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十二話 素直に

遅れてしまい、すみません!

「―――へぇ、お姉ちゃんの好きな食べ物ねぇ」


 若葉(わかば)と話していたことと、自分が何をしようとしているかを説明し、協力を申し出た結果、菜葉(なのは)は一言返事で快諾してくれた。

 その上で、好きな食べ物について話を聞いていた。


「若葉も言ってたように、竜胆(りの)お姉ちゃんと……ママの作った食べ物しかないねー」

「や、やっぱりダメか……」


 ダメ元だったが、やはりダメらしい。

 胃袋鷲掴み作戦は頓挫してしまった。

 ならばと、他にはどんな手があるか? 腕を組み、ん〜と脳みそをフル回転させた。


「……好きな遊びとか?」

「お姉ちゃんの好きな遊びね〜」


 藁にもすがる思いで提案すると、今度は菜葉が、ん〜と脳みそフル回転させるのだった。

 遊びならば、食べ物よりも効果は薄れるものの、時間をかければ打ち解けれるかもしれない。

 そう祈り続けていると、


「お姉ちゃんが遊んでるところ、見たことな〜い」

「……」

 祈りは儚く潰えてしまった。

「そ、そんなに落ち込むこと……?」

「落ちこむこと、なんだよ……」


 机に突っ伏し嘆息する。

 希望すら潰えてしまった今、どうすれば良いのか。

 あの子を救うために、どうをするべきか。

 何ができるというのか。選択肢は綺麗に潰されていった。


「あの子と、どうすれば仲良く……」


 足りない、脳みそをもっとフル回転させて、いい案を見つけ出すほかない。

 ピンチな時にカッコよく登場は偶然だったが、すでに一度出来ている。あとは共闘など。

 その二つはできているものの、他のは全て出来ていない。というか綺麗に潰されたのだ。

 こうなれば戦闘時に親交を深めるべきなのか? と考え始めた時だった。

 菜葉が机をトントンと指で叩き、視線を向けさせられた。

 そして首を傾げていると、


「お姉ちゃんは、素直の人が好きだから。だから、素直に接してれば心を開いてくれるかも?」

 そんな単純なことを教えてくれた。


 単純だ、単純過ぎるが故にすぐに出てこなかったものだ。


「……なるほど、いや、確かにその通りだね」

 だが問題点が一つある。

「……んぅ、避けられてるんだよなあ、私」


 そう、あからさまに避けられていることだ。

 そのことには菜葉も苦笑いでそうだったと、呟いた。


「まぁ、その辺はあたしがフォローしてあげるよ?」


 くふふと笑いながら優しい提案をしてくれる菜葉に泣きながら抱きついてしまいそうになってしまった。

 と、そんな風に話が纏まりつつあった時だった。

 耳を劈かんばかりの、轟音とも言えるほどの警報が鳴り響いた―――。




『―――緊急警報っ。緊急警報‼︎ 至急、戦闘員は西側防衛壁に急行して下さい!』


 繰り返します、という声の後には同じ内容の言葉が発せられた。

 先ほどまで家の中にいたが、今は家を出て走っていた。

 眠っていた若葉を菜葉がおんぶしながら、西側防衛壁とやらまで全速力で向かった。

 警報の声からして非常事態なのは察せれる。

 だが、その非常事態がどれほどのものなのかはさっぱりだ。


「全くっ、昨日の今日で……!」


 若葉をおんぶしながらも、自分と変わらない速度で走りながら襲撃者を恨む菜葉には、苦笑しか浮かばない。

 さすがは鬼だ、と思った。


「魔獣はこっちの都合とか考えてくれないからね」


 菜葉の怒りはどうしようもない。知性がない獣に、どちらかというと都合を求める方が間違っている。

 が酒呑(しゅてん)から話されたように、魔獣を操っている者がいるかもしれないのだ。

 その場合、その人物は何を狙っているのか。

 連続で魔獣と戦わせて戦力を削いでいるのか? だがこちらの被害はいつも軽微に終わっている。

 ただいたずらに魔獣を消費していくだけのことだ。

 どうにも、劣勢だった魔獣の軍勢を率いて鬼族相手にここまで追い詰めた人物の取る行動とは思えない。

 何か、他の理由があるのか……。と考えいたら、あっという間に着いてしまった。


「……わっ、人がいっぱい……」


 目的地には臨戦体制の人々が紅鶴を中心にし円形に集まっていた。

 その中には竜胆や律、五十鈴や椿、鬼丸の姿もあった。

 そして(しゅう)の姿も。


「……って、竜胆達は武器持ってなくない!? どうするつもりなの……っ?」


 ふと、姉妹達が家の玄関に巨大な武器達を立て掛けていたことを思い出した。

 そして、見事に丸腰の竜胆や柊や椿。

 流石の鬼族でも丸腰で魔獣を相手にするのは厳しいだろう。そんな思いから菜葉にそう疑問をぶつけると、


「平気平気……っ、ほら」


 菜葉は手っ取り早く実例を見せてくれた。

 ほーん、と詳しくはわからないが大体は理解した。


「じゃあ平気か」


 納得して自分も武器を創造し、お次は戦闘服に魔力を注ぎ込み装備を生成させる。


「……お姉さんの方がどうかと思うけど」


 そんな姿を見ていた菜葉は顔を顰めながらそう言うのだった。

 ホルスターに銃をしまい、ナイフも鞘にしまう。

 一瞬にして臨戦状態となった。

 準備万端の状態で二人は、紅鶴の側へと向かうのだった―――。

読んで頂きありがとうございます!!

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