一話 妹達
新章開幕です!
麻痺毒で動けなくなった柊を担ぎ、どうにか里の中へ帰ってくると、酒呑と鬼丸が出迎えてくれた。
「あ、鬼丸」
「あ、じゃないわ。完全に忘れとったじゃろ!?」
戦う前は急いでて一応チラ見はしたものの、戦闘中は完全に頭の中から抜け落ちていた。
「英雄殿、助太刀感謝する。柊のこともじゃ」
「あぁ、はい。今は……毒の影響か寝ちゃってますけどね」
背中で寝息を立てる柊を見つめる酒呑に、たははと笑みを向けた。
担いだばっかの時は戦ってる時ほどじゃないが少しは口撃してきていたものの、次第に口数が減っていき、いつの間にか完全に寝てしまっていた。
「毒?」
ふと酒呑が眉をひそめ、毒という単語に反応を示した。
え? と毒持ちのモンスターは今までいなかったのかと首を傾げると、酒呑は顎に手を当てて考え始めた。
「ここにきて新手とな……」
沈痛な面持ちで呟き、ムムムッと深く考える酒呑。
それを眺めているとサササッと移動してきた鬼丸が耳打ちしてきた。
「ちっとばかし話があるのじゃが……。この後は空いてるか?」
「話? ここじゃできない―――むぐっ」
囁くように耳打ちしてきた鬼丸とは違い、普通のいつものトーンで疑問を口にすると、鬼丸が慌てて口を塞いできた。
両手で強引に塞がれてしまった口で、むぐむぐと呻き続けていると、鬼丸は自分の口に人差し指を当ててシーッ! とジェスチャーしてくる。
そんなに普通のトーンじゃダメなのか、と目を細め酒呑を見た。
おおかた、あの話だろうと察していた時だった。
「―――葛葉さ〜ん‼︎」
横から律の声が聞こえた気がした。
鬼丸と一緒にその声の方へ視線を向けると、ゾロゾロと律や五十鈴、そして柊の妹達もやってきていたのだ。
「わぁ、すっごい大所帯……」
その光景を目にし、出た言葉はそんなものだった―――。
―――場所を移し、未だ眠っている柊を寝かして一行は戦闘後の休憩に入っていた。
「―――私は、次女の竜胆と言いますわ! 以後お見知りおきを」
とそんな休憩中、自己紹介をしようかという空気になり、早速トップバッターで竜胆がしてくれた。
ふふん! とドヤ顔で名を名乗ったのを律はパチパチと拍手していた。
そんな律に竜胆は「分かっているわね‼︎」と言わんばかりに親指を立てた。
そして次に名を名乗るのは真紅の髪色をしているわんぱくな三女だ。
「椿は〜、椿っ! よろしく〜!」
ジャキンジャキンと大鋏で音を鳴らしつつ、名乗った椿に今回は律も若干引いていた。
「ねねぇ〜、英雄のお姉さん〜」
とそんな時、シュタタッとこちらにやってきては膝に手を置き、上目遣いでジーッと顔を見てくる。
完璧に油断していたためか、「ど、どしたの?」と少し言葉が詰まってしまった。
「お姉さんの手〜、綺麗〜。欲しいなぁ〜」
「……」
大鋏を鳴らした後に言うセリフにしては怖すぎる言葉に、その場の全員が凍りつくように固まった。
「椿、いけませんわよ」
コンっと優しい拳骨が繰り出され、椿が「いたた〜」と痛がっている隙に竜胆がずるずると引きずっていった。
ちゃんとお姉ちゃんしてるなぁ。と思っていると四女が前に立つ。
「あたしは〜、菜花ちゃんだよ〜。英雄のお姉さん、よろしくね〜」
と生意気そうな笑みと身振り手振りで名乗ったのは四女の菜花だ。
スタスタと歩いてきて、目の前までくるとジーッと見てきてはくふふと笑って去って行ってしまった。
なるほど、と理解していると最後になってしまった。
お次は五女の番だ。
「……」
が待てども起きる気配はなく、すやすやと寝息を立てている。それから数十秒経ち、ぱちっと目が覚めたかと思うとすぐにまた寝てしまった。
「仕方ありせんわね……」
そんな五女のことを嘆息しつつ竜胆が起こすのだった。
「ほら、起きなさい」
身体を揺らし、ペシペシと頬を叩き、最後にデコピンで力一杯溜めたのを繰り出した。
ドバンッとデコピンで鳴って言い訳がない音が鳴り響いた。
「……ん、んー。……なに」
すると額を抑えながら五女は薄く細く目を開いた。
だが今にも眠ってしまいそうだ。
「自己紹介ですのよ、早く名乗りなさいな」
「……んぅ、わかった」
竜胆に言われ五女はテクテクと今にも倒れそうな足取りで前にやってくると、ジッとこちらの顔を見てから、
「……若葉、……よろしく」
そう短くいいバタンと倒れてしまった。
律が「えぇ!?」と驚き、五十鈴がなぜか菜花を見る。竜胆や菜花はやれやれと呆れていて、椿はもやは眼中になかった。
そんな中、大丈夫と声を掛けながら身体を起こすと、
「……んぅ、いい匂い」
と寝たと思っていた若葉が抱きついてきたのだった。
急に起きたため、うわひゃっと今まで出たことのないような声が出てしまい、かぁ〜っと顔が赤くなってしまう。
そんな反応に対してみんなの反応はさまざまだった。
「こら! 若葉、驚かせてはいけませんわよ!!」
「へぇ〜可愛い」
「おぉ〜もっかいやって〜」
と他の姉妹たちはそんなふうに反応して、
「葛葉様、ご無事ですか?」
「葛葉さんっ……!」
「ほぇ〜」
五十鈴は心配してくれて、律はときめいていて、鬼丸は惚けていた。
「……わ、忘れてっ!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるものの、それを引き起こした本人は強く抱きついたまま眠ってしまっていた―――。
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