五話 お邪魔虫
昨日は申し訳ないです!
少し混み合ったことがありまして……。
明日は気まぐれに投稿するかもしれません。一話分は絶対に投稿します、もしかしたら何話分かもって感じです!
ドアをノックし数秒待つと、スタタタっという音がしてからドアが開いた。
「あ、葛葉さん!」
顔をひょこっと出した律は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
そして両方の顔を一瞥して数瞬の思考の後、
「あのぅ、どうかしました……?」
困惑しながら笑いかけてくる。
そんな律に早速説明を始めるのだった―――。
「―――ここがですか……」
荷物を地面に置き、目の前にある建物を見上げる律の背を眺めながら、五十鈴から荷物を受け取る。
目の前にあるのは楼閣の次くらいには大きい豪邸と言える代物の建物だった。
全体的に白と紅葉色で彩られた外観に、敷地内に咲く紅葉が葉を風に乗せ落とす。
積み重なった紅葉がより一層、その建物を彩る。
「ふむ、客人をもてなすに相応しい邸宅じゃ」
これには流石の鬼丸も納得の様子だった。
「葛葉様、傷などは大丈夫ですか?」
「うん、平気平気。それにあっても気にしないよ、そのための物なんだし。ありがとね」
全員分の荷物を運んでくれた五十鈴の頭を撫で、ふと先に走り出していく鬼丸を見つけ慌てて捕まえにいく。
何をしでかすかわかった物ではないからだ。
その後を五十鈴と律が並んで歩いてくる。
そしてそんな四人を出迎えてくれるのは、
「―――ようこそですわ!」
幼いながらも十二分な発育を感じさせる胸を思いっきり張った竜胆だった。
その隣には菜花も居て、二人の歓迎を受けながら建物の前へと並んだ。
二人が同時に玄関扉を開くと、前世でいう旅館のような立派な玄関が姿を露わにする。
わぁ〜っという律と鬼丸のそんな声が聞こえてくる。
隣の五十鈴も外観に相応しい玄関に、深く息を吸った。
「この家に〜ぃ、外の人を招くのは初めてなんだよぉ〜?」
嬉しそうに歓迎する竜胆とは違い、菜花はありがたく思えよと言うような顔で笑みを浮かべている。
そんな態度を意に返さず、鬼丸はズカズカと上がって勝手に進んでいってしまう。
あーもうっ、と急いでその後を追い掛け捕まえようとするも、すばしっこい鬼丸はそう簡単には捕まらない。
シュタタタっとちょこまかと逃げ回る鬼丸に嫌気がしてきた時だった、
「あれ〜? 英雄のお姉さんだぁ〜」
多分庭から戻ってきたであろう椿が、大鋏を持ちながら、百点万手の笑顔を浮かべながら駆け寄ってくる。が、切実に鋏だけは下ろして欲しいと目で訴えるも、伝わるわけがなく。
ひぃ〜っと心の中で怯えていると、
「いけませんわよ、椿! そんな物騒なものを持ち歩いては!」
五十鈴と律を連れて竜胆が居間に入ってくると同時に、大鋏を肩に担ぐ椿へとそう注意をする。
すると椿は「は〜い」と返事をして玄関の方へと行ってしまった。
「申し訳ございませんわ、英雄様。見ての通りの物騒な家で、私も持ち歩かないようには言ってますのに……」
そんな次女の苦悩に共感していると、
「……うんぅ〜……うるさい……」
猫のように丸まって寝ていた若葉がうんざり気にそう呟いた。
竜胆の顔を伺うが、竜胆もさぁ? というジェスチャーを浮かべるだけで、特には何かしようとはしていなかった。
「その子はいつもそんな調子ですわ。そっとしておくのが一番ですのよ」
そう言い残し、竜胆は早速部屋の案内をしてくれる様子だった。
が、その時、ふと五人姉妹のうち一人足りない気がして気がついた。
「あれ? お姉ちゃんは?」
「柊姉ですの? 言われれば、そういえばどこに……?」
こちらの質問に竜胆も答えられず、
「でも、平気ですのよ。私達の姉ですわよ!」
だが誇らしげにそう言うのだった―――。
―――わざとらしく踏み込みを強くし音を立てて廊下を行く姿を、何人かがジーッと見てくるが、それらは気にせず真っ直ぐと一つの部屋へ向かっていた。
「……っ」
部屋の前に立ち深呼吸してから一拍おき、コンコンとドアをノックする。
どうぞーっと言う、返事が返ってきたのを確認すると、ドアを開けて中に入るのだった。
まるで異次元のような内臓の部屋の真ん中、机の上で巻物の報告書を頬杖を付いて確認しているのは酒呑だ。
「何用じゃ? ……いかがしたかのう?」
部屋に入ってきた人物を一瞥し確認すると、不意を突かれたかのように目をぱちぱちとさせて、頬杖を解く。
机を挟んだだけの少しの距離、その短くも遠い距離で講義者としてやってきた人物―――柊はムスッとした顔で酒呑を見やった。
そんな柊に対して酒呑は息を呑み口から吐いて出る言葉を待った。
いっぱいある言いたいことを全部、一度整理してから柊はまず最初の文句を口した。
「どうしてあの人を、私たちの家に住まわせるんですかっ‼︎」
キッと目を鋭くさせて文句を言う柊に、酒呑は「まぁそうなるよね〜」と言いたそうな顔でその言葉を受け止めた。
「……ふむ、理由はいえん。じゃが、損ばかりではなないはずじゃぞ?」
「……? い、意味が分かりませんっ」
はぐらかす酒呑に、柊は疑問や疑念の入り混じった顔、声で返すが、酒呑は沈黙を選ぶ。
「……いずれ分かる。近いうちにじゃ」
が、このままでは全てが終わった後に色々と言われてしまうだろうと思い、助言にすらなってない助言を口にした。
柊は眉を顰めるが、どんなに考えても何も知らない柊には察することすら出来ない。
何かを知っていて、何かが起こるのを知っていて、それでもなお黙りな里長に、奥歯を噛み締め拳を強く握る。
何も知らない子供は道化のように操られていれば良いのかと、そんな憤りを感じつつも柊は怒りを抑え込み、プイッと不貞腐れるかのように部屋を後にするのだった。
バタンッと強くしまった扉を一頻り眺めてから、息を吐いた。
「……許しておくれ、何もかも隠している妾のことを」
身勝手なこととは承知の上で、聞こえるわけのない状態で、ボソッとそう呟いた。
今の今までの溜まっていたその思いを吐き出すように。
実の祖母だと伝えていないことに罪悪感を感じながら。
楼閣を後にした柊は治らない怒りを発散するように、一歩一歩力強く踏みしめながら、自分たちの家―――今は邪魔者が多くいる家に帰っていた。
文字通りの鬼の形相で、ズカズカと歩いていると、
「―――どうかしたんですか、柊」
と横から声を掛けられた。
パッと顔をそちらへ向けると、そこにはケモ耳とモフモフ尻尾を持つ獣人の美少女。半分獣人の血、半分鬼の血を引くその美少女は、優しい微笑みを浮かべながらこちらを見てきている。
その姿を見た瞬間に、怒りが若干安らぎ、家にむけていた足をクルッと横に向けて少し小走りで近寄っていった。
「ッ? ど、どうしたんですかっ、柊!」
目の前までやってきたと思った柊が突如、ガッと抱きついてきたことに、獣人の美少女―――琥珀は、驚きと困惑など色んなものが混ざった顔でアワアワと戸惑っていた。
「……んっ」
ギュウっと力を込め更にに抱き付き、グリグリと顔を埋める。
「ほ、本当にどうしたんですかっ……⁉︎」
逃さないと言わんばかりに強く抱きしめられる身体、そして胸に強く激しく埋めてくる顔。
普通ならしないようなことを堂々とやってくる柊には、さらに困惑が積み重なっていく。
「甘えたい時なの……琥珀姉さん」
埋めていた顔を上げて、頬を染めて困惑している琥珀へそう答えるのだった―――。
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