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Re:connect  作者: ひとやま あてる
第5章 帝国編Ⅱ
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第65話 終息

懐かしいな、この感じ。


目を覚ますと、俺は保健室にいた。


起き上がろうとすると、腕から肩の違和感に気づく。


「あーそっか、腕イカレてたんだわ」


見れば包帯がグルグルに巻かれているし、鈍い痛みが産声を上げて俺にアラートを告げてくる。


「それにしても何時間寝てたんだ?

誰かー、誰かいませんかー!?」


シャッとカーテンが引かれ、保健医をしているシスターが顔を出す。


確か前来たときに名前言ってたな。


えっと、ランゼ=ハオマとかそんなんだった気がする。


「起きて早々煩いわね!

元気になったならすぐ帰りなさい!」


「えー、ひどくない!?

こんな状態じゃ動くに動けねぇよ」


「……冗談よ。

ここで騒ぐのはあなたたちくらいのものだから、ついね。

それにしてあなた無理しすぎよ。

どうやったらあんなにグチャグチャになるんだか。

あそこまで腕を酷使できたとなると、頭の異常も疑うわよ」


「それが保健医の言うセリフかよ!

ってあれ、内容聴いてないんすか」


「運び込まれてきたから治癒魔法をかけただけよ。

だから内容は特に聴いてないわ。

取り巻きの子たちもいたけど授業があるから帰らせたし、あなた今日はゆっくりしてなさい」


「あ、授業すっぽかしてる!」


「そんなに授業に出たいの?

と言っても、そろそろ終限の時間だけどね」


「マジかー、勿体ないことしたなぁ」


5、6時間くらいは寝てたっぽいな。


「まだ完全に治ってないんだから動くのは厳禁よ。

結構時間かけて引っ付けてるんだから。

治癒魔法だって万能じゃないし、下手に動かして変な繋がり方したら手術も考えないといけないわよ」


「それはヤダなぁ」


「呑気ね。

アルベルタって子も後で来るって言ってたから、いずれお友達連れてやってくるはずよ。

静かに待ってなさい」


「静かにって言っても、あいつらが来たら多分騒がしくなりますよ。

例え俺が静かにできたとしても」


「それは……まぁ、今日くらいは許すわ。

ただしあなたは絶対安静!

いいわね?」


「了解」


そっとカーテンが閉じられる。


こういう時はやっぱスマホが欲しくなるよな。


ネットさえあれば暇なんてものはなくなるんだけども。


ネットみたいにいろんなものを検索できる魔法ってないのかな?


わざわざ図書館とか行かなくて済むようになるし、便利になるよな。


困ったときの対処手段とか、貴族平民関係なくいろんな知識を共有することができる。


こういうことを考えてる人って恐らくどこかにいるんだろうけど、階級社会じゃ難しいよなぁ。


これはいずれ考えていこう。


今は腕を治すことが先決だ。


しかしただ寝てるだけってのも退屈だから、魔法でも使ってみるか。


治癒魔法は使えないけど、一つ気になってたことがあるんだよな。


身体強化魔法は壊れた身体を治しうるのか。


今は骨までバッキバキの状態だけど、治癒魔法で骨の整復固定までされてるはずだ。


ズレて固定されたら手術になるかもって言ってたし、多分いい感じにやってくれているんだろう。


まぁこれも憶測だし、この考えに至ったのもハ◯ター✖️ハ◯ター知識から来るものだから、信憑性なんてまったく無いわけだけど。


自然治癒を待ってたらいつ治るか不明だし、やってみる価値はありそうだとは思う。


「ロード、エンハンスメント!」


今俺が使える身体強化魔法はこれだけ。


身体全体をマナで満たしてガッチリ固めるイメージで、効果としては全体的な身体能力が微増する。


体感としては身体能力が5%とかそんなくらい増えてるんだろうか。


だが効果が薄いわりには維持するのに結構マナを使うから、コスパはあまりよろしくない。


ピンポイントに能力を上げる身体強化魔法の方が効能も高いし、使い勝手としては良いレベル。


例えばモモコが使ってたアレとか。


色々覚えて敵をバッタバッタなぎ倒してみたいもんだ。


「ちょっと、何やってるの!?」


俺の声を聞いてか、ランゼが慌てて駆け込んできた。


「何って、治りを早くするために身体強化を」


「……あなたそれがどういうことか分かってやってる?」


「いや、分かんないですけど、しっかり骨とかを元の状態にしてくれてるならそれを補強するイメージで身体強化魔法を使えば治るんじゃねえかなって」


「はぁ……まぁいいわ。

知らないようだから一つ教えておくけど、治癒目的で身体強化魔法を使うのは最終手段なの。

戦場で足が折れて動けなくなったり、そういう場合に一時的に無理してでも動けるように使ったりすることはあるわ。

でもそれは昔の話。

今はどの部隊にも治癒魔導師が配置されてるし、ポーション類も充実してる。

それに危険な地域で戦う人たちには帰還用のスクロールさえ配られてる。

だからそんな古典的な方法で治そうとしなくていいの。

そういうことをしていると、いつかどこかに綻びが生じる。

だから時間を掛けて治せるなら、しっかり時間を掛けた方がいいのよ。

理解したかしら?」


「なるほどなぁ。

でも理解はしましたけど、納得はできないです。

俺は少しでも早く強くならないといけないんで。

だから一つの授業も休んでられないんですよ」


「言いたいことは分かったけど、それでもダメ。

いざという時に本来のパフォーマンスを発揮するためには、こういう我慢も必要なの。

あなたみたいにやる気に溢れているのは素晴らしいわ。

だけど、あとで手遅れになるくらいなら、今ぐっと我慢した方がいいの。

若いあなたには少し分かりにくい話かもしれないけどね」


「そんなに言ってくれるなら……分かりました。

でも俺若いって言っても、もう二十歳ですけどね」


「あなた……」


ランゼは俺の言葉に感動したのか、少し両眼がウルっとしている。


いやぁ、理解ある若者ってのは大人を感動させるんだな。


「5回も6回も入試に落ちたのね、可哀想に……。

でも今年は入学できたんだから頑張りなさいね……」


「ちっげーよ!

成績上位で一発合格しとるわ!」


「あら、そうなの」


スン、と一瞬でランゼが真顔になる。


興味の失い方がすごいなこの人。


「失礼します」


見知った面々の声が聞こえてくる。


「お友達かしらね。

あまり騒ぎすぎないようにね」


「クロ、大丈夫?」


ランゼと入れ替わる形でヒョコッとソフィアラが顔を覗かせる。


そこにいつもの面子が加わる。


「しばらく安静ってだけで、そこまで重体じゃないで──」


「重体よ!」


カーテン越しにランゼが大声で俺の言葉に被せる。


あんたが1番騒がしいんだけど。


「……重体みたいです」


「そう。

でもいつもの調子みたいだし、復帰も早そうね」


「なる早で治したいんですけどね。

それにしてもお嬢様の魔法の干渉領域凄かったですね。

吹っ飛びながら俺、感動してたんですよ」


「あの時は夢中だったし、自分でも驚いたわ。

少しでも手伝いができてよかったわ」


「お前たちも……」


他の連中にも声をかけようと顔を見れば、何やら暗い様子だ。


オリビアだけはケロっとしたご様子。


「……って、みんなどうしたんだ?」


みんな何かを言いづらそうにしている。


始めに口を開いたのはガルド。


「クロ、オレがやり過ぎたばっかりに怪我を増やしてしまって申し訳ない!」


ガルドが急にバッと腰を直角に曲げて頭を下げた。


そんなこと思ってたのか。


しかしなんだ、そのビジネスマン風の謝罪の仕方は。


思わず笑いそうになってしまった。


いや、マズイマズイ。


真剣な相手に対してこれは失礼だな。


「いや、この傷は全部ルー先輩の攻撃を受け止めた時にできたもんだぞ?

ガルドが全力でやってくれたおかげで間に合ったんだ。

感謝こそすれ、俺はそれ以外の感情はないぞ。

むしろよくあの短時間でやってくれたって感じ」


「そ、そうなのか……?」


「ああ、だから気にすんな!

アルもジュリも同じような感じか?」


「うちは……うちの無茶のせいで、クロには取り返しのつかなくなるような怪我をさせてしまって……。

あの時クロが声をかけてくれたから嬉しくなっちゃって、普通に考えれば無理があるっての分かったはずなのに、うちのくだらないプライドのせいで……クロに……うぅっ……」


「おい、泣くんじゃねえって」


いつの間にこんなお淑やかなキャラになっちゃったんだか。


「アルが泣いてるのなんか似合わねえって。

お前はいつもの調子でいてくれよ。

俺から言いたいのは、助かってくれてありがとう、だ。

怪我なんてすぐ治るしな。

俺たちは一蓮托生なんだ。

俺がピンチの時は助けてくれよな」


なんだ俺、発言がいいやつすぎて気持ち悪いぞ。


「ぐすっ……クロ……」


そろそろ来るな。


「……クロおお!」


「ロード、シャドウバインド!」


アルが俺に触れるギリギリで動きを止める。


俺に抱き着こうとしてくるのは読めてた。


「な、なんで……!」


喜びと、俺に魔法で拘束されたことによる動揺、そして涙でアルの顔は最早意味がわからない事になっている。


「俺は絶対安静の重体なんだよ!

今も身体強化使って治癒の補助してる最中なの!

お前のバカな行動は全て読めてる。

次触れようとしてきたらぶっ飛ばすからな」


「ひ、ひどいぞ!

くそぅ、合法的に抱きつけると思ったのに!」


「そうそう、その調子が一番似合ってるよ。

お前はずっと元気でいてろ!

いいな?」


「う、うん……」


アルを引き剥がしつつ、ジュリに顔を向ける。


「あとはジュリだったか?」


ジュリの顔には、少しだけ笑みが見える。


「ふふふ、ええ。

今のやり取りを見ていたら少しスッキリしましたわ。

でも、それでも、あの瞬間に動けなかったことには大きな後悔がありますわ。

正直、すぐに行動できたお三方──クロさん、ガルドさん、そしてソフィさんに、わたくしあの時嫉妬してしまいました。

そして歴然とした差も感じてしまいましたの。

特に的確に指示まで飛ばせたクロさん、わたくしは貴方の側にいて良い人間なのかどうかすごく疑問に思い始めてしまいました……」


すぐにジュリは重い雰囲気を纏ってしまった。


「じゃあ、あの時何か出来たわけ?」


割って入ったのはオリビア。


「そうは言いませんが、皆さんが動けている時にわたくしだけ動けないのは……」


「ジュリのそれ自分が恥ずかしい思いをしたくないってだけ。

それを言うなら三人以外は同じなんだよ。

あの場面で私も出来ることは何も無かったし、動くべき三人がしっかり動いたからそれでいいと思うんだよ。

出来ないなら出来ないで、邪魔せず見てたらいいし、今後そんな事を毎回思ってたらキリがないんだよ。

必要とされた場面で動けるようになるために今必死になって勉強してるんじゃないの?」


「確かにそうですけれど……」


「オリビアの言う通りだぞ、ジュリ。

お前にはいつも助けられてる。

この中で、広い視野で物事を見れてるのはジュリなんだから。

それにアルの魔法の違和感に初めに気づいたのだってジュリだっただろ?

そこから俺もなかなかの機転を利かせることができたし、みんなが居たからこその今だ。

この中の誰が欠けたってダメだったんだぜ」


「私は何もしてないんだよ」


「おいおい、拗ねんなっての」


「拗ねてないんだよ。

ただ口に出さなかっただけで、私も無力感は痛感してるんだよ。

でも私がジュリと違うのは、不平を言って終わるんじゃ勿体無いと思ってるところ。

自分が何をすべきか、どういう役割があるのかは痛いほど考えさせられた。

結果的に良かったから言うけど、その意味ではあの戦いにはアル以外のみんなにも平等に意味があったと思うんだよ。

あの場面で動けたのは、ひとえに実践経験の差によるものだと思うんだよ。

だからジュリ、そんなものは今からいくらでも埋め合わせができるんだから頑張るんだよ」


「オリビアさん……」


「こんな事言うのは、本来私のガラじゃないんだよ。

いつもジュリはそうやってグジグジグジグジ。

そんなだから昔からいつも私を苛立たせるんだよ。

分かったでしょ、ジュリのそれは単なるワガママ。

文句を言ってる暇があったら、出来る事を探せって言いたいんだよ。

あーもう、ヤダヤダ!」


「オリビアは優しいな。

いつも喧嘩してたからもっと仲の悪い感じだと思ってたけど、お前はジュリのことしっかり見てあげてたんだな」


「今のクロは何かいい奴過ぎて、逆に気持ち悪いんだよ」


「急に俺に矛先向けてきた、なんだこいつ!

でもそれは俺も思ったわー。

なんか俺のキャラじゃないよなぁ」


「そうね、ちょっと抜けてるくらいが丁度いいわ。

頭でも打ったのかしら。

早く元に戻った方がいいわよ」


「え……俺いい奴になったらダメなんですか?」


「クロはいい奴よ。

でも今のクロは流石に私でも気持ちが悪いわ」


「ひでぇ!

俺病人なんですけど!」


「いいわねぇ、青春ね!」


突如乱入するランゼ。


「なんですか、いきなり!

てか全部聞いてたんすか?」


「私も学生の頃が懐かしくなるわね。

青臭くて素敵……って、そんな話をしにきたんじゃなくて。

あなたにお客さんよ」


ランゼに紹介されて現れたのは。


「よう、邪魔するぜぇ」


「で、出た!」


アルをボコボコにした、狂犬ルー。


「さっきは世話んなったなぁ、クロカワ?」


射殺さんばかりの鋭い眼光で、ルーは俺を見下ろす。


あ、これはヤンキーで言うところのお礼参りってやつだ。


俺、死んだかもしれん。


「え?」


バッと下げられた頭に、俺は理解が追いつかない。


「すまん、あたいの不始末を押し付けちまって!

本当にすまん!」


「え、ちょっと、顔を上げてください!

もう終わったことだし、別にここにいる誰も怒っちゃいないですから!」


「本当か!?」


バッと顔を上げ、勢いよく俺の両肩を握りしめたルー。


その結果は、言うまでもないよな。


「ぎゃああああ!」


「何してんのあなた!

まだ治ってないんだから!」


ランゼも飛んでくる。


「わああ、すまん!

重ねてすまん!」


「クロ、大丈夫か!?

抱きしめた方がいいか!?」


「アルは……黙ってろ……」


「痛みに苦しんでいても的確にアルの妄言に反論できるとは、流石だな。

やはりオレはクロと居て間違いないようだ」


「妄言って、ふふふ、流石に酷すぎますわよ」


「すまん、すまん!

本当にすまん!」


「ゆっくり!

もっとゆっくり彼を移動させて!」


「いい話で終わりそうだったのに、結局こうなるんだよ」


「さすがクロ、持ってるわね」


カオス。


正しい発音は、ケイオス。



            ▽



「本当に悪い事をした。

今日のことはどんだけ詫びても詫びたりねぇ。

それにアル、あんたも同じだ。

学校からの依頼とはいえ、あたいもムキになってやりすぎちまった。

すまなかったな」


ルー先輩はすっかり牙が抜かれた状態になってしまっている。


案外こっちが素なのかもしれない。


「依頼って、どこまでがシナリオだったんですか?」


アルが訊き返す。


「大まかな規定ラインは、学生が自身の限界を思い知るか、無力感に打ちひしがれるまでだ。

その辺はあたいらの裁量に任せられてる」


「だから先生は何も言わずに居たのか。

じゃあ俺が先生に向かって吠えてたのって、だいぶ恥ずかしいよな……」


「うちは嬉しかったぞ!」


「恥ずかしいからやめて……」


「プルプル震えるクロは初めて見たな。

今日は色々なクロが見られるようだ」


「ガルドめ、いつもの傍観スタイルに戻りやがって!」


「あたいの行動も含めて色々なイレギュラーが重なった結果、ああいうことが起こっちまった。

だから今後あたいに出来ることがあったらなんでも言ってくれ。

できるだけのことはするつもりだ」


俺の中で完全にルーのキャラが固定された。


彼女は、情に厚いヤンキー。


いや、仲間を想う女総長といったところか。


ルー先輩を題材にしたヤンキー漫画が描けそうだ。


「そういうことなら、めちゃくちゃ頼りにさせてもらいます!

ところで、俺がここに運ばれるまでってどんな感じだったんですか?」


「後のことは全部セアド先生が一人でやってくれたよ。

恥ずかしい話、あたいはただ立ち尽くしてしまっていた。

それと同時に、アルはなんていい仲間に恵まれてるんだって羨ましくも思ったぜ。

ここにいる面子を見るだけでもいい連中ばっかじゃねぇか。

さっきの青春話も、臭すぎるけどグッときたぜ」


「え、聞いてたんですか……?」


ソフィアラ以外の俺たち五人は顔が熱くなる。


今思い出したらなかなか恥ずかしいこと言ってたな。


例えばあのやり取りが文面にでも起こされていた日には……。


死ぬしかないかもしれん。


「アル、あんたはなかなか見込みがあるやつだ。

今日から妹分にしてやるから、困ったことがあったら何でも言ってこい。

男五人程度なら集団でかかってきても簡単にボコれるくらいには鍛えてるからな!」


そう言ってルーはアルの肩を組んだ。


強すぎんだろルー先輩。


どこの世紀末社会で育ってきたのやら。


「あ、ありがとうございます──ってどこ触ってるんですか!」


ルーは組んだ腕をアルの首元から衣服の中に侵入させ、動きから見てどう考えても胸を揉みしだいている。


「ちょ、ちょっと、先輩!

ダメですって!」


「いいじゃねぇかよ、減るもんでもねぇし。

むしろ増えるって言うぜ。

というかなかなかいいもの持ってるじゃねぇかよ!」


ただの変態オヤジだった。


「すとーーーーっぷ!」


これ以上はいけない。


「なんだそりゃ、むしろ眼福だろ?

あたいからの詫びのしるしとして受け取ってくれや」


「うちはどうなるんですか!?

揉まれるならクロに揉まれたいです!」


「お前も何言ってんだ、バカか!」


「はっはっは!」


「ガルドも笑ってんなって!」


「アルさんのはしたなさは、留まるところを知りませんわね……」


「ちょっと先輩離してください!

え、ちょ、そこは、あ、あん……!」


「先輩もうやめてあげてー!」


流石にそれ以上いくと反応してしまう。


「なんだよ、これだから童貞は。

この程度の刺激に耐えられないようなら、これからの学園生活で正気を保っていらんねぇぞ?」


え、なんで童貞ってバレてるの?


エスパーか?


それに、これ以上刺激的でムフフな学園生活があるのか。


けしからん。


「アルはあたいの妹分ってことでひとまずの詫びにしてくれ」


「それに何の意味が……」


アルは胸を押さえながら、ずるずるとルーから距離を離していく。


アルがトラウマになったかもしれんぞ、どうしてくれるんだ先輩!


「この学園じゃ、あたいは結構モテるんだぜ。

告ってくるのは大体女子だけどな。

意味のわからん親衛隊みたいなのも作られてるみてぇだな。

あたいの庇護下にあるってことは、ほぼ学園での安全が保障されたようなもんだ。

いじめてくるようなやつがいたら殺してやるから、大声であたいを呼びな」


どんだけ軍事力備えてるんだよ。


呼んだら来るって、スーパーマンかよ。


殺すって言ってるけど、この人普通にやりそうなんだよな。


「それは助かります!」


それでいいのかよ。


あっさりとアルはルーに心を開いた。


「あと、さっきのあんたらの話に水を差すようで悪いんだが……。

いや、言うべきなのか?

言うべきじゃないのか?」


ルーは少し困った表情をしている。


「気になるじゃないですか、言ってくださいよ」


「あー……じゃあ言うが、あの時あんたらが無茶しなくてもセアド先生だけで全部どうにかできたそうだぞ」


「は?」


ルー以外の誰もがキョトンとした顔をしている。


俺も含めて。


「どんなイレギュラーが起ころうとも対処できるだけの準備がセアド先生にはあったんだとよ。

でもあんたらが動き出したのを見て、面白そうだから事の顛末を見守っていたらしい。

それであたいも授業が始まる前日までに入念に自分の魔法について聞かれた事を思い出してよ。

それを聞いて思わず自分でも滑稽すぎて笑っちまったよ。

ここにいる全員、いや、あの場にいた全員がピエロだったって事だ。

ただまあ、うまくいったって事で万々歳だよな」


「……」


沈黙が流れる。


「じゃあ俺のこの腕はただの壊し損じゃん!

セアドのやろう!」


ふつふつと怒りが湧いてきた。


「怒んなって。

おかげでまた絆が深まったんだろ?

まあ……臭かったけどな」


「一言余計だ!

セアドもそうだが、先輩も許さねぇ!

せっかくいい話で終わりそうだったのに!」


「いいじゃねぇかよ、セアド先生もすげぇ先生だぜ?

なんたって個人研究者なのに引き抜きで学園に呼ばれてんだからな。

ここの教員はあたいら学生以上に狭き門を通ってここで働いてる。

エリートの中のエリートだ。

それがある種の社会的ステータスにもなるが、それ以上に最先端の魔法に触れられる場としては学園以上に素晴らしい場所はないと聞く」


「そうよー、私たちエリートなのよー」


シャーッ、とキャスター付きの椅子に座ったランゼが俺のベッドの前を通過する。


「アレも?」


「そう、アレも」


「アレって言うんじゃないわよ!

どれだけ苦労して入ったか!

あなた達には想像も絶する苦労があったのよ!」


「だ、そうですが?」


「それは間違いない。

だから、学べるものは何でも学べ。

ここにいる教員は、なにがしかのエキスパートだからな。

その中でもセアド先生は、群を抜いて優秀なはずだぜ」


「見る目が変わるわね」


「いけすかないメガネだと思ってたけど、人は見た目じゃないんだよ」


「みんなセアド先生にマイナスイメージ強すぎんだろ。

まぁ、俺もなんだけど。

ところでランゼ先生は何を?」


「私は治癒魔法。

回復魔法でも呼び方は何でもいいんだけどね。

あと一応時間をかければソーマも精製できるから、欲しければ言いなさい。

外で入手しようと思ったら、教会に入信して、一定額以上の寄付をして、熱心な信徒と認められるまで修行して、とか色々くっそ面倒な手続き踏んで、その上でようやく得られるかどうかって代物だからね。

その分、お金は頂くけど」


「え、ランゼ先生も普通にヤバいじゃん。

あたい、入学して今まで単に変な女医って思ってたわ。

やっぱ人間見た目じゃねぇな」


「あなた達、さっきから無礼が過ぎるわよ!

でも、今の話で見直したでしょ?」


「ソーマって何?

そんな凄いの?」


「クロ知らないのか?

ソーマと言えば霊薬だぜ。

効能は、大体何でも一瞬で治る。

以上!」


「なるほど、ソーマが凄いってのは分かった。

でもまぁシスターのくせに口悪いし、礼を欠かれるのは順当な判断だと思うけどな」


「お黙り!

怪我してなかったら過回復で腫瘍にしてやってるところよ!」


「こっわ!

これがシスターってもうダメだろ。

神様、この人に罰を与えてやってください」


「神はそのようなことはいたしません。

常に善行だけを見ておられます」


「都合のいい解釈だな、ほんと」


「ランゼは昔からこうだから、もう無理なんだよ。

ランゼが自然に天寿を全うするのを待つしかないんだよ」


「オリビアさぁん?

お父上には他言無用でお願いしますね?」


母親が電話越しで声が変化するくらいの、ランゼの声の変わりよう。


「あ、同じ教会だから知ってるのか。

でもこれならマリア先生の方が断然シスターっぽいだろ」


「マリアの名前を出すんじゃないわ!」


ランゼが急に憤り出した。


「ん?

クロ、何を言ってるの。

マリアもシスターなんだよ。

彼女のことはランゼほどは知らないけどね」


「あれ、そうなのか。

選択授業の時にシスターの格好してなかったから気づかなかったわ。

ランゼ先生、マリア先生と何かあったの?」


「何があったもなにも、この学園の同期よ!

私は治癒魔法、マリアは攻撃魔法で秀でてたけど、光属性は少なかったからいつも比べられてたのよ。

あいつは何でも淡々とこなすから、私ばっかり下に見られて……!」


「あ、はい、嫉妬っすか。

もういいっす」


「いいから聞きなさい!

オリビアさんがマリアの事をあまり知らないと言ったように、卒業後は彼女戦場にいたのよ。

私は教会で働くことが多かったからオリビアさんとは接触が多いけど、マリアはほとんど戦場にいたわ。

だから戦闘狂のあいつには気をつけた方がいいわよ」


「なんか良いように話盛ってないすか?」


「お黙り!

あなた達は私の話を盲信すれば良いのよ」


「盲信って教会で使っていい言葉なんですかね……」


「光属性が使えるなら、マリアより私に教えを乞いなさい。

そうすれば素晴らしい未来が待ってるわ」


「なんかランゼ先生の発想が宗教じみてきたな。

オリビア、ランゼ先生になら見せてもいいんじゃないか?」


「見せるって……ああ、そういうこと。

協力者は多い方が良いと思うんだよ。

ランゼを黙らせる意味でも、というか黙らせるために見せるべきなんだよ」


オリビア、そんなにランゼを黙らせたいのか……。


「それにルー先輩にも協力を仰ぎたいしな。

みんな、いいよな?」


俺たちが示し合わせているのを見て、ランゼとルーは不審がっている。


「何のお話?」


「話がイマイチ掴めねぇな」


「とりあえず俺のステータスを見てください。

話はそれからです」


「よく分からないけど、見られて困らないというのなら見てあげるわ。

ロード、ディテクト ステータス!」


ルーも同様に魔法を唱えた。


「「な!?」」


今日一番の驚愕を顔面に貼り付ける二人。


異世界系のラノベで主人公のステータスを見て驚愕するギルド職員ってのが多数に見られるけど、これはこれで何とも言えない気持ちよさがあるな。


俺TUEEEってこんな感じなのだろうか。


まぁ、ステータス自体は貧弱もやし学生に違いないけどな。


見てもらうべきはステータスではなく、称号。


「ランゼ先生、何か言うことは?」


「か、かか、かかかか、かみ、か、神様!

お、お許しを!

私めの度重なる恥ずかしい言動の数々、どうかお許しを!」


半泣きでヤケになったように俺に許しを求めるランゼ。


もうこれを見れただけで満足だわ。


「ここまでされると逆に引いちゃうんだけど。

というか、神様?」


久しぶりに自分でも覗いてみた。


ーーーーーーーーーー


《名前》黒川ハジメ

《Lv》18

《種族》人間 (神性)

《性別》男

《年齢》20

HP 950/950 → 1000/1000

MP 3270/3270 → 3280/3280

STR 15 → 16

AGI 20 → 21

VIT 15 → 16

DEX 28 → 29

INT 38 → 39

LUC 30

《称号》異世界からの侵入者 神力の簒奪者 智神ティールの残滓

《魔法》生活魔法 攻撃魔法・全(中級) 防陣 支援魔法・光(初級) 強化魔法

《ギフト》悪食


ーーーーーーーーーー


おー、色々加わってるな。


種族の横の神性とか、あとは戦闘訓練とかもちょくちょくあったから身体能力も全体的に伸びてる。


成長を感じるなぁ。


「お前神様だったのか、すげぇな!」


こんなにも反応に差があるのか。


ランゼもあそこまでいくと、しばらくはダメだな。


「ランゼ先生、これからは正しく生きるように」


「は、ははぁ!」


なんか可哀想になってきたわ。


「とりあえず俺のステータスを見てもらいましたね。

これから言うことを、事実として聞いてください。

現在この世界は危機に瀕しています。

世界を救うために力を貸してください」


俺たちは一歩ずつ確実に進むために、一人でも多くの協力者を募っていかなければならない。

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