第67話 校友
そろそろクラスメイトにスポットを当てていきます。
中間考査は当分始まりそうにありません。
一限の開始前、急遽俺たちは大講堂へ集められた。
恐らく現状起きていることを周知するような旨が話されるのだろう。
入学式と同様に着席し、学園長の登場を待つ。
みんな互いにお喋りしており、構内はざわついている。
「ねぇクロくん、中間考査が近いけど何か準備してる?」
隣のジュリエットから声がかかる。
ショートボブが映える、スポーティな印象の女子だ。
例に漏れず美少女である。
顔面レベルは男女ともに地球よりも数段も上だ。
はあ、悲しくなるな。
座学以外の授業では何かと出席番号順で並ばされることが多く、たまに話す機会もある。
ガッツリ話したことはないけども。
それに出席番号の前から二人ずつで組めと言われた時の相手は主にオリビアの方が多いしな。
「勉強はぼちぼちだとして、今は腕試しの相手探しの最中だな。
早いこと相手を決めないとヤバいんだよなぁ」
「私もまだなんだけど、そんなにヤバい感じ?」
このくだけた感じの話し方がクラスの男子に人気があるようだ。
そこそこ距離も近く話してくれるしな。
思わず勘違いしそうになるのも肯ける。
ジュリエットの出席番号一つ前のスヴェンなんて、緊張していつもどもっちゃってるしなぁ。
俺は普段からソフィアラを見てたから美少女には慣れた。
なんて贅沢なんだ俺は。
「ああ、俺も朝気づいたんだけど、早く決めて対策打たないと結果残せないんだよな」
「そっかぁ、私はそこまで考えてなかったなぁ。
クロくんたちのグループはいつも熱心だよね。
みんな羨ましがってるよ。
噂を聞いてると、今一番輝いてる人たちって感じ」
「毎日ギリギリで食らいつけてるかってどうかってだけで、羨ましいことも何もないぞ?
周りの五人が輝いてるだけだしな。
てか、そんな噂になってんのかよ。
やだなぁ」
「そうかなぁ。
私とかは入れただけで満足しちゃった感があるから、ずっと頑張れるのは凄いよ。
この間のアルベルタちゃんの模擬戦のクロくんもカッコ良かったし。
今助ける、ってね」
身体の動きまで忠実に再現して煽ってくる。
「おい、恥ずかしいからヤメロ」
本当に恥ずかしいんだからな。
「ええー、いいじゃない。
あれは今後もAクラスの伝説として永遠に語り継がれるよ。
あれ以降クロくんの人気急上昇中。
他のクラスの子も気になるって言ってたよ。
ねぇねぇ、嬉しくない?」
「嬉しくないと言えば嘘になるけど、俺はひっそり目立たずに生活したいんだよ」
「クロくん、入学式も含めて、その発言の真逆の行動しか取ってないけどねー。
てかクロくんさ、あんまり私の名前呼んでくれないよね」
「ああ、それな。
ジュリアーナのことジュリって呼んでるから、名前似てて呼びづらいんだと思う。
ジュリエット、これでいいか?」
「そゆことね。
いや、別に不満があるとかじゃなくて気になっただけだから大丈夫だよ。
私も家じゃ弟からジュリ姉ちゃんって呼ばれるし、そこまで変えようがないもんね。
ごめんね、気にしないで」
「でもまぁ、コミュニケーションの基本は名前を呼ぶところからだしな。
言ってくれてありがとう。
今後気をつけるわ」
「そーゆーとこ、クロくんはやっぱり大人だなぁ。
周りの男子なんて、ちゃんと聞き入れてくれないんだから困ったもんだよ」
「大人って言ってもそんなに変わんないだろ」
「変わるよぉ。
この年代で歳の差四つはでかいよ?」
「四つ?
五つじゃなくて?」
「私ね、去年一回ここ落ちちゃってるから、一つだけみんなより年上なの。
周りの子もちょっと気遣っちゃって、今じゃ少し慣れたけど、まだ敬語が抜けない子もいて困るよね。
同じ学年なんだから気にしないでいいのにね」
高等学園はその倍率の高さから浪人が存在する分、日本でいうところの大学に位置する感じなんだろうな。
「入っちまえばみんな同じだよな。
それで言えば、年上の俺にでも気さくに話しかけてくれるジュリエットはありがたい存在だぞ。
普通だったらこんな年上扱いづらいぞ?」
「クロくんはすごく話しかけやすいタイプだよ。
私のこれは、これが私のスタイルなんだって見せつけてる意味もあるんだけど、まだ届いてないみたいだね。
でも私は歳はあんまり気にならないんけど、爵位はちょっと気になっちゃうかなぁ。
ジュリアーナさんとか公爵家は、外では絶対こっちから話しかけたりできないし。
使い分けが難しいよねぇ」
「俺も平民だからそれこそ最初は気にしてたけど、校則で決まってるんだから仕方ないことにしてるわ。
今もジュリアーナさんって言ってたし、そうなんだなぁってのは分かるな」
「私はそこを克服しなくちゃね」
「そうだぞ、今度ジュリと喋ってみろ。
あいつも爵位は俺と天と地ほどの差があるけど、お高くとまってるようなタイプじゃないし、アルのこと呼んでるみたいにジュリアーナちゃんって呼んでみな。
多分喜ぶからよ」
「それは流石に緊張ものだよね。
でも分かった、今度言ってみる」
「そうしろ、そうしろ。
あとは、この学園は実力主義の方が強いし、それが階級意識を薄めてくれてるんだと思う。
俺はそれに結構助けられてる面が多い気がする。
入試の結果が出せてなかったら、ジュリとか話す機会もなかっただろうしな。
もちろんジュリエットもだけどな」
「そんなことないけどなぁ。
入試からそばで見てたし、私は変わらず話しかけてたと思うな。
それにしても入試も凄かったよね」
「おんなじグループだったのか。
すまん、気づかなかったわ」
「えー、ひっどーい。
私は一目見た時から、この男やるなって思ってたもん」
「え、どこを見たらそうなるんだよ」
「まず女連れって時点で浮いてたよ。
冷やかしかよ帰れ帰れ、ってあの時は思ってたよね。
受かりたい一心だったから、それは申し訳ないけど」
「そんな風に見られてたのか。
護衛役だからそれは仕方ないんだけどな」
「それは後から聞いて納得したよ。
でもあの場面だけだったら、みんなそう見えてもおかしくないって。
その後はアルベルタちゃんとイチャイチャし始めるし、スペデイレの人にも喧嘩売るし、どうなっちゃうのかって気になって見てたんだよ。
9割方この人死んだな、とは思ってたけどね」
「すげぇ見られてるな。
ということは現場にいた他のみんなも見てたってことか。
そりゃ浮くわな。
あと訂正だが、アルとイチャついた覚えはないぞ。
スペデイレのは、喧嘩を売ったというより買っただけだ。
何も悪いことはしていない、はずだ」
「はたから見れば、そうなんだって。
あとソフィアラちゃん可愛すぎ問題ね。
クロくんが連れてるのが私くらいパッとしない女だったら、やっかみもなかったんだろうけどね」
「やっかみまでされてんのかよ。
そうは言うが、ジュリエットも十分可愛いだろ。
男子の中で人気らしいぞ」
「ええー、うっそだぁ。
こんな喪女が?」
まさかジュリエットのレベルで自分のことを可愛くないって思ってるとはな。
そうなると地球の女子はどうなるんだっての。
「みんなジュリエットのこと好きだぞ。
男女ともに好かれるってのはなかなかできないぜ」
「なにそれ恥っずぅ。
今までモテたことなんてないんだからやめてよね。
それにクロくんの周りの女の子たちに比べたらどんな子も霞むって。
ジュリアーナさんもすっごい綺麗だし、オリビアちゃんはちっさくて可愛いし、アルベルタちゃんは元気じゃない」
「アルだけ容姿に触れられてなくてワロタ。
あと、オリビアにちっさいって言ったら怒るからやめとけよな」
「クロ、ぶち殺されたいの?」
左側から声がかかる。
声というより、殺意。
「ほらな?」
聞いてんなよな。
「口悪りぃってオリビア。
お前も黙ってりゃ可愛いのに」
「クロは色んな子に可愛いって言い過ぎなんだよ。
これがクロのやり方だから、ジュリエットも気をつけた方がいいんだよ。
ただ見てた感じ、このままいくとジュリエットはクロのこと完全に好きになりそうだったんだよ」
「え、ちょ、うそ、待ってよ、そな、そんなことないって!
オリビアちゃん、うそうそ、そんなわけないんだからね」
「見るからに動揺してるんだよ。
クロもあんまり勘違いさせちゃダメなんだよ。
ジュリエットはさっき、女の目になってたんだよ。
それにジュリエットは普段からクロのこと目で追ってるんだよ。
なんならこの間──」
「オリビアちゃん、それ以上はやめてー!
ダメダメ、ダメだからね。
ちょっと気になるってだけだし、好きとかそんなの分かんないし、たしかにクロくんはかっこいいけど、って違くて……」
「オリビア、あんまりいじめてやるなよ。
可哀想だろ」
「クロくん、こういう話になっても驚かないんだね……」
「クロは可愛い子に囲まれすぎて感覚が麻痺してるんだよ。
特にソフィと長いからそれも仕方ないことなんだよ。
その辺の男だったら、ジュリエットならイチコロなんだよ。
だから元気出すんだよ」
「自分で痛めつけといて元気出せってどんなフォローだよ、こえーよ」
「あとエクスもこの前ジュリエット可愛いって言ってたから、この話にも気が気じゃないんだよ」
「え!?」
ギョッとする男子。
オリビアの隣、エクス=マインに火の粉が飛び移る。
ジュリエットに続き、犠牲者二号である。
「無差別に多方面に攻撃しすぎだろ。
大量破壊兵器かよ」
「オリビアさん、なんてことを!
おいらが一体何をしたっていうんだ……」
名前の通り、エクスも平民。
背は低く身体もそれほど大きくはないが、長年外で農業などに従事していたこともあって、小麦色に焼けてガッチリと良い身体をしている。
「ウジウジとしてる連中はみんな気に入らないんだよ。
悩むくらいならぶつかって爆散すべきなんだよ」
「爆散する前提なんだな……って、ほらみろ。
お前のせいでよそよそしくなっちゃってるじゃないか」
ジュリエットもエクスも下を向いてしまっている。
「そんで勝ち誇った顔すんな。
お前は一方的に二人を傷つけただけだから!」
俺の声に周囲の目が集まる。
おっと、つい興奮してしまった。
反省反省。
でも全然学園長が来ないから仕方ないだろ。
エクスの向こう側のいるガルドも、いつも通りニヤニヤとこちらを見ている。
お前、ほんとそのスタンス好きな。
いつか絶対巻き込んでやるからな。
その後しばらくギャーギャーやってたら学園長が現れた。
ピタッと構内の会話が鳴り止む。
そしてゴールドハウト学園長が話し出す。
「立て込んでしまっていてな。
待たせたようだ、すまない。
現在この学園で起こっている事象についての連絡のため、みなには集まってもらった。
現在起こっていることと言うと、みなの知る通り殺人事件のことだ。
すでに三名の学生が新学期に入って命を落としている。
これは我々の防衛面に大きな欠陥があることを示している。
魔人の侵入に関しては十二分に対策が講じられているため、今回の犯人は人間と見て間違い無いだろう。
もしかしたら外から入り込んだ何者かが潜伏しているかもしれないし、疑いたくは無いが君たち学生の中にいないとも言い切れない。
そしてそろそろ中間考査のための準備期間で授業が一旦終了するということもあり、君たちの行動が暫し自由になる。
授業時間外の教員の目が届かない時間が増えることにより、今後殺人事件やそれに類するような事象が頻発しては困ると言うことで、事件が終息するまではクラス毎に共同生活を行ってもらう。
その生活スペースに関しては先ほど作ってきた。
みなで協力して生活してほしい」
作ってきたって、学園長自らやってたのかよ。
そりゃ遅くもなるわな。
「続いて中間考査に関してだが、二年生以上はすでに周知の通り色々な組み合わせで頑張ってほしい。
一年生は初めての経験になるだろうが、我々からは何も言わない。
自分たちで情報を集めて乗り切るところまでが中間考査だ。
十分に悩み、そして楽しんでほしい。
ここにいる者は誰も彼も曲者揃いだ。
様々な経験ができると思う。
今できる最大限を出せば、自ずと結果も伴ってくるだろう。
そして土壇場で最大限を出すには、それまでの準備が重要になってくる。
すでに中間考査は始まっている。
君たちの検討を祈る。
以上で私からの話は終えさせてもらう」
学園長が退出したのを確認して、俺たちも普段の生活に戻っていった。
そして数日の授業日程を消化し、中間考査準備期間に突入した。
ここ数話に比べたらだいぶ短めですね。
それでも5000文字くらい。
最近は10000文字くらい書かないと物足りない気がしてならない。




