十三話 作戦開始
すみません、昨日は投稿できませんでした。なので、今回の分と合せての投稿となります!
臨戦体制の防衛隊の人々や私たちの顔を確認した紅鶴はこほんと咳払いした。
視線が紅鶴に集中したのを確認し、ジェスチャーで作戦図を持ってこさせ、それを机の上に広げた。
「……よく集まってくれた。此度の戦はちときな臭い、だか、今回は作戦ありきで戦う」
後ろは見えないが、後々確認すればいいこと。
今は紅鶴の話を聞くことが重要だ。
「守備隊の話では、魔獣共は一点集中で攻め込んでくるらしい。我々はそれを迎え撃ち、包囲殲滅する! いいか! 魔獣は一匹も生かして帰すな‼︎」
紅鶴のその命令に防衛隊の人々は天を震わせるかのような雄叫びで返した―――。
―――作戦の確認を行いに机に近寄った時だった。
ガシッと背後から首に腕をかけられた。驚きながら頭だけバッと振り返ると、そこには、盃に口つけながらニコニコと笑みを浮かべる紅鶴がいた。
「こ、紅鶴さん……?」
「頼りにしてるぜ」
「えぇっと、何を?」
「活躍と……アイツらのことだ」
ビシッと親指で、竜胆達を指し示す。
なるほど! と首肯し、言われるまでもありませんよと胸を張ってみせると、紅鶴は嬉しさの混じった笑顔で笑ってくれた。
「おしっ、そんじゃ行くか‼︎」
「え?」
私まだ作戦知らない、というよりも早く周りの防衛隊の人々の雄叫びが上がる方が早く、自分の声は微かな囀りとしてしか処理されなかった。
無念にも届かなかった声、ずるずると、首に腕を回されたまま戦場へと連れて行かれてしまうのだった。
「ちょっとぉ〜〜〜⁉︎」
悲鳴じみた声をあげながらも、されるがままに連れ去られた。
ザッザッザッと一歩、また一歩と歩くたびに葉が音を立ててしまうほど鬱蒼とした森林で、しゃがみながら辺りの警戒を行っていた。
目の前には少し広い獣道があり、そこを挟む形で、反対側にも人が配置されていた。
作戦図を確認できなかったために、これから何をやろうとしているのか不明だが、重々しい空気が場を支配していた。
「う〜森林の中だから暑くはないけど……湿度高いなぁ……」
汗をかいても直ぐに乾かないために、なかなかにもわっとしていた。
が自分の戦闘服は背中側には何もないので、涼しい方である。のだが、要所要所にある生成した防具。
特に胸当ては熱がこもり汗でじわじわしており、非常に嫌な感じだった。
「ここは忍耐強く待ちましょう!」
手をパタパタと振り団扇代わりに扇いでいると、隣で同じくしゃがみながら待機していた律が、拳をぎゅっと握りしめてガッツをくれる。
頰を紅潮させて、額から汗をダラダラと流しながら。
「だ、大丈夫……? 熱中症は気を付けてね……?」
「―――ッ‼︎⁉︎??」
ボッ! と音が聞こえそうなほどに顔が赤くなった律はパタンと倒れてしまった。
「……え。り、律ー⁉︎」
突然のことに唖然としてしまい、何が何だか状態でもとりあえず容体を確認する。
何かの攻撃か、はたまた未知の病気か⁉︎ と案じながら確認し終えると、
「ねっ、ちゅうしよう……だなんて」
ただの気絶だと分かった上、どうやら律の勘違いのようだった。
「んなベタな……」
そっと地面に横にしてあげ、自分は警戒に戻るのだった。
そんな時だったガサっと背後に茂みが蠢いた。
「っ!」
振り返り警戒しておると、ひょいっと見覚えのある顔が飛び出してくるのだった。
その顔は地面に寝っ転がっている律を見てから、こちら側に目を合わせてくると、茂みの中から飛び出す。
そして、
「何をしとるんじゃお主らは」
やれやれと、何か誤解してる気がする態度で鬼丸は嘆息してくる。
そんな鬼丸にムッと頰を膨らませてみせると、鬼丸は「な、なんじゃ」と困惑した。
「私のせいじゃないよ、それに何もしてないからね!」
「……完全に事後じゃろ」
汗だくで地面に倒れ気絶している律と、汗をダラダラと流す自分。内心、この状況を俯瞰してみると、確かに? とどこか納得してしまいそうになる自分がいた。
「……はぁ。律が暑そうなのを我慢してたから、熱中症には気を付けてねって言ったんだけど」
パッと『創造』にてハンカチほどのタオルを造り、ポーチから水筒を取り出し、中の冷たい水を染み込ませる。
そして綺麗に折りたたみ、律のおでこの大きさとピッタリにしてあげて、そっと置いてあげた。
「そしたら律が聞き間違えたってか……この世界にあるのかな熱中症って?」
「あー大体察したのじゃ。皆まで言わなくてよい……」
話を聞いておる最中は首を傾げていたというのに、熱中症という単語が出てきた途端に全てを察したかのような顔で、ぷいぷいと手を振る鬼丸。
直ぐに伝わるのなら聞く必要なくない? とムスッと再び頰を膨らませてやった。
「じゃが、この阿呆はどうする気じゃ? 戦闘が始まって乱戦にでもなったらペチャンコになってしまうがの」
「あー確かにどうしよう……」
直ぐに目覚める気配は、ない。きゅ〜っと言いながら気絶している。
「木に吊るしておくか!」
「絵面が大変なことになるよっ、それ‼︎」
鬼丸の提案は即却下。というか採用するわけがない。
ここは青木樹海にするわけには行かないのだ。
「鬼丸、悪いけどさっきの場所に連れて行ってあげて?」
「ムッ、わしゃ小間使いじゃなのじゃぞ?」
致し方ないが律には戦線離脱してもらうことにした。
いくらなんでも熱中症を聞き間違えただけで気絶するなんてありえない、もしかしたらすでに熱中症なのかもしれないからだ。
そんな考えを長々と伝えれるか分からないから、すっ飛ばして頼んだが、鬼丸にもプライドと言うものがある、そう簡単にほいほいと安請け合いはしてくれないようだった。
「分かってる。……それにこれはパーティーの仲間としてのお願いだよ」
「……まったく、毎度こういう時にだけその顔をしおって。ずるいのう、お主は」
時間がないことは鬼丸も理解しているのか、渋々と言う顔で頼みを聞き入れてくれた。
そして律を背負い戻ろうとする鬼丸の背中に、
「よく言われる」
「はっ!」
そんな言葉を鬼丸は笑い飛ばすのだった。
それから少し経った頃だった。
警戒していた獣道を影が通った。
それは防衛隊の人だった。だが、その身体はボロボロで、怪我だらけだ。
直ぐに飛び出して助けようと思った直後、ガシッと小さな手で肩を強く掴まれた。
「っ⁉︎」
「何をする気ですかッ‼︎」
振り返るとそこには辟易した顔の柊が居た。
「何って、助けようと!」
「あなた、作戦を確認してないんですか⁉︎」
こちらの言葉に柊はありえないという気持ちが籠った声で、そう言ってきた。
うっ、と弁明したくてもどう弁明していいのか分からないことに黙りしていると、柊が肩から手を離した。
「まったく、そんなので英雄だなんて……笑わせないで下さいっ」
「……ぅ、ご、ごめんなさい」
口調は厳しいが確かにその通りだ。
あの場できちんと言えたら確認できたのだから。
「あの、それでなんであの人を助けちゃダメなの?」
「……彼は囮役です。あの人の血を追いかけてきた魔獣を、総隊長が蹴散らすんです」
「なるほど……え、じゃあ私たちはなんのために……?」
「……あなた」
説明を受け当然出る疑問をついついぽろっと口から溢してしまった、その溢れた言葉を聞いた柊は、内心ブチギレそうな感じでため息を吐いた。
そして近くの木の枝を取り、地面に図を書いてくれた。
柊の方向から見て伸びているこの二本の線がこの獣道、そしてその獣道を塞ぐような円弧が防壁だ。
「防壁手前で総隊長が蹴散らしますが、魔獣も馬鹿ではありせん。数匹やられた所で反撃にでます、ですが総隊長は魔獣なんかには倒せません。なので、次はバラバラに逃げ出すのです」
おぉ……っと自然とわかりやすい説明に声が漏れてしまった。柊が枝を持ち直し、図で説明を続けてくれる。
「……バラバラに逃げ出そうとする魔獣ですが、私達が直ぐに包囲することで逃さずに、殲滅するんです」
「なるほど、紅鶴さんが言ってたのはそう言うこと……」
包囲殲滅とは言っていたが、具体的には作戦図を見るしかないことだったらしい。
だが作戦はバッチリだ。
「ありがとう、柊ちゃん!」
「……いえ。あなたがミスをしてしまうと、他の人に迷惑が掛かるから教えただけですっ」
「だとしてもだよ、ありがとう」
未だツンケンな態度は変わらず、プイッとそっぽを向いてそう言ってくる柊。
その姿を見て、ハッと気が付いた。
(この子意外と堕ちそう……?)
今のはツンデレキャラの王道ちょいデレ。
数多のアニメを見てきたのだから分かるに決まっている。
「……頑張ろうね!」
精一杯の笑顔と共に、作戦の成功を祈って、そう声をかけると柊はこちらを向いてきて、
「なんですか、急に。頑張らない、なんて選択肢ないんですよ? だから頑張ろうね、じゃなくて頑張るでいいですよ」
「……」
すぐに獣道へと顔を向けてしまった。
(あ、何にも進展してないやつだぜ、これ)
少しは改善されているのかと考えた自分が馬鹿だったと、内心猛省しつつ、ちょちょ切れる涙を人差し指で拭い払うのだった。
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