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二十八人目
人を殺した。
この国ではどうやら私は殺人犯ではないらしい。しかし、確かに私は人を殺したのだ。
罪のない人間を。
「お願いします。お金を貸してください」
フローリングに額を擦り付けて両親に許しを乞う。
「私はまだ、高校に通いたいんです」
1時間ひたすら頭を下げて、なんとかお金を貸してもらえた。もちろん、厳しい条件や罵倒もされたがお金さえ有ればどうでもいい。
「お前は、人殺しだ」
産婦人科に向かう最中、運転している父から急に出てきた言葉に私は耳を疑った。
「殺してないよ?」
「いいや、殺した。罪のない子供を」
嫌味かよ。
「嫌味?」
「人を殺した自覚を持て。これからのお前の手は常に血で汚れているんだぞ」
よく分からなかった。
だけど、なぜか私は涙を流した。




