十一話 みたらし団子って美味しいよね
だいぶ遅れちゃいました、すみません!
―――スヤスヤと背中で寝息を立てながら、気持ち良さそうに眠りにつく若葉を肩越しに見る。
あの花畑の前から移動して、今はもう家の前だ。
「よしょっと」
両手は塞がっているため、行儀悪いかもしれないが足で戸を開ける。
幸いなことに押し戸ではなく引き戸なため、片足でも開けることが可能なのだ。
そのまま玄関の中に入り、振り返ることなく足だけでと戸を閉める。
そのまま布団に寝かせに行こうと、靴を脱いで上がろうとした時だった。
「―――あっれ〜ぇ? お姉さんだぁ、どこ行ってたの〜? ……くふふ」
ピシャッと戸を開けて菜葉が入ってきたのだ。
「ぴっ⁉︎」とかいう変な声と共に身体を跳ねさせたために、どえらいビックリしたということが伝わってしまっているだろう。
その証拠に後ろから「くふふ」という笑い声が聞こえてきているのだから。
「えと、花畑が見える丘? かな」
「……あぁ、あそこ。くふふ、この里一番の絶景だけど〜どうだったぁ〜?」
背中に背負っている若葉のことをポンポンと優しく叩きながら菜葉は、くふふ顔で感想を尋ねてくる。
感想。あの場所にいて思ったこと……。
「すごく落ち着いたかな……。なんか……すごく長閑で、良い香りもして、心が安らぐ感じだったかな」
顎に人差し指を当てながら、あの場所で感じたことを述べてると、菜葉はどこか嬉しそうな笑みを浮かべた。
首を傾げてどうしたのか聞こうとした時、からだが軽くなった。
「はぇ」
軽くなったのはおんぶしていた若葉が居なくなっていたからだ。若葉の行方を探そうと視線を前に戻すと、そこには若葉を軽々と抱っこしながら先に行く菜葉の姿があった。
「……。あ、温もりが消えたからちょっと寒い」
おんぶしていた若葉の体温が徐々に消えていき、夏なのに涼しいこの里の隙間風が背中を撫でてくる。
避暑地なのかな〜と思いながら、靴を脱ぎ、家に上がるのだった。
はぁ〜と自身の着ている服にため息をつき、リビングへと向かうのだった。
残念なことに、葛葉の服はどこであろうと背中は隠されることがないのだ―――。
―――リビングは静かで誰もいない。帰って来たは良いものの、することがないことに気が付く。
あるにはあるが、今出来ることは何一つない。
「……せめて、好きな食べ物があったらなぁ〜」
個であって欲しかった好きな食べ物。
残念なことだが一括りで好きなのだから仕方ない。
ほぇ〜っと座卓に突っ伏し嘆いていると、
「好きな食べ物はぁ〜、草団子かな〜」
正面から聞こえて来た声に、ゆっくりと顔を上げると、菜葉がくふふと笑いながら眺めて来ていた。
いつの間に? いつからここに居たの? だとか聞きたいことはごまんとあったが、グッと堪え言葉を飲み込んで、起き上がり姿勢を正す。
「私はみたらし団子」
「へぇ、お姉さんってば大人だね」
「そ、そう?」
みたらし団子に大人なイメージはないのだが、と考えていた時、ハッと思い出した。
昔のみたらし団子と今のみたらし団子では味が全く違うと言うことを。
今のみたらし団子は醤油、みりん、黒砂糖などを混ぜて甘辛いタレを絡めているものが多いが、昔のみたらし団子は餅を焼いて醤油を塗っただけの素朴な味の物が多かったらしい。
今のみたらし団子は第二次世界大戦後に生まれたらしい。
「もしかして、みたらし団子って……」
「ん〜?」
「甘い?」
「……? 甘いわけなくな〜い?」
しゅん……と少し悲しい気持ちになりながらも、じゃあとみたらし団子から草団子へと浮気するのだった。
実際には食べる機会がそうそうないため、素朴な味の方のみたらし団子は食べたことがないが、食べたことのある草団子に行ってしまうのは仕方がないってやつではないだろうか。
「……って、これ何の話?」
「好きな食べ物についてじゃなかったの?」
なんか違和感を感じ菜葉に尋ねて、あぁそうだったと思い出した。
好きな食べ物の話だった。みたらし団子のお話ではなかった……。
「え、えっとー菜葉ちゃんは……」
「―――菜葉。お姉さん、屁っ放り腰すぎ〜、そんなんであたし達のママになるって本気〜?」
ゔっとその口調で正論を言われると、だいぶ心にダメージが来るとは知らなかった。
胸を抑えながら心臓麻痺のように倒れる姿を、頬を杖をしながら見ていた菜葉はくふふと笑いながら「雑魚すぎ♡」と呟くのだった。
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