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二話 足技使いの達人キャラってかっこいいよね

少し遅れてしまいました、すみません!

 地響きと共にドドドとやってくる影の塊。

 獣道が全て覆い隠され、まるで黒い大蛇がうねうねと猛スピードでやってきているようだった。

 そんな裸足で逃げ出してもおかしく無い光景。だがそんなのを前にしても物怖じせず、ゴクゴクと喉を鳴らしながら、盃に注がれていた琥珀色の液体を流し込む人物が一人。


「……―――ふぅ」


 一気に呷り空になった盃をバッと投げ捨て、もう既に目の前にまでやってきていた魔獣の大群をやっと見た。

 次の瞬間、残像すら残さない速度で紅鶴(こうかく)の長く美しい足が顔につきそうになるまで上げ切ると、音を置き去りにし、踵が大地を粉砕した。

 半径50メートルの地面が断割し、その範囲にいた魔獣たちは死地面が凹んだことにより、三秒間の滞空時間が生まれてしまった。

 もちろん紅鶴はそれを見逃さない、すぐに姿勢を変え足を横に薙ぎ払う。

 すると一拍遅れて魔獣の身体が弾け飛んで行った。

 そのたった二回の攻撃のみで恐らく、50以上の魔獣が一瞬にして肉塊となってしまった。

 先陣を切った魔獣たちの悲惨な末路に、後続の魔獣達は石像のように固まっていた。


「……逃げるなよ?」


 ギラッと固まる魔獣達を睨め付け、紅鶴が一歩前に出た瞬間に、魔獣達は一斉に動いた。

 死を覚悟して立ち向かう勇敢な魔獣や一目散に背中を向け逃げ出してしまう魔獣、怯え隠れることしかできない魔獣。様々な違いがあった。

 立ち向かう勇敢な魔獣は少なく、逃げ出す魔獣のが多い。


(思ったよりも逃げやがるな)


 戦場を一目見て、立ち向かうために残った魔獣の数と逃げ出した魔獣の数を見比べる。

 残ったのは90程度、逃げたのは250程度。隠れているのは50ほど。

 パッと見だけでも分かるくらいには逃げ出していた。

さぁ、相手してやるよ。……勇敢な獣共ッ!」

 二ッと、格上と悟りつつも立ち向かってくる魔獣達に笑みを浮かべる。

 戦意を喪失していない勇敢なる愚か者達を誅する。

 長く細くしなやかな脚から繰り出される一撃は全てのものを破砕させる。逆を言えば一発で死ねるのだ、とても慈悲深い攻撃だ。

 魔獣達の咆哮を受け止めながら紅鶴は足技を繰り出すのだった―――。

 ―――ドドドと地響きが向かってくる。

 獣道を魔獣の大群が横切った後、道の両端の端っこにある茂みで待機していた防衛隊の人々は隙間なく並び立ち、やってくる魔獣達を逃さないよう包囲網を築いていた。

 草木が鬱蒼としている暗い森林に溶け込めれるよう、防衛隊の人々は暗い色の布を被っていた。

 故に魔獣たちは、なんの疑いもなく強大な敵から逃れるために走る。


「―――今だ‼︎」


 防衛隊の人の掛け声と共に地面に魔法陣が浮かび上がった。そして次の瞬間、無数の炎柱が生み出される。

 その炎柱は魔獣の胴を貫き、木よりも高く伸びた。

 間髪入れずに、防衛隊の人々は剣を抜き放ち雄叫びと共に撃ち漏らしの魔獣へと襲い掛かった。


「一匹も逃すなっ‼︎」


 隊長格の男がそう指示を飛ばし、防衛隊はその通りに次々と魔獣を切り倒していった。


「魔法隊!」

「結界、展開します‼︎」


 先ほどの地面の魔法陣よりもさらに大きい魔法陣が展開され、瞬きをした次の瞬間には視界は一変していた。

 ドーム状の結界の中、結界の色と同じく目の前は淡い緑色に包まれていた。

 半径100メートルほどの結界。逃げ出そうとする魔獣を絶対に逃さない牢獄だ。


「……出遅れた」


 そんな戦場の中、目の前の結界をジーッと見ながらボソッと独白する。

 紅鶴の戦闘に釘付けになっていたために、逃げてくる魔獣へ一斉に攻撃する手筈だったのにも関わらず出遅れてしまったのだ。

 (しゅう)はきっちりと防衛隊と共に戦闘に参加している。

 というよりも、出遅れたのは自分一人だけで、他の皆はちゃんと戦闘に参加できているっぽかった。

 紅鶴から期待されていたと言うのに、まさか、戦闘すらできずに終わるとは……。


「ん〜でも、本当に凄い……」


 悪いとは思っているものの、その罪悪感を上回するほどに紅鶴の動きは素晴らしかったのだ。

 音速を超える踵落としや、しなる鞭のように脚を振るう技など、どのようにしてそんな芸当ができるのか非常に気になるところだった。


「緋月さんなら出来るかな?」


 思い起こされるのは身近にいる最強の姿。

 だがあの身体では無理だろう。

 低身長が故に紅鶴のように足技を使うことができないと確信できてしまうからだ。


「……よしっ。私は結界の周りをウロウロしておこう! もしかしたら逃げ出してるかもだしね!」


 何もしてないわけじゃないと言う、体裁を守るためにグッと決意し、ナイフを手にしながら結界の周り歩き始めるのだった。

読んで頂きありがとうございます!!

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