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五十六人目
「ねぇ」
「なに?」
「なんで、食器洗ってないの?」
「へ?」
間抜けな声を上げる彼を私は蹴飛ばした。
「なんで、食器が洗われていないか聞いているの!」
我ながら理不尽だと思う。しかし、これは彼が望んだことなんだ。精一杯努めなければ。
「そんなこと言われても……」
「さっさとしなさいよ!このクズ!」
彼は私の素直じゃないところが好きと言ってくれた。ならば、素直であってはいけない。捻くれていなければ。
「調子にのるんじゃないわよ!クズ!」
彼の目は、昔とは違って輝いていないけれど。




