六話 ケリ付けれてるの? これ
鳥の囀りが未だ目覚めていない静かな街に響き、人っこ一人居ない通り道、ギルドの前に立つ【英雄】パーティーの一行だけ浮いていた。
完全武装の四人の前に立ち、葉加瀬は全員の顔を一瞥する。覚悟が決まっている、凛とした顔を。
「……あっちについた瞬間、何があるか分からない。気を付けて」
葉加瀬は優しい目と声で、祈るように言ってくる。
「大丈夫ですよ、危なくなったら鬼丸がどうにかしてくれますから!」
「なんじゃと!?」
そんな葉加瀬に対して、茶化すわけではないが気が軽くなる一言を口にする。
クスクスと全員が笑い、緊迫した雰囲気が解消される。
そして葉加瀬の後ろにいた緋月が姿を見せると、
「葛っちゃん。きちんと、帰ってきてね」
切実に、葉加瀬よりももっと祈るような声色で言ってくる。せっかく雰囲気をよくしたのに、と思いつつ、不安そうな緋月の手を取って、
「当然です。絶対に帰ってきます、約束しますね!」
精一杯の言葉を口にした。すると緋月は少しだけでも安心したのか、ほっと不安そうな顔が明るくなった。
「君を信じるよ」
ぎゅっと自然と抱きついてきては顔をぐりぐりと、こちらのお腹に当ててくる。
昨日の夜もしたのに、と思う反面、仕方ないなぁと抱き返すと嬉しそうにさらに顔を押し付けてくるのだった。
そんな二人の姿を鬼丸はジーッと目ん玉が飛び出しそうなほどに見つめていた。
そして隣に居た律の脇腹を肘でトントンと叩いた。
「おい、どうなっておる。何をしとるんじゃあれは!」
大声を上げたいが、何がどうなってるのかを知るためにボリュームを落として律に訊くと、
「え、えと。私にも分からないんですけどぉ……多分、あの時のことだと思います……?」
「あー、あれか。全く、浮つきおって……」
ブーッと膨れっ面で抱きつき合う二人を一度睨め付け、鬼丸は腕を組みそっぽを向くのだった。
しばらくして緋月が落ち着いたの見計らい、早速葉加瀬が転移の作業に移った。
自分達を余裕で囲い足下で光を放つ魔法陣。
次第に光は強くなっていき、全身を覆うのだった―――。
葛葉達が転移した後、残された緋月と葉加瀬は光が消えていった空を見上げていた。
「行っちゃったね」
「……」
緋月のその残念そうな声に静かに顔を頷かせる。
「緋月」
そんな緋月へ黙っていた、いや、言いたくなかった一言をあえて言うことにする。
深々と息を吸い、緋月を傷つける覚悟を決めて、いざ振り返り言おうとして、
「っ」
言葉を失った。
緋月の顔を見ただけで。だがそれだけが、言葉を失うには十二分な物だった。
乙女のようなその緋月の顔は。
真白だった視界が次第に色を取り戻していく。
風が吹いているのを感じる、田舎などの澄んだ空気が鼻腔をくすぐってくる。
瞬きを数回、目が正常になっていき、色を取り戻すと視界に飛び込んできたのは、一面真っ赤な紅葉だった。
「……ここが」
鬼族の里であり、国。『隠』の入り口。
紅葉に埋め尽くされた山林、だが確かに存在するのは何千もの往来の後が残る獣道だ。
「―――葛葉」
その光景に唖然としていると、背後から声を掛けられた。振り向けば警戒を強めている鬼丸の顔がそこにあった。
それは鬼丸だけでなく五十鈴もだった。
「血の匂いじゃ。……どうやらタイミングが悪いようじゃのう」
顰めっ面で鬼丸はそう言った。
鬼丸の言葉通りなら、早速自分達の力を使う場面だ。
律や五十鈴に目配せし、四人は森の中に入った。
鬼丸と共に行動を共にし、律には少し離れたところでこちらの援護を、五十鈴には先に行ってもらい、盾の役割をしてもらうのだ。
阿吽の呼吸で、四人はそれぞれやれることを行うのだった―――。
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