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三話 説明を聞かなければ!

「―――っ」


 両耳を手で覆っていたとしても頭蓋を通り越して、脳みそを揺らしてくる様な轟音と、怪物の歩く地響きの様な振動が地面を伝ってやってくる。

 ぎゅっと瞑っていた瞼を開き、無意識のうちに止めていた息を再開する。

 すると鼻腔を通って硝煙の匂いが脳に伝わる。目の前には伏せの状態で引き金を引いた後の律が固まっていた。

 その理由はなんと言っても、律の持っている銃が原因だった。

 12.7mm×99弾(.50BMG)などと言う弾を使い、戦車は無理でも軽装甲車両は破壊できる対物(アンチマテリアル)ライフル、バレットM82だからだ。

 この前の戦いでもかなり活躍していた、律はどうやら味を占めてしまった様だった。

 それ以来、律は葛葉と共に試射する様になった。


「あ、すっご。マジに当たってる……」

「ほ、本当ですか!?」


 双眼鏡で律が狙った的、現在立っている位置から役1.5キロメートル先の的に見事当てたのだ。

 流石の律のオールドランダーとて、対物ライフルを達人級に扱えるようにするには難しいと予想していたのが、見事に裏切られた。

 もはや恐ろしいとも思えるほどに。


「やっぱり凄いです、この武器は……。本当に、人が作ったんですか……?」


 律は目を丸くしながら訪ねてくる。

 無理もないだろう、と思った。誰もが思うに決まっている、威力が、姿が、何もかもが人の身に余る。

 葛葉の使うデザートイーグルも中々だが、バレットはそれを遥かに上回る。


「うん。人が」


 あくまでも対物ライフル。人に向けて撃つように設計されたわけではないはずだが、それは射手による。

 射手が人を狙えば、血と肉片の小さな花が咲くだろう。


「律、使い方は間違えないでね」

「……はいっ」


 律が人に向かって撃つ姿、それを想像しただけでも恐ろしい。

 その一心で懇願するように呟くと、律はいつものような朗らかで優しい笑顔を消し、怖いほどの真面目な顔で返事をする。

 そんな律の頭を、優しくそっと撫でようと手を伸ばした時、


「―――葛葉様っ‼︎」


 背後から声を掛けられる。


「五十鈴さん?」


 振り返るよりも早く、律の瞳に背後の人物が映った。

 懐疑的な目をする律、振り返り見てみると、そこには息を切らして立つ五十鈴の姿があった。

 普段の五十鈴からは到底考えられないような、肩で息をし歩く姿は少しふらついていた。

 慌てて近寄り身体を支えると、一瞬嬉しそうにほおを紅潮させたかのように見えたものの、すぐに要件を述べ始めた。


「葛葉様、至急ギルドへ。八重樫様が緊急の連絡だと、強張った顔で……」

「……」


 五十鈴の言葉に葛葉は顔を引き締めた。

 何かがあったのだと。それか超緊急の【英雄】の責務か。

 だがこの際に至っては正直どうでもいい。

 いち早く緋月の下に向かわなければならない。


「行こう」


 呟きを落とし二人の顔をみて、歩き出す。

 今度は何が待ち受けているのか。

 例えどんなものだったとしても、【英雄】としての責務を果たすと決意した今の自分に、行かないと言う選択肢は存在しない。

 即決しかありえないのだ―――。


 ギルドの受付前を素通りし、ギルドの中へ続く扉を潜り薄暗い廊下をしばらく歩くと階段へと到着する。

 階段を登っていき2階へと上がると、書類の山を抱え忙しなく動き回り切羽詰まった顔の職員たちの邪魔にならぬよう縮こまりながら歩き続けると、やっと到着するのはギルド長室だ。

 毎度毎度この部屋の前に立つと感じてしまう、重々しい扉が入室者へ威圧する、そんな感覚を。


「……私思うんですけど、なんか、ギルドの皆さんて、いつも忙しそうじゃないですか?」

「律だけじゃないよ、安心して。……休みとかあるのかねー?」


 扉の前に立ち、扉の重圧の前に沈黙が訪れ、その沈黙の空気をどうにかしようと律が絞り出した話題をする。

 同意見と肯定し、一拍おき二人に目配せをしてから扉をノックした。

 コンコンコンと軽快な音が鳴る。


「入っておいでー」


 扉の向こうから聞こえてくるのは緋月のではなく、葉加瀬の声だった。

 若干の気掛かりを感じながらもそっとドアノブに手を掛け、ギルド長室の中に入るのだった。

 扉を開けた瞬間にやってくるのは逆光で、三人は一斉に目を細めた。

 このギルド長室は扉の真ん前に普段緋月が座っている机や椅子などがあり、扉から部屋を見た時の左側に広がっている。

 応接のためのソファや、申し訳程度のインテリア。

 あとはコーヒーカップと魔導式全自動コーヒーポットが置いてある。


「―――いらっしゃい。そしめごめん、緋月のことは、怒らないでおいて」


 逆光に眼球を攻撃されている三人が、葉加瀬の声のする方に顔を向けると、


「……どうしたんですか、その人」


 そこにはカーペットの上で正座し、その膝の上に緋月の頭を乗せている葉加瀬が居た。

 要は膝枕してるのだ、葉加瀬が。


「根詰めていたから、今は燃え尽き中」


 ぷにぷにと緋月の柔肌ほっぺの感触を楽しみながら葉加瀬は説明してくれる。

 なるほどと、緋月でもそんなことがあり得るのかと、ちょっとした驚きを感じていると、


「緋月に代わって私が話そう」


 優しい微笑みだった葉加瀬の顔から笑みは消え失せ、ものすごく真剣な顔に様変わりした。

読んで頂きありがとうございます!!

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