったのか、柊はまっすぐ顔を向けてきては口を開いた。
「ママって、呼んでいいですか……?」
「……」
その口から出てきた言葉は何のことのないようで、スッと耳の中に入ってきては、脳みその中をエグいくらいにこねくり回してグチャグチャにしてから出て行った。
固まった時間がどのくらいかもわからない。一秒か、十秒か、一分か、ただ感じていたのは、柊の恥じらいからくるため息の吐息の音だった。
コクっ、コクコクコクコクコクコクコクコクっと首が壊れたかのように上下に自然と振られる。
自分でも驚いてしまいそうな速度で振っているため、当然それを見ていたく柊は酷く驚いていた。
「きゅ、急に変なことしないでください! 怖いです!」
少し後退しドン引きしながら言ってくる柊だが、今の自分にはその声すら届くことはない。
全ての情報がシャットアウトされている。いや、一つだけ、一箇所だけはずっと流れ込んできている。
目だ。眼球からの情報だけは漏れなく流れ込んできている。
なぜか、それは柊がやっと心を開いてくれたことが嬉しいからだ。
ついこの間まで暴言で遠ざけようとしていた子が、今はママと呼んでくれる様になっているのだから。
「……私じゃ、本物の代わりにすら慣れないかもしれないけど、でも、それでも、完璧にやるよ『ママ』を―――!」
ガワだけなら完璧だが、それなだけが逆にいいのかもしれない。
完璧な本物よりも、完璧な贋作の方が柊達にとってはいいのかもしれない。
「……誰かが言ってたっけ? 女は弱し、されど―――」
地獄の様な眼下の光景、だが、今の自分にはそんなのは見えていない。
見えているのは子供にとっての危険因子のみ。
それを排除するためなら、自分の命すら惜しくないと思えてしまうマインド状態だった。つまるところ、有頂天となっているだけだ。
「母は強しってね‼︎」
バッと今まで避難していた大樹の枝から両手にナイフを手にして、飛び降りた。
着地場所というより、落ちる場所は決まっている。
魔獣の頭だ。
「―――そらっ‼︎」
自由落下の威力も乗り、だいぶ強烈な一撃となったはずだが、魔獣は何事もなかったかの様に頭を上げた。
そして落ちた頭以外の頭が、じっとこちらを見てきた。
バッ、少しの間を開けて突如として噛みついてくる二つの頭。咄嗟に飛び避けたものの、足が食いちぎられてしまった。
「いった〜‼︎」
激痛が即座にやってくるが、すぐに『想像』にて治療。魔獣の大きな背中の上で一呼吸つくことにした。
魔獣はじっと様子を窺ってきている。
警戒しているのだ、何度も大ダメージを与えてきた敵だからだ。
そして、それは今回も。
『創造』を用いて、またあの銃を作り出す。
トリプルアクションサンダー。もうすっかり愛銃とかしてしまっている、お気に入りの銃だ。
片手で構えてそしてすぐに撃つ。魔獣の馬鹿でかい首なら間違いなく当たると踏んでの、速射だった。
狙いは正確、弾丸は綺麗に魔獣の首に風穴を開ける、はずだった。
突如カキンッと音がして、飛んでいった弾丸が弾かれたのだ。
は? と自然と口から声が漏れてしまった。
だがすぐに気を取り直し、確認に移った。
もう一方の片手でトリプルアクションサンダーを作り出し、適当な頭に一発、そして最初のを捨てて、新しいのを作り出し心臓へ目掛けて一発。
計二発の回避不能の死の弾丸だったが、それら全てが、突然カキンッと音を鳴らして弾かれていく。
「―――チッ。そんなのあり?」
頭、首、心臓と、この三つに弾丸が通らない。それから導き出せる答えは単純だった。
死に陥る攻撃を防ぐ、何らかの不思議な力で守られているのだと。
分かりやすすぎるそれに、少しイラッとしながらも、冷静になってどう倒すかを考えるのだった。
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